5月11日、茨城県結城市の酒造会社、「結城酒造」の国の登録有形文化財となっている江戸時代の酒蔵などが全焼した火災。
酒造会社の杜氏は、全国からの支援に感謝するとともに、「いつかお酒で恩返ししたい」と思いを述べました。
結城酒造の副社長で杜氏の浦里美智子さん。
茨城県などが設立した「常陸杜氏」という認証制度の一期生にも選ばれた浦里さん。造る酒は全国に出荷され茨城の酒造りをけん引する存在として期待されてきました。
火災前の酒蔵
5月11日発生した火災で、状況は一変。
「結城酒造」の江戸時代に建てられ、国の登録有形文化財となっている2つの酒蔵が全焼するなどしました。
火災発生当時に浦里さんが被害の状況を記録するため、消防の了解を得て撮影した映像では、天井部分が炎に包まれている様子や煙が出ている様子が確認できます。
浦里さんによりますと当時は酒の火入れ作業中にバーナーから火がでて、屋根から全体に燃え広がっていったということです。
酒造会社によりますと仕込みや貯蔵に使う設備など酒造りの作業場のすべてが被害を受けて、現在、解体作業が進められ再建のめどは立っていないということです。
結城酒造副社長 杜氏 浦里美智子さん
住まいもそうですし、お酒造りの現場、作業するところとか、貯蔵に使っていた蔵の部分は全部焼けてしまった。正直これからどうなるかというのは、何とも今の段階ではわからない。
酒造りの作業場がすべて被害を受けましたが、被害を免れたものがありました。
酒造りの恩師の言葉を書き留めていたノートです。
私がお酒造りを始めたときに、書いていたお勉強ノートがすごいきれいにでてきた。
さらに、奇跡的に焼け残っていたものが。去年の冬に仕込んだ酒、数千本が冷蔵コンテナの中で無事だったのです。
本当にうれしかったですね。これでお酒まで全部なくなったら、本当にもうどうしたらいいか分からないですけど、この2基の冷蔵庫のお酒だけでも残っていたのは本当に希望です。
火災翌日には、ほかの酒造会社や酒店などからたくさんのボランティアが集まりました。コンテナの壁をバールでこじ開け運び出す作業を手伝ってもらいました。
そして、地元の商工会議所が急きょ、印刷したラベルを貼って全国の特約店に向けて出荷しているということです。
あの蔵で酒を造ることはできません。一生懸命造ったお酒なので私たちの思いも一緒に味わって飲んでもらいたいです。
火災を受け「結城酒造」の酒を取り扱う全国の酒店や飲食店などからは酒を買って支援したいという声や再建を期待する声が寄せられています。
また県内の酒造会社の呼びかけによりSNSなどを通じて義援金が集められているということです。
結城酒造と同じ、県西地域の真結酒造組合に所属する茨城県筑西市の「来福酒造」の藤村俊文社長。
火災の翌日からSNSで義援金募集の呼びかけを始めました。
投稿は数百件「シェア」され、海外から送金したいというメッセージも寄せられるなど、問い合わせが相次いでいるということです。
来福酒造 藤村社長
「酒造業界で人がどんどん減る中で、結城酒造は、互いに切磋琢磨してきたなくてはならない会社です。時間はかかると思いますが、一日でも早く復興できるよう少しでも協力したいですし、皆さんにも継続して支援してほしいです」
結城酒造副社長 杜氏 浦里美智子さん
「これからどうなるかは今の段階では正直わかりませんが、たくさんお見舞いやご支援をいただいて本当に感謝しています。いつかお酒で恩返しできればいいと思っています」