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約20年ぶりの円安水準 暮らしの影響や今後の見通しは

  • 2022年4月20日

20日の東京外国為替市場は一時、およそ20年ぶりの円安水準となる1ドル=129円台に値下がりしました。
酪農が盛んな茨城県内の牧場では、海外から輸入している飼料用の穀物などの値上がりで経営が圧迫されています。
円安による暮らしへの影響や、今後の見通しについてまとめました。

約20年ぶりの円安水準

20日の東京外国為替市場は、アメリカの長期金利の上昇を受けて日米の金利差が拡大するという見方から、より利回りが見込めるドルを買って円を売る動きが強まり、円相場は一時、1ドル=129円台前半と、2002年4月以来、20年ぶりの円安水準となりました。

ただ、その後は、このところ急速に円安ドル高が進んだこともあり、いったん利益を確定しようと、値上がりしたドルを売って円を買い戻す動きが出たことから1ドル=128円台前半まで値上がりするなど、値動きが大きくなっています。

円相場の推移

円相場は2013年3月、日銀の黒田総裁が就任する前の時点では1ドル=90円台前半でした。
こうした中、「黒田バズーカ」と呼ばれた市場に大量の資金を供給する大規模な金融緩和策を打ち出したことをきかっけに、円相場は一転して円安方向に動きます。

2015年6月には当時としてはおよそ12年半ぶりの水準となる1ドル=125円台まで円安ドル高が進みました。
このとき、衆議院の財務金融委員会で黒田総裁が「ここからさらに円安に振れることは、普通に考えるとなかなかありそうにない」と発言。市場では、行き過ぎた円安へのけん制だと受け止められました。
当時、アメリカでは、景気回復を受けて、リーマンショックから続いてきたゼロ金利政策の解除が視野に入り始めていましたが、この黒田総裁の発言もあって日銀の追加の金融緩和への期待が後退し、これ以上の円安は進みませんでした。

そして、今回の円安の背景にも日本とアメリカの金融政策の動向が大きく影響しています。1年前の去年3月には、1ドル=110円前後で取り引きされていて、新型コロナウイルスの感染状況などをにらみながら、一進一退の動きが続いていました。

しかし、去年10月以降、原油高に伴うインフレへの懸念からアメリカが金融引き締めに向かうという見方が広がって、円安ドル高が進み、去年11月には4年8か月ぶりに1ドル=115円台をつけました。

そして、今年に入ると、2月下旬のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、原油をはじめとする資源価格が一段と高騰。

3月、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が利上げを急ぐ姿勢を強調するのとは対照的に、日銀は金融緩和を続ける姿勢を鮮明にし、日米の金利差の拡大が強く意識される形となりました。

日銀が3月、長期金利の上昇を抑えるため、一定の期間、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「連続指値オペ」と呼ばれる措置に踏み切ったことで、円安ドル高が加速し、円相場は3月上旬から下旬にかけてわずか3週間で10円程度も値下がりしていました。

飼料値上がりで経営圧迫

原材料価格が高騰する中、酪農が盛んな茨城県小美玉市の牧場では、海外から輸入している飼料用の穀物などの値上がりで経営が圧迫されています。

小美玉市の宮澤智浩さんが経営する牧場では、およそ230頭の乳牛を飼育し、1日あたりおよそ6トンの生乳を酪農組合を通じて茨城県内の乳業メーカーなどに出荷しています。

この牧場では、飼料用の牧草やトウモロコシなどの穀物はおよそ90%を海外から輸入していますが、中国での需要の増加などで去年ごろから値上がりし、その後も原油価格の高騰などの影響で値上がりが続いているということです。

飼料にかかる費用は、去年6月の時点で1頭あたり1日1600円程度でしたが、現在は2000円程度と20%ほど上昇しているため、牧場全体では1日あたりの出費がおよそ9万2000円増えたということです。

また、生乳を出荷している乳業メーカーからは、新型コロナウイルスの影響で生乳が余る状況が続いている中、買い取り価格を上げることは難しいと説明されているということです。

この牧場では、飼料にかかる費用はもともと経営コストのおよそ半分を占めているため経営が圧迫されていて、宮澤さんは、今後円安が加速することで、経営状況がさらに悪化するのではないかと頭を悩ませています。

宮澤智浩さん
「飼料の原料がこれだけ急激に値上がりすると、われわれ生産者はお手上げ状態です。円安はまだ続くので、私たちは、我慢して、安心安全な牛乳を生産していく以外にいまのところできることがありません」

