新型コロナウイルスの患者が感染の証明書を手に入れるため発熱外来を訪れて混雑し、検査を受けづらい状態が続いています。
厚生労働省は、事業所などに対して従業員が仕事を休む際に発熱外来での検査の証明書を求めないよう要請。
日本救急医学会など4つの学会は、症状の重い人や重症化リスクの高い人の治療を優先するため、症状が軽い人には受診を控えてほしいと呼びかけました。
新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、日曜日は休診となる医療機関も多いことから診療を行う都内のクリニックには症状を訴える人などが次々に訪れ、対応に追われていました。
土曜日と日曜日も発熱外来での診察を行っている東京・港区のクリニックには感染の急拡大にともなって土日に訪れる人が急増しています。
24日も午前10時の診療開始前から症状を訴える人などが次々と訪れ、診療開始から15分ほどで待合室が埋まり、外で体調がすぐれない様子で診察を待つ人もいました。
虎ノ門中村クリニック 中村康宏院長
「土日に診療しているところが少ないこともあって、土日は多くの人が来ています。神奈川や埼玉などから来る人もいるほどです。かなり限界に来つつあり、スタッフの手が本当に足らない状態です」
都市部を中心に感染が拡大している地域では感染の証明書を求めて多くの患者が医療機関の発熱外来を訪れ、ほかの患者が診察や検査を受けづらい状態が続いています。
このため厚生労働省は重症化リスクのある高齢者などへの対応が十分にできなくなるおそれがあるとして、事業所などに対して従業員が感染して仕事を休む際、発熱外来で示される検査結果の証明書などの提出を求めないよう要請しました。
また、総務省は地方自治体に対し、職員が仕事を休む際には発熱外来での検査証明書などの提出を求めないよう要請しました。
仮に証明書が必要な場合には、職員がみずから検査を行い、その結果を撮影した画像などで確認するよう求めています。
また、療養期間が終了し、職場に復帰する際には陰性の証明書は必要ないとしています。
文部科学省は学校やスポーツ・文化関係の団体などに対し、教員や児童・生徒、職員らが新型コロナに感染して休む場合に発熱外来での検査証明書などの提出を求めないよう要請しました。
厚生労働省は、市販の検査キットを撮影した画像などを代わりの手段とすることができるとしています。
神奈川県では、抗原検査キットなどを使って陽性となった場合、専用のウェブサイトで県に届け出れば医療機関や保健所などを通さず、療養中であることを証明する「自主療養届」や、民間の保険請求などに使える「療養証明書」を発行できます。
また、東京都などほかの自治体でも発熱外来を通さない仕組みの導入が進んでいます。
さらに厚生労働省は重症化リスクが低い若者などに検査キットを活用してもらおうと都道府県に2400万回分のキットを順次、配送していて、今後、薬局などで無料で配布する計画です。
新型コロナウイルスの感染拡大で、救急や発熱外来がひっ迫する中、日本救急医学会など4つの学会が会見を開き、症状の重い人や重症化リスクの高い人の治療を優先するため症状が軽い人には受診を控えてほしいと呼びかけました。
日本救急医学会など救急医療や地域医療に関連する4つの学会は2日、厚生労働省で記者会見を開き、救急や発熱外来のひっ迫によって通常の医療にも影響が出始め「救える命が失われる可能性が高まりつつある」と危機感を示しました。
その上で、オミクロン株では多くの場合数日で症状が軽くなり、重症化する人も数千人に1人程度であることから、「症状の軽い人は受診を控えて欲しい」と呼びかけました。
症状の目安は次の通りです。
日本救急医学会などの呼びかけ | |
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急いで受診する必要なし | 飲食ができる、呼吸が苦しくない (特別な治療は行われないため) |
受診が必要 | 水が飲めない 呼吸が苦しい 37.5度以上の発熱が4日以上続く 重症化のリスクが高い 65歳以上の人 基礎疾患がある人 妊娠中の人 |
救急車を呼ぶ必要 | 胸の痛みがある 意識に異常がある |
日本プライマリ・ケア連合学会 大橋博樹副理事長
「安心のため受診したいと思う人もいると思うが、今はどうか治療が必要な方々を優先させてほしい」