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サル痘 は “PHEIC・公衆衛生上の緊急事態” か WHOの判断は

  • 2022年6月22日

欧米を中心に報告が相次ぐ「サル痘」についてWHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」・PHEICにあたるかどうか判断することにしています。新型コロナウイルスでも出されたPHEICは、どんな要素から判断されるのか。さらに現在の感染状況と今後の見通しなどについて専門家に聞きました。

サル痘の感染確認 42か国2000人超に

「サル痘」の感染が確認された患者は増加し、WHOによりますと2022年1月1日から6月15日までに42か国で2103人の患者が確認されたということです。また、ナイジェリアでは1人が死亡したとしています。

地域別では、感染が確認された人はヨーロッパ諸国に多く、イギリスが524人、スペインが313人、ドイツが263人、ポルトガルが241人、カナダが159人、フランスが125人、オランダが80人、アメリカが72人などとなっています。

WHOはこれまで、サル痘の感染がときおり見られてきたアフリカ中西部の諸国と、5月以降に感染が相次いで判明した欧米諸国と分けて集計していましたが、6月17日の発表から統一しました。アフリカ地域の6か国の64人が感染者として計上されています。

“広がっているのは西アフリカ系統のウイルス”

アフリカでは、現在もサル痘の感染が頻繁に起きています。2022年1月以降6月8日までに、コンゴ民主共和国やナイジェリアなど8か国で、疑い例も含めて1500人あまりが報告され、72人が死亡しています。

ナイジェリアなど西アフリカと、コンゴ民主共和国など中央アフリカの地域では別々の系統のウイルスが広がっているとされています。
ウイルスの遺伝子解析の結果、今回広がっているのは比較的病原性が低い、西アフリカ系統のウイルスだとされています。

WHO “ウイルスが過去にない異常なふるまい”

WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は2022年6月14日の会見で、「ウイルスが過去にない異常なふるまいをしているのは明らかだ。より多くの国に影響を及ぼしており、協調した対応が必要だ」として危機感を示しました。

その上で、6月23日に緊急の委員会を開くと発表し、今回の感染の広がりが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当するかどうかを検討することを明らかにしました。

「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」とは

「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」は、「国際保健規則」に定められた手続きで、「他の国々に公衆衛生上の危険をもたらすと認められ、緊急に国際的な調整が必要な事態が発生したとき」に宣言が出されます。
英語では「Public Health Emergency of International Concern」というもので、頭文字をとってPHEIC(フェイク)と呼ばれています。

これまでに、2009年の「新型インフルエンザ」のパンデミックの際や、2014年から16年の西アフリカでのエボラ出血熱、2014年からのポリオ、2016年のジカ熱、2018年から20年のコンゴ民主共和国でのエボラ出血熱、そして、2020年からの新型コロナウイルスの感染の拡大の際と、6回出されています。

今回、WHOは各国の専門家を集めてサル痘がPHEICの対象になるか議論します。サル痘は、中央アフリカなどでは散発的にみられる感染症でしたが、いま、ヨーロッパなどに定着することが懸念されています。

「サル痘」の具体的症状 今回の特徴は

サル痘は、天然痘ウイルスに似たサル痘ウイルスに感染することで起きる病気です。国立感染症研究所やWHOなどのウェブサイトによりますと、サル痘のウイルスの潜伏期間は通常、7日から14日間で、潜伏期間のあと、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1日から5日間続き、その後、発疹が出るということです。

発疹は、典型的には顔面から始まって体じゅうに広がります。徐々に膨らんで水疱(水ぶくれ)になり、うみが出て、かさぶたとなり、発症から2~4週間で治癒するということです。

WHOによりますと、今回の感染拡大では、発疹が性器や肛門の周辺など一部にとどまっているケースや、発熱などの前に発疹が出るケースが特徴的だということです。

WHOでシニアアドバイザーを務める進藤奈邦子さんは、6月18日に横浜市で開かれた学会で取材に応じ「これまで分かっている範囲では、感染の広がりのほとんどは男性どうしで性的な接触を行った人たちの中にとどまっているが、感染の裾野がどれだけ広がっているのか全くわかっていない。ただ、新型コロナウイルスのようには広がるものではない。直接の身体の接触が主な感染経路となり、講演会の会場のような場所で広がるようなことはない」と話していました。

感染状況 “予想を超えたスピードにはなっていない”

元国立感染症研究所の獣医科学部長で、サル痘を研究してきた岡山理科大学の森川茂教授に、最新の感染状況やWHOの判断、対策などについて話を聞きました。

〇感染状況をどう評価するか
このまま感染者が増え、3000人に達するのは確実だと思います。ただ、増加のペースは200から300人ぐらいだった当初のころからあまり変わらず、予想を超えたスピードにはなっていません。

「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」WHOの判断は

今の状況をみる限り、私はそれを出すレベルに達していないと思います。
各国は、以下の4つの要素のうち、2つ以上の要素を満たすときに、WHOに通告するとしています。

(1)公衆衛生上、深刻な健康被害を起こす危険性がある
(2)感染拡大が予測不能
(3)感染が国際的に広がっていく危険性がある
(4)国際間の交通・流通を制限する必要性がある

 

(ヨーロッパなどでは今回の感染拡大による)死亡者はおらず、WHOとしてもリスク評価を中程度としています。今のところ、公衆衛生上、深刻な状況は生まれていないと言えます。
ただ、今後、感染経路が変わってきた場合、例えば輸血を通じた感染みたいなことが起きると、状況は変わるかもしれません。

22日に記事を公開した際、4つの要素について「WHOがPHEICを出すために必要とされる要素」としていましたが、正しくは「各国がWHOに通告するために必要な要素」でした。

WHOは次のような事態がPHEICにあたるとしています。修正します。
1.疾病の国際的拡大により、他国に公衆の保健上の危険をもたらすと認められる事態
2.緊急に国際的対策の調整が必要な事態

“野生動物に広がると完全排除は難しい”

〇研究はどこまで進んできたのか
サル痘ウイルスの遺伝子配列の細かい情報が出てきました。感染が拡大しているウイルスについて西アフリカ由来ということぐらいしか分かっていませんでしたが、遺伝情報の解析によると、今回のウイルスが1人の患者さんから欧米など各地に広がった可能性があるようです。
一方、遺伝子変異によってサル痘ウイルスが感染しやすくなったかどうかについては、どちらかというと否定的な見方が出ています。

〇今後の焦点 野生動物の感染
アフリカ以外の動物にサル痘の感染が広がってしまうことを最も危惧しています。WHOはサル痘の患者に対して、家庭で飼育しているペットに接触するなと呼びかけていますが、それは、サル痘ウイルスはいろいろな動物にも感染するからです。

いまはヨーロッパ、北米大陸、そのほかいくつの地域で感染者が出ていますが、人から人への感染を完全に遮断すれば、収束するはずです。しかし、野生動物の間で感染が広がってしまいますと、完全に排除することは難しくなり、常在国になってしまうので、警戒しています。

日本国内に流入するリスクは

当然、潜伏期間中の感染者が日本に入ってきて、発症するリスクはあります。海外からの観光客の受け入れが再開し、感染した人が海外から来て発症するということもありえると思います。
もし国内で感染者が出た場合、濃厚接触者の方を含めて検査が必要になってきます。医療機関では、海外から入国した人で発熱や発疹が出た人はサル痘を疑うべきだと思います。

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