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富士山噴火 避難対象地域に80万人 市街地「原則徒歩で避難」中間報告

  • 2022年3月31日

富士山の噴火を想定した新しい避難計画の中間報告がまとまりました。
噴石や溶岩流によって避難の対象となる地域に住む人は静岡・山梨・神奈川のあわせて80万人あまりに上ると推計されました。
自動車でいっせいに移動すると深刻な渋滞が発生するおそれがあることから、市街地では原則、徒歩で避難する必要があるとしています。

避難対象地域の住民 最大80万人超

新しい避難計画は、富士山の噴火を想定したハザードマップが去年、改定されたことを受けて、静岡・山梨・神奈川の3県と国、有識者などでつくる火山防災対策協議会が見直しを進めてきたもので、30日中間報告が示されました。

それによりますと噴火によって避難が必要となる地域を6段階に分け、対象となる地域に住む人は静岡・山梨・神奈川の3県の27市町村であわせて80万5600人に上ると推計されています。

静岡県:57万4790人
山梨県:12万4078人
神奈川県:10万6759人

山梨県と神奈川県について、市町村別の人数は次の通りです。

神奈川県
南足柄市 3万2854人
小田原市 2万1789人
開成町 1万6753人
大井町 1万4345人
山北町 8038人
松田町 7674人
相模原市 5306人

 

山梨県
富士吉田市 4万5348人
富士河口湖町 2万5288人
都留市 2万2476人
大月市 1万5309人
上野原市 7082人
西桂町 3702人
鳴沢村 2694人
山中湖村 1665人
忍野村 506人
身延町 8人

火砕流・溶岩流など到達 従来推計の7倍

CG 溶岩流イメージ

このうち火砕流や大きな噴石が及んだり溶岩流が3時間以内に到達したりする地域に住む人は静岡と山梨の10の市町村で11万6000人あまりと、これまでの推計の7倍に達すると想定されています。

これらの地域の人は火山性地震や地殻変動が観測されるなどして大規模な噴火の前に警戒レベルが引き上げられた場合や、噴火直後には速やかに危険な区域から避難する必要があると指摘しています。

住民は原則徒歩で避難を

避難訓練の様子

また、住民の避難にかかる時間をシミュレーションしたところ、市街地では住民が自動車でいっせいに移動すると深刻な渋滞が発生し、避難が間に合わないおそれがあることがわかりました。

溶岩流は壊滅的な被害をもたらすものの、傾斜の緩い場所では流れる速度が比較的遅いことから、渋滞が予想される市街地では障害者や高齢者など車で避難する必要がある人をのぞいて「原則、徒歩で避難する」という新しい方針も示されました。

「広域避難」は段階的に・火山現象ごとの対応を

中間報告では噴火の影響が広範囲に及んだ場合に周辺の自治体へ避難する「広域避難」の考え方についても示されました。

大きな噴石や火砕流などは発生前の避難が必要とした一方、溶岩流は火口の位置が特定されれば被害の影響地域も把握しやすく、まずは地域内で安全な場所に避難したあと、噴火の規模や状況に応じて段階的に広げていくとしています。

このほか、積もった雪が噴火でとけて流れ下る「融雪型火山泥流」への対応など、季節や地域ごとに必要となる避難の考え方についても報告されました。

協議会では避難に支援が必要な人たちの対策や、広範囲に影響が懸念される火山灰への対応などについて検討を行い、2022年度にも最終的な避難計画をまとめることにしています。

溶岩流の到達想定 神奈川山北町では

町の中心部への溶岩流の到達が想定されている神奈川県山北町は、住民が町の外に避難できるよう、埼玉や茨城、新潟の自治体と協定を結ぶなど対策を進めています。

山北町で富士山の噴火による溶岩流が到達する可能性がある南側の一部の地域には町役場や国道があるほか、町民のおよそ8割にあたる8000人余りが暮らしています。
溶岩流が到達すると、国道を使った避難や、町役場での業務の継続が困難になる可能性があるということです。

このため町は、住民が町の外にも避難できることなどを目指して、去年5月からことし2月にかけて、埼玉県三芳町、茨城県境町、それに新潟県村上市と災害時、相互に協力するための協定を結びました。

協定では災害時、互いに避難者を受け入れたり救援物資の輸送を行ったりすることなどを定めていて、町は、30日発表された中間報告を踏まえ、具体的な避難の方法を検討することにしています。

70歳の女性
「溶岩のことは知らなかったので怖いです。どう対処したらいいのか知りたいです」

山北町 湯川裕司町長
「改めて避難について具体的に考えなければと実感した。これまで何十年も想定していなかったことなので町できちんと対策を講じて啓発したい」

専門家「歩いて逃げる 浸透必要」

中間報告の策定に携わった山梨県富士山科学研究所の吉本充宏主幹研究員は、次のように指摘しています。

山梨県富士山科学研究所 吉本充宏主幹研究員
「避難に助けが必要な要支援者が逃げる段階になったら一般の住民は車での避難を控えることが大事になってくる。当然、車で逃げたい気持ちはわからなくはないが、要支援者が安全に逃げることを第一に考えて行動してほしい。
今までは車での避難をベースとした訓練だったが今後は形態を変え、徒歩での避難訓練を行い、歩いて逃げることを浸透させていく必要がある。富士山の噴火自体を止めることはできないが、的確に逃げることで命は十分に守れる現象であり、1人ひとりが噴火から命を守るにはどうすればいいかなどを考える機会にしてほしい」

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