新型コロナウイルスで、現在主流となっているオミクロン株では、後遺症が出た人が以前に広がったウイルスとくらべると10分の1ほどだったということです。
また、オミクロン株のさまざまなタイプについて抗体を使った治療薬の効果を調べたところ、多くの薬で効果が下がっていたということです。2つの調査と研究の内容をまとめました。
国立国際医療研究センターなどの研究グループは、ことし2月初めまでにオミクロン株に感染して入院した20代から80代の患者53人からその後の症状を詳しく聞き取りました。そして、アルファ株やデルタ株など以前に広がったウイルスに感染した人と比較しました。
けん怠感や息切れ、嗅覚や味覚の異常などといった後遺症とみられる症状が2か月以上続いていた人を年齢や性別、ワクチン接種歴などの条件を合わせて比較すると、オミクロン株ではけん怠感が続いていた人が18人中1人だったのに対し、アルファ株などでは何らかの症状があった人は18人中10人だったということです。
研究グループは、オミクロン株で後遺症とみられる症状が出るのは10分の1ほどと考えられると分析していますが、感染者数は格段に多いため、後遺症に悩む人は多くなるおそれがあるとしています。
分析した森岡慎一郎医師
「オミクロン株で後遺症が少ないとわかったことは重要だ。ただ、調べることができた人数は少なく、症状や期間の違いは分からなかったため、さらに多くの人の協力を得てより正確に分析していきたい」
「BA.2」や「BA.4」など新型コロナウイルスのオミクロン株のさまざまなタイプについて、東京大学医科学研究所の佐藤佳教授らのグループが、抗体を使った治療薬の効果を調べました。
グループは、第三者のチェックを受ける前の「査読前論文」としてインターネット上で公開しました。
「BA.2」や「BA.4」など5つのタイプのオミクロン株について特徴を再現したウイルスを作って細胞に感染させ、治療薬に使われる抗体を投与して反応を調べたということです。
その結果、今回調べた8種類の抗体の内、5種類については、5つのタイプのウイルスにはいずれも効果がみられなかったということです。
一方、日本でも承認されている「ソトロビマブ」は「BA.2」に対しては効果が従来のウイルスのおよそ20分の1になっていたもののこのほかのタイプに対しては一定の効果がみられました。
また、アメリカの製薬会社が開発した「ベブテロビマブ」は、5つのタイプすべてで効果が高まっていたということです。
東京大学医科学研究所 佐藤佳教授
「新しい変異ウイルスが日本に入ってくる前に、ウイルスの特性や薬の効果を迅速に確認することは大切だ」