1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. もっとニュース
  4. 大和市の次男殺害 児童相談所で2回保護 経緯や対応 今後検証へ

大和市の次男殺害 児童相談所で2回保護 経緯や対応 今後検証へ

  • 2022年2月22日

神奈川県大和市で小学1年生だった次男を窒息死させたとして母親が逮捕された事件。次男は2回にわたって児童相談所に保護されていました。
児童相談所は「通常の養育自体には問題が見られず、対応が難しい家庭だった」と説明。専門家は、慎重な対応が必要な家庭であることは明らかで、適切に対応していれば防ぐことができたはずだと指摘しています。
県と児童相談所は第三者の検証委員会を立ち上げて、児童相談所の対応について、検証することにしています。

児童相談所で2回保護 施設入所は家裁が却下

神奈川県大和市で、2019年8月、自宅のアパートの部屋で小学1年生だった上田雄大くん(7)の鼻や口をふさいで窒息死させたとして、母親が殺人の疑いで逮捕されました。
警察によりますと、調べに対し「何もしていない」と容疑を否認しているということです。

雄大くんは、2回にわたって児童相談所に保護されていたことが県などへの取材でわかりました。
詳しい経緯がこちらです。

〇雄大くん生まれる
2012年6月、雄大くんは次男として生まれました。

〇1回目の保護と施設入所(2012/11~2015/3)
2012年10月、母親は雄大くんについて「気がついたら青くなっていた。心肺停止の状態になった」などと消防に通報し、救急搬送され、雄大くんは入院します。
児童相談所は10年ほど前の2002年に雄大くんの兄が、2003年には姉が、それぞれ生後半年たたないうちに死亡していたことなどから一時保護しました。

一時保護は2012年11月から始まり、2014年12月には保護者の同意を得たうえで、施設に入所させる措置をとりました。
一時保護と施設入所はあわせて2年あまり続きましたが、雄大くんが2歳9か月になった2015年の3月、安全を確保できると判断した児童相談所は施設入所を解除し在宅での指導に切り替えました。

〇2回目の一時保護(2017/4~2018/11)
しかし、その後、2017年4月になって雄大くんの幼い弟(3男)が自宅で死亡。これを受けて児童相談所はあらためて雄大くんを一時保護しました。

〇家裁が施設入所申し立て却下
児童相談所は、児童養護施設や乳児院などの施設への入所の措置が必要だと判断したものの、保護者の同意が得られない場合、児童福祉法に基づいて家庭裁判所に申し立てを行うことになっています。
申し立てにあたって児童相談所は弁護士の助言を得ながら必要な書類に事案の内容や施設に入所する必要性を記載するということです。審判の結果、申し立てが認められれば保護者の同意がなくても施設に入所させることができます。

児童相談所では翌年、施設に入所させようとしましたが保護者の同意が得られなかったため、2018年2月、横浜家庭裁判所に施設入所を求める審判を申し立てます。ところが、2018年10月、家庭裁判所はこの申し立てを却下したといいます。

児童相談所(却下について)
「家裁の判断は、他の子どもが亡くなったことが保護者の責任か不明であることなどを理由に申し立てを却下したものだった。家裁の判断は残念だが、児相側としても間違いなく家庭での養育が不適切だというところまでの書類をそろえて提出することはできなかったということになり、その点も大変残念だ」

横浜家庭裁判所(却下についてのコメント)
「非公開の手続きのため、理由など個別具体的な内容については控える」

〇4日前に母親と面接
児童相談所は11月に一時保護を解除。小学校など地域の関係機関と連携しながら在宅指導を行っていましたが2019年の8月、雄大くんは亡くなりました。
児童相談所は死亡する4日前に母親と雄大くんと面接したということですが、問題なく生活が送れている様子だったとしています。

市や教育委員会は

大和市教育委員会によりますと亡くなった雄大くんは2019年4月に市内の小学校に入学しました。長期間休むことはなく、学校行事にも参加していたということで、家庭訪問には母親が対応し、特に問題はなかったということです。

大和市教育委員会
「学校からは穏やかに生活を送っていたと報告を受けています。市内の小学校に通う子どもが亡くなり痛ましい気持ちです」

大和市の担当者によりますと、雄大くんが生まれる1か月前の2012年5月、母親が通っている病院から市に対して、「過去に2人の子どもが死亡している。養育力に心配がある」という内容の連絡があったということです。

市は児童相談所に連絡し、双方の職員が自宅を訪問して相談に乗るなど、サポートにあたったということです。同じ年の10月には、雄大くんが「呼吸困難になった」と母親が消防に通報して救急搬送され、雄大くんはこのあと、児童相談所に保護されました。

2015年の3月に家庭に戻されたあとは、市や児童相談所の職員が訪問していたということです。その後、雄大くんの弟が亡くなったことを受けて再び児童相談所に保護され、2018年の11月に自宅に戻ったあと、市は雄大くんが亡くなるまでの9か月間に5回自宅を訪問したということです。

この間、子育ての相談はあったものの、特段変わった様子はなかったということです。

大和市 大木哲市長
「今回のケースは児童相談所が主体となって市も対応してきた。今度の真相究明のためにできることがあれば全力で協力していきたい」

児童相談所「通常の養育に問題見られなかった」

神奈川県大和市で小学1年生だった息子を窒息死させたとして母親が逮捕された事件で、対応にあたった児童相談所は養育に問題は見られなかったと話しています。

大和綾瀬地域児童相談所 高須正幸所長
「雄大くんの学校での様子も問題がなく、訪問や面接を重ねても母親と楽しくやりとりをしている様子も見られ、通常の養育自体には問題が見られなかった。事件となった今考えると大変対応が難しい家庭だったと思う。大変重く受け止めている。
重点的に対処しないといけないケースと捉えて、協議を重ねて対応してきた。不適切な対応はなかったと信じている」

県と児童相談所は学識者や医師、それに弁護士などによる第三者の検証委員会を立ち上げて、児童相談所の対応について、検証することにしています。

専門家「適切に対応していれば防げたはず」

今回のケースについて、児童虐待に詳しい専門家は、慎重な対応が必要な家庭であることは明らかで、適切に対応していれば防ぐことができたはずだと指摘しています。

刑事法専門 児童虐待に詳しい千葉大学大学院 後藤弘子教授
「今回のケースはすでに子どもが3人死亡していて慎重な対応が求められることは明らかで、適切に対応していれば防ぐことができたはずだ。家庭裁判所が施設入所の申し立てを却下したケースはこれまでの統計を見ても極めて少ない。家庭裁判所がなぜ却下したのかや、児童相談所が家庭裁判所に判断に必要な情報を十分提供できていたのかなど経緯を検証するべきだ。
 

保護を解除したあと、親子をどう支援していたのか、母親が同席しない状況で子どもから直接話を聞く場を設けていたのか、児童相談所の対応についても検証が必要だ。生後まもない子どもが相次いで死亡していることなどからも母親が生活上の困難を抱えていた可能性もあり、支援が適切だったのか疑問だ」

ページトップに戻る