“渋谷スマートドリンキング” コロナ禍の飲酒について、大手ビールメーカーと行政が連携して、新たなプロジェクトを立ち上げました。飲酒マナーの向上を呼び掛けるとともに、東京・渋谷にノンアルコールや低アルコール飲料を提供するバーを設けました。飲む人も飲まない人も一緒に楽しめることにつながるか。取り組みの背景や狙いをまとめました。
東京・渋谷駅の前では、お酒とのつきあい方について、新型コロナウイルスの前後で変化があったのか、東京・渋谷駅の前で聞きました。
新型コロナによる影響で、外で飲む機会がめっきり減って今は家で少し飲む程度になり、お酒とのつきあい方もだいぶ変わりました。
新型コロナウイルスが感染拡大する前は、親しくない人も一緒にみんなで飲む感じでしたが、最近は、親しい人を中心に飲むようになりました。
こうしたなか、東京・渋谷で、大手ビールメーカーと渋谷区の外郭団体が共同で、新たにプロジェクトを立ち上げました。飲めない人でも楽しめる環境を作るほか、飲酒マナーの向上を呼び掛けるということです。
プロジェクトでは、渋谷区内の繁華街にバーを30日にオープンし、ノンアルコールか、アルコール度数が3%以下の低アルコールのカクテルを提供します。メニューは全部で100種類以上にのぼるということです。
大手ビールメーカーがこうした「ノンアル」や「低アル」の飲料に力を入れる背景には、新型コロナウイルスの影響などでビール系飲料の市場が縮小する一方、「ノンアル」や「低アル」の飲料の売り上げが好調なことがあります。
アサヒビールは、国内の20代から60代までの人口およそ8000万人のうち、半数のおよそ4000万人は、「お酒を飲まない」と推計しています。一方、この4000万人のうち、3割にあたる1330万人は、「飲み会は好きな人たち」だと推計しています。
このバーを通じてメーカーは、お酒を飲む人も飲まない人も一緒に楽しめる多様な飲み方を提案するとともに味の好みなどの需要を調べ、新たなサービスなどにもつなげたいとしています。
一方、渋谷では、コロナ禍での路上での飲酒や、飲み過ぎによる迷惑行為が目立つようになり、地域の課題となっています。
このためプロジェクトでは、区内の大学や、企業を対象に酒の知識や適切な飲酒のしかたを学ぶセミナーを開催する計画で、飲酒マナーの向上と地域のイメージアップにつなげたい考えです。
プロジェクトを後援する渋谷区の長谷部 健 区長は「お店で飲めない時に路上で飲むなど、渋谷はお酒にまつわる悪いイメージが定着している。啓発だけではなく、具体的な『スマートな飲み方』の景色がまちに生まれることを期待したい」と話していました。
酒などの文化に詳しい武庫川女子大学の高田公理名誉教授に、お酒とのつきあい方の変化について、聞きました。
〇飲み会で解消は受け入れられず
仕事上の問題を飲み会で解消するという高度経済成長期の文化が、若者などに受け入れられなくなった上、アルコールが健康に及ぼす影響や、ハラスメントへの厳しい視線、コロナ禍での飲み会の減少などが重なり、酒離れが進んでいると言っていいのではないか。
〇飲まない人への理解が広がる
今までアルコール飲料が担っていた気持ちを盛り上げたりリラックスさせたりする役割を化粧品や音楽、それにノンアルコール飲料などが代わりに果たすようになっている。お酒を飲まない人がいることも世間に広く理解されるようになり、飲み会やお酒とのつきあい方も多様になっている。新しいものが出てくれば、人々に受け入れられるのではないか。