円安 外食産業は

円安が進んでいることについて、外食チェーン・サイゼリヤの堀埜一成社長は13日の決算会見で次のように述べました。

サイゼリヤ 堀埜一成社長
「コロナ禍が続く中で、エネルギーや原材料価格の高騰も加わり、経営環境はこれまでにない逆風となっている。さらに円安で、すべての輸入食材の価格に影響が及ぶため、最悪の状況だ」

そのうえで、しばらく円安傾向が続くことも想定して、輸入している食材を国産に切り替えるなどの対応を検討していく考えを明らかにしました。

吉野家ホールディングスの河村泰貴社長
「世界中から食材を輸入しているため、あまり過度に進んだ円安は歓迎しない。ただでさえ牛肉などの食材の価格が上がっているし、物流費や容器や袋などの包材費も上がっており、円安はトリプルパンチだ。経営への影響は小さくない。品質や価格、それに安定調達を考慮して、国内の食材で代替できるものについては切り替えていく」

○牛丼など商品の値上げについて
「現時点で決定していることは何もないが、販売メニューの価格については常に検討している」

閉店する100円ショップも

原材料価格の高騰に加え、円安も進展する中、影響は、日常の暮らしを支える100円ショップにも及んでいます。都内で100円ショップを展開している企業は、商品の仕入れ値が高騰している影響で5月末までに9つの店舗すべてを閉店する予定ですでに4店舗を閉め、20日は中央区の日本橋に近い店舗を閉店しました。

扱う商品は中国や東アジアなどからの輸入が多く原油高や原材料価格の高騰、新型コロナによる中国の生産の休止に加え去年から続く円安傾向も影響し、ことし1月に閉店を決めたということです。

この店舗は近くの住民やオフィス街の人たちが多く訪れていて、最後の営業日となった20日も常連客が次々と訪れ、閉店を名残惜しんでいました。
 

60代女性

いまの時代、100円で買えるのは助かっていたので、このあたりを通る時は必ず寄っていました。本当に残念で、さみしいです。

いっぽう、この企業に商品を卸している商社によりますと、閉店するこの企業への商品の卸値は抑える予定だったものの急激な円安の影響もあり、卸値は去年末と比べ、2割近く高くなったということです。
この店では、もうけは度外視し、すべての商品を50円で販売していました。
 

100円ショップ 堀内啓吾店長
「頑張ってきたので、名残惜しいですが、販売価格を上げるのは、100円ショップだと難しかったです。経営を続けていったとしてもこの円安などの状況では難しいと思います」

留学生からは不安の声

円安が急速に進んでいることを受けて、現地で留学している人からは、暮らしの先行きを不安視する声が聞かれました。

このうち、カナダ・バンクーバーの短期大学に留学している女性は、大学3年まで日本で過ごし、ことし2月から留学生活を始めました。
日本でのアルバイトなどでためた日本円をカナダドルに両替しながら生活費にあてていますがカナダドルも、アメリカドルにほぼ連動する形で円安が進んでいて、去年の夏ごろは80円台後半で推移していましたが、20日は102円前後まで円安が進んでいます。

円安の進展を受け、3月上旬にまとめてカナダドルに両替したということです。

大学生

生活費が足りるかなというのが正直な感想です。もともとカナダの物価が高いのもありますが、日本で生活していた時と比べると食費は2倍くらいかかっている印象です。外食を控えていて、今月は行かないでおこうと思います。

ことしいっぱいはカナダで経営などについて学び、企業で働く経験も予定しているということですが生活費をまかなうため予定より早く、アルバイトをすることにしたということです。

 

お金が減るのがちょっと早いと思い、生活費が不安になってきたのでアルバイトを早めることにしました。とりあえず、円安が落ち着いてほしいです。

今後の見通し 専門家は

三井住友信託銀行マーケットストラテジストの瀬良礼子さんは、およそ20年ぶりとなる円安の影響について、次のように説明しています。(13日に取材)

瀬良礼子さん
○企業への影響

「輸出企業にとっては業績にプラスとなるが、日本は食糧やエネルギーを輸入に頼っており、生活へのマイナス影響もこれから目立ってくるだろう。電気やガスなど光熱費が追加で値上がりする可能性があり、ガソリンや、エネルギーを使うさまざまなサービスの価格についても、上昇圧力になる。
コロナ前であれば、これほどの円安なら、大勢の外国人が訪れて日本経済を押し上げ、サービス業にプラスだっただろうが、コロナ禍でありサービス業を押し上げる効果は期待できない」

○今後の円相場の見通し
「ここで止まるというよりは、もう少し円安の余地はあるかと思う。ただ、今回の円安の背景にあるアメリカの物価上昇率が4月・5月あたりでピークとなり、それと同時に、利上げ観測や円安ドル高の動きも一服するのではないか」

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