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サル痘 国内対策 天然痘ワクチン接種の体制は WHOはどう対応

  • 2022年6月24日

欧米などを中心に報告が相次ぐ「サル痘」について、国内でサル痘の患者が見つかった場合に備え、厚生労働省は検査やワクチン接種などを速やかに行う体制の整備を進めています。サル痘が定着していない国や地域にも感染が広がる状況は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」にあたるのか。WHOの判断と国内の対策をまとめました。(6月28日更新)

欧米などで広がるサル痘 国内では

「サル痘」は1970年に海外で人での感染が確認されて以降、厚生労働省は動物から人への感染症を指す4類の感染症に指定していますが、国内でこれまで患者は報告されていません。

欧米などではサル痘の報告が相次いでいて、WHOのヨーロッパ地域事務局によりますと、6月21日までに確認された感染者はヨーロッパを中心とした29の国と地域だけで2746人に上るということです。

検査・ワクチン・入院体制 国内の対策

欧米を中心に感染が拡大していることを受けて厚生労働省は体制の整備を進めています。
このうち検査は、現在、国内で実施できるのは東京の国立感染症研究所の1か所だけのため、全国におよそ80か所ある地方衛生研究所でも検査ができるよう準備を進めています。

〇天然痘ワクチンを例外的に
ワクチンについては天然痘ワクチンがサル痘にもおよそ85%の発症予防効果があるとされていて、国内でもメーカーが生産し、備蓄されています。
しかし、1976年以降、定期接種は行われておらず、もともと天然痘のワクチンとして薬事承認されているため、原則、サル痘には使うことができません。

このため厚生労働省は東京の国立国際医療研究センター病院で研究目的として例外的に患者の家族などを対象に接種できる体制を整えました。

対象となるのは患者に接触してから14日以内の濃厚接触者で、21日後までの発症の有無を調べます。
ワクチン接種は新型コロナでは原則、感染前ですが、サル痘では感染後の接種でも発症や重症化予防の効果があるとされ、濃厚接触者も接種の対象となります。

〇治療薬
治療薬については日本では承認されておらず、確保もされていないため、厚生労働省は海外からの輸入と薬事承認の検討を始めています。

〇入院体制
全国58の指定医療機関に入院体制の確保を求めていて、感染が疑われる患者が見つかった場合は速やかに報告するよう医療機関に求めています。

サル痘はPHEICか WHOの判断は

サル痘の感染の拡大を受け、WHOは日本時間の23日夜、各国の専門家による緊急の委員会を招集し、最新の状況などを踏まえ、今回の感染の広がりが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」にあたるか検討しました。

この「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC・フェイク)は、「国際保健規則」に定められた手続きで、「他の国々に公衆衛生上の危険をもたらすと認められ、緊急に国際的な調整が必要な事態が発生したとき」に宣言が出されます。

これまでに、2009年の「新型インフルエンザ」のパンデミックの際や、2014年から16年の西アフリカでのエボラ出血熱、2014年からのポリオ、2016年のジカ熱、2018年から20年のコンゴ民主共和国でのエボラ出血熱、そして、2020年からの新型コロナウイルスの感染の拡大の際と、6回出されています。緊急事態の宣言は、現在は、新型コロナウイルスとポリオの感染拡大で出されています。

サル痘についての委員会の検討を踏まえWHOのテドロス事務局長は25日、現時点では、緊急事態にはあたらないと判断したと発表しました。
一方で、緊急の委員会は、サル痘が定着していない国や地域でこれほど感染が広がるのは異例で、今後もさらに広がるおそれがあることから、引き続き状況を注意深く監視し、さらに情報を収集した上で、今回の結論を再検討する必要があるかどうか数週間後に判断すべきだと助言しました。

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