1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. もっとニュース
  4. 葬儀会社から賄賂で有罪判決 神奈川県警と葬儀会社 癒着の実態

葬儀会社から賄賂で有罪判決 神奈川県警と葬儀会社 癒着の実態

  • 2022年3月15日

葬儀会社から賄賂を受け取った罪に問われた神奈川県警の元警察官の裁判。横浜地方裁判所は15日、執行猶予のついた、有罪判決を言い渡しました。

この裁判のなかで、元警察官らは遺体の搬送をめぐる神奈川県警と葬儀会社の不適切な関係を証言。
事件の背景に何があるのか、最近まで神奈川県警に仕事を任されていた葬儀会社の関係者が実態を証言しました。

葬儀会社から賄賂 元警察官に有罪判決

大和警察署の警部補だった加藤聖被告(49)は、葬儀会社から、警察が取り扱った死者の遺族を優先的に紹介してほしいと依頼を受けた見返りに、現金や金券などおよそ200万円分を受け取ったとして、受託収賄の罪に問われました。

これまでの裁判で加藤被告は起訴された内容を認めたうえで、「自分が知る限り、神奈川県警の警察署ではすべて葬儀会社からビール券をもらっていた」などと証言していました。

15日の判決で、横浜地方裁判所の青沼潔裁判官は「賄賂の金額は、決して少ないとは言えず、警察官の職務の公正に対する社会の信頼が相当程度、害された」と述べました。

そして、「弁護人は神奈川県警で葬儀業者が警察官に金券などを渡す悪習が続いているのが問題意識をまひさせたと主張するが、そういう状況が存在したとしても、本件犯行は性質が異なる」などと指摘し、懲役2年6か月、執行猶予4年を言い渡しました。

神奈川県警察本部は判決について、「職員に対する指導、教養を徹底し、再発防止を進める」とコメントしました。
一方、ほかの警察署でも金券を受け取っていたという証言については、「同種の案件で調査しているものはない」としています。

不適切な関係示す証言次々と

今回の裁判の中では、遺体の搬送をめぐって、神奈川県警と葬儀会社の不適切な関係を示す証言が次々に明らかになりました。

元警察官の加藤被告は被告人質問で、「自分が知る限り、神奈川県警の警察署ではすべて葬儀会社からビール券をもらっていた。もらった現金のうち、30万円ほどは自分の部下に渡した」などと証言しました。

さらに「自分が警察官になったときからこういうことが行われていた。ほかの警察署では、葬儀会社から警察官の口座に現金が振り込まれたり、受け取った数百枚のビール券を換金したりして問題にもなった」と話しました。

加藤被告の同僚だった元警察官も裁判で証言に立ち、「自分が勤務した警察署では、どこでも葬儀会社から金券をもらっていた。自分が見ていたことと加藤被告がやったことのどこが違うのかと思う」と述べました。

また、すでに有罪判決を受けた贈賄側の裁判では、葬儀会社の実質的経営者の夫で神奈川県警の元警部補が、「自分が警察官になった当時から葬儀会社に飲食の差し入れや、金券などをもらうのが慣例だった」などと証言しました。

贈賄側の裁判ではこのほか、「葬儀会社から金券をもらったことがある」といった複数の警察官の供述調書も読み上げられました。

背景に神奈川県警特有の慣例

県警と葬儀会社の不適切な関係の背景には、遺体の搬送をめぐる神奈川県警特有の慣例がありました。

全国の警察は

神奈川県警によりますと、全国の警察では死因のわからない遺体が見つかった場合、現場から警察署や解剖を行う病院への搬送を公用車で行います。

神奈川県警は

一方、神奈川県警では、事件性が明らかな遺体以外は、搬送の大半を葬儀会社に任せていました。
その理由について、県警は、こうした遺体の取り扱いは年間およそ1万2000件に上るにもかかわらず、専用の車両は14台しかなく、遺体の保管庫の整備も進んでいないことを挙げています。
ただ、こうした運用を行っているのは、全国の警察で神奈川県警だけです。こうした慣例が県警と葬儀会社の癒着を生んだとみられています。

葬儀会社どう選ばれる

遺族に特に希望する業者がなければ、警察が複数の葬儀会社を紹介する形で選んでもらいます。家族を失ったばかりの遺族は、紹介された業者の中から選ぶケースがほとんどで、遺体の搬送を担当すれば、そのまま葬儀も請け負うことが多いため業者にとっては警察に紹介してもらうメリットは大きいということです。
今回の事件では贈賄側の会社が元警察官に対し、現金などを渡す見返りに「優先的に遺族に紹介してほしい」と働きかけた結果、売り上げが増えていました。

遺族は負担増
癒着の構図の中で、置き去りにされたのが遺族です。ほかの都道府県警では、警察署への搬送は公費でまかなわれますが、神奈川では、葬儀会社に依頼するため、料金は遺族の負担です。
少なくとも今回の事件では、遺族は、警察に都合のいい葬儀会社を選ばされ、料金も負担していたことになります。

運用の改善は
今回の事件を受けて、神奈川県警は警察車両を臨時で使い、死因のわからない遺体の半数ほどを警察の公用車で搬送しているということです。新年度予算に専用車両の配備などのためおよそ5000万円を計上していて、数年をかけて、すべての搬送を警察で担えるよう体制を整えることにしています。

葬儀関係者が語る癒着の実態

今回の事件について、最近まで神奈川県警から仕事を任されていた葬儀会社の関係者が証言しました。取材に応じた関係者は、1回につき20枚以上のビール券を警察官に渡していたといいます。

関係者
「神奈川県内でもらわない警察署はないと思うので、今頃明るみに出ること自体が不思議に思う。葬儀会社は全員知っている。業者が積極的に渡すケースもあれば、警察から要求されることもあった。警察は『お清め』という認識でもらっていて、ビール券を持って行くと『お清めだ、お清めだ』と言われ、『ありがとう、悪いね』みたいな感じで受け取るので、はじめは驚いた」

いったん搬送を担当すると、多くの場合、葬儀まで請け負うことができたといい、「ビール券を渡せば優先的に仕事を回してもらえる。渡さないと、別の葬儀会社に仕事が流れることになる」と証言しました。 

遺族が頼みたい葬儀会社があった場合でも、警察官が「断られた」と言って特定の業者を紹介することもあったとみられ、「心当たりがないのに、遺族から『搬送を断るなんてひどい』と言われることがよくあった」と述べました。

事件をきっかけに癒着の実態が明らかになったことについては、「警察や葬儀会社がきれいな関係で、互いに気持ちよく仕事ができる環境になればいいと思う」と話していました。

不適切な関係については、NHKの取材に対し複数の業者が同様の証言をしていました。

ページトップに戻る