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知床観光船事故で安全点検 GWでも低体温症 命を守る「背浮き」とは

  • 2022年4月26日

北海道の知床半島の沖合で乗客・乗員26人が乗った観光船が遭難した事故で、海や湖に落ちた時の「低体温症」の危険性が改めてクローズアップされています。冷水に落ちるとわずかな時間で意識を失うほか、気温と水温の温度差にも注意が必要だということです。低体温症や水に落ちた場合の対処法、さらに首都圏の観光船の安全点検の動きをまとめました。

東京・品川区 安全点検の観光船

北海道の知床半島沖で観光船が遭難した事故を受けて、首都圏でも観光船の安全点検の動きが出ています。
このうち、隅田川や東京湾など東京都内や神奈川県内で観光船を運航している東京・港区の会社では25日、品川区にある桟橋で観光船の安全点検を行いました。
船長を務める2人の社員が、船体に損傷がないかを目視で確認したほか、適切な数の救命胴衣が積まれているか、さらに海や川に落ちたときに救助するための器具が正しく設置されているかを見て回っていました。

千葉・銚子市 安全運航の対策

千葉県銚子市で観光船を運航している会社、銚子海洋研究所では、クジラやイルカの観察を楽しめる定員40人の船を条件が良ければほぼ毎日、運航しています。

船の船長も務める宮内幸雄所長は、エンジンや救命胴衣などの道具の点検を運航のたびに、欠かさず行っています。
また、1週間前から天気予報を確認し、一定以上の風速が予想された場合は、その日の運航の中止を検討することにしているということです。

さらに、漁に出ていた漁業者から運航中止を勧められたときや、海上で風や波が危険だと感じた場合は、乗客に説明した上で引き返すということです。

宮内幸雄所長
「お客さんが満船にあたる40人来てくれていても天候が悪ければ中止します。何重にもチェックをしてようやく船を出せます。(事故について)同業者として心を痛めている。われわれも安全第一ということを改めて教訓にしなければならない。船の安全対策にはコストはかかるが、海に出る以上、対策を徹底したい」

知床観光船事故 低体温症の危険性

現場の捜索 4月25日

北海道の知床半島沖で観光船が遭難した事故が発生した4月23日、気象庁のデータでは、知床岬周辺の海面の水温は平均で2.4度でした。
運航会社は、「乗客は全員救命胴衣を身につけていた」と説明していますが、多くの人が命を落とす結果になりました。海や湖に落ちた時の「低体温症」の危険性が改めてクローズアップされています。

 冷水ではわずかな時間で意識不明に

海や湖など水の中に落ちた時、どのくらいの時間生存できるのかは、水温が大きく影響します。
アメリカなどでは、水温が0度から5度の場合、15分から30分で意識不明になり生存できる時間は30分から1時間半程度と考えられています。
また、水温が5度から10度の場合では、30分から1時間で意識不明になり、生存できる時間は1時間から3時間程度と考えられています。

水難学会の会長を務める斎藤秀俊さんによりますと、体格や服装などの条件によって生存時間は異なるとみられ、こうした基準はあくまで目安で、決して「これだけの時間は生存できる」と捉えてはいけません。

水難学会 斎藤秀俊会長
「5度以下の冷水につかると体中がナイフで刺されるような激しい痛みに襲われ、すぐに体が動かなくなってしまいます。もし救命ボートなどが近くにあっても、ボートに上がることも厳しいでしょう。一般的な救命胴衣には保温機能はないので着用していることで生存できる時間が延びることもありません」

水温と気温の「温度差」で低体温症や心臓まひ

まもなく始まる大型連休でも海や川などといった水のレジャーで低体温症に注意が必要だと斎藤さんは指摘します。
その理由は「温度差」です。このところ最高気温が20度を超える日も多くなっていますが、春は、気温が上がっても水温はまだ低い状態です。
この温度差が、低体温症や心臓まひを引き起こす原因になるということです。

水温10度以上なら「背浮き」で待つ

もし、水の中に落ちてしまったら、どうすればいいのか。水温が10度以上なら、生存時間を延ばすことができる方法があると斎藤さんは指摘します。それは「あおむけの状態で水面に浮き、なるべく動かずに救助を待つ」ことです。

この「背浮き」の態勢を保つことができれば呼吸もしやすく、服の中に入った水は体温で温められます。
温められた水が服の外に出ていかなければ体温を奪われずにすみ、生存時間が延びる可能性があるということです。

斎藤秀俊会長
「海や川などの水辺では、水温が20度近くまで上がっている時に限って遊ぶようにしてほしい。また、『背浮き』が簡単にできるようにするためにも、水辺で遊ぶ時には必ず救命胴衣を身につけてください」

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