1月23日、栃木県内を走っていたJR宇都宮線の車内で、喫煙をしていた男を注意した高校生が、相手から暴行を受け顔の骨を折るなどの大けがを負う事件がありました。高校生はぜんそくの持病がありました。
正しいことをしたのに暴行をうける理不尽。でも、もし同じような場面に遭遇したらどうしたらいいのか、戸惑いの声が上がっています。
警察への取材に基づく事件の経緯です。事件は1月23日、日曜日の昼ごろ、JR宇都宮線の列車内で起きました。
車内の優先席では、宇都宮市の飲食店従業員が横になり、「加熱式たばこ」を吸っていたといいます。
この時、同じ車両に乗っていた高校2年の男子高校生が優先席に歩み寄り、「たばこを吸うのをやめてもらえませんか」と注意。
すると容疑者は立ち上がって、「なんだお前」などと怒鳴り始めたといいます。
高校生は手のひらをかざして相手を制止するように姿勢を取った上で、「離れてください」と述べたということです。
これに対して容疑者は「手を出したな」などと逆上。
高校生の顔を足で蹴るなどの暴行を加えたということです。
このあと車掌が駆けつけて「お客様やめてください」と声をかけますが、容疑者は暴行をやめなかったといいます。
列車が自治医大駅のホームに着くと、容疑者は高校生をホームに引きずり出してさらに暴行を加え、駅員が止めに入ってようやく暴行をやめたということです。
暴行は15分にわたったということで、高校生は顔の骨を折るなどの大けがを負いました。
実際に、電車内で喫煙している人を見かけたら。そして、注意した人が逆に暴行を受けている場面に遭遇したらどう対応できるのか。宇都宮市内で聞いてみました。
本人は持病があって、車内喫煙を注意しようという気持ちは正義感がありすごくいいことだと思うのに、被害に遭ってしまってかわいそう。周りに注意する人がいなかったのかなって思いました。けど、たばこを吸っちゃいけない場所なのに平然とやってる人を注意すると、何か言われたりするのではないかと思うと正直、怖いです。自分はちょっと注意できないと思います。
注意をしようかなと思います。でもそんな人とは関わりたくない。無視しちゃう時もあるかと思う。でも、やられてる(暴力を受けている)人がいたら、守りには行きます。
直接、注意するのではなくて、周りの人に声かけたりとか、もうちょっと間接的にできる方法があったんじゃないかなと思います。高校生だけで対処するのは危ないと思います。その場面で注意するかどうかはわからないですけど、高校生がやられていたら助けたいなとは思います。でも実際に相手を見ないと何とも言えないですけど。誰も助けてあげられなかったら、悲しいと思います。
正しいことを言ってもそういうこと(暴力)が起きてしまうのが、怖いなと思います。注意する勇気はないかな…。自分が車両を移動するとか、自分の逃げることを先に考えちゃうと思います。
JRによるとまず、車内の「SOSボタン」を押してほしいということです。このボタンを押すと、乗務員と連絡をとることができ、場合によっては乗務員が警察に通報するということです。
SNSなどでは、ボタンを押して電車をとめてしまうことをためらう声もありますが、JRは「危険だと思ったら、ちゅうちょすることなく押してほしい」としています。
また、専門家によりますと、相手を刺激しないよう隣の車両のボタンを押したり、刃物など危険なものを所持しているかもしれないというイメージを持つことも大切だということです。
今回の事件で、傷害などの罪に問われた元飲食店従業員に対し、宇都宮地方裁判所栃木支部は7月19日に開かれた裁判で、「被害者に対し一方的に暴行を加えていて、動機や経緯などに酌量の余地はなく悪質だ」などとして、懲役2年の実刑判決を言い渡しました。