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篠原ともえさんの「ADC賞」を支えた 埼玉 草加の革職人たち

  • 2022年6月10日

「この革で着物を作りたいって、一目ぼれだった。こんなに魅力的な職人さんが草加にはいると知って、ものすごく大きな発見だった」
こう話すのはタレントでデザイナーの篠原ともえさんです。篠原さんと一緒に着物づくりを手がけたのは埼玉県草加市の革職人たちでした。

世界から高く評価された「革の着物」

こちらの着物、実はすべて動物の革で作った「革の着物」です。手がけたのは、タレントでデザイナーの篠原ともえさん。
100年以上の歴史があり、“広告界のアカデミー賞”ともいわれている、アメリカの広告デザインの賞「ニューヨークアート・ディレクターズ・クラブ賞」通称ADC賞で、2冠に輝きました。

使われたのは森林保護のため害獣として駆除されたエゾシカの革で、その中でも形が悪く、本来は廃棄してしまう革の切れ端を用いています。「動物の命を余すことなく使い切った」という点も世界から高く評価されました。

草加の革職人のノウハウと技術が凝縮

「革の着物」の誕生を支えたのが、草加の革職人の方たちです。
篠原さんと一緒に作品を手がけたのは、草加市で革一筋45年の職人、伊藤達雄さんです。祖父の代から3代にわたり革の生地を作ってきました。

草加で皮革産業が始まったのは、およそ100年前といわれています。河川に囲まれ水が豊かな環境が、大量の水を使う革の生産に適し、街の一大産業として発展。いまも30軒以上の工場がひしめいています。

なかでも伊藤さんの工場が創業当初から得意とするのは“ソフトレザー”と呼ばれる柔らかい革です。これが、篠原さんがつくりたい着物のイメージとマッチしました。

篠原ともえさん
「とっても絹のように柔らかいので、さわったときに『この革で着物を作りたい』って、一目ぼれでした」

使用されたのは、本来、厚さ1.5ミリ程のエゾシカの革を半分以下の0.45ミリに削いだ薄手の革です。

絹のようなしなやかさを実現するため伊藤さんが参考にしたのは、祖父の使っていたノートです。

祖父が使っていたノート

薬品の濃度や気温や天候によって変わる乾燥時間など、なめしの秘伝が記されています。

「なめす」
・動物の皮を薬品で処理し、腐敗を防ぎ、柔軟性や弾性などをもたせること。

皮革企業 取締役社長 伊藤達雄さん
「このノートは宝ですね。直接、祖父や父に手ほどきを受ける時間が少なかったんですけど、こういうものを残していただけたことはありがたいです。非常に大切なノートになります」

構想から約1年 世界に誇る作品完成

この作品の特徴である山の稜線を表したデザインにも、草加の職人技が生かされました。
染色を担当した桐原義雄さんです。10年前に引退していましたが、今回の作品のため一肌脱ぎ、現場へ戻ってきました。

「染料は均一に吹くのがいちばん難しい」と話す桐原さん。篠原さんのデザインにある山の奥行きを表現するには、水墨画のようなグラデーションが必要です。桐原さんは、染料を吹きつける角度や速度を変え、革1枚1枚に色の濃淡を出していきました。構想からおよそ1年。職人の技の粋が込められた、およそ100枚の革が折り重なり、世界に誇る作品が完成しました。

篠原ともえさん
「薄いグラデーションから濃いグラデーションまで丁寧に丁寧に仕上げてくださって、革は色が変化していくんですけれど、それも見越して仕上げてくれました。色だったり形だったりに、すごく細かくリクエストしても本当に120パーセントの力で職人さんたちは応えてくれるので、プロの力と目のすばらしさは感動しました」

皮革企業 取締役社長 伊藤達雄さん
「いま、皮革産業というのはすごく変わって、非常に厳しいなかにあるが、“新しいモノづくり”それができるのが草加です。草加せんべいにも負けないくらい、知名度の高いすばらしいものが、これから生まれてくることを期待したいと思います」

世界も認める革技術。製作に携わった伊藤さんと桐原さんは、今回の挑戦で習得したノウハウを後世にも伝えようと、若い世代の職人さんたちに引き継ぐことを決めたということです。

 
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