埋もれた名作映画を発掘して上映し、ミニシアターの先駆けのひとつとして知られた東京・神保町の映画館「岩波ホール」が、コロナ禍の影響で運営が困難になったとして、ことし7月に閉館し、54年の歴史に幕を下ろすことになりました。
一方、文化の発信地として知られる東京・下北沢に新たなミニシアターが開業することになりました。
昭和54年
岩波ホールは、1968年に多目的ホールとして開館しました。その後、総支配人の高野悦子さんらが世界の埋もれた名作映画を発掘して上映する、「エキプ・ド・シネマ」の活動を展開し、大手の配給会社が扱わない作品を独自に選んで上映する「ミニシアター」の先駆けとして映画ファンに親しまれました。
去年2月には、耐震性の強化やスクリーンを新しくするなどの改装工事を行い、リニューアルオープンしていましたが、岩波ホールによりますと、新型コロナウイルスの影響で急激に経営環境が変化し、運営が困難になったため、ことし7月29日に閉館することを決めたということです。
岩波ホールでは、これまでに65か国の271作品を上映してきたということで、公式ホームページで、「54年間の長きにわたり、ご愛顧、ご支援を賜りました映画ファンの皆様、関係者の皆様に心より御礼申し上げます」とコメントしています。
20代男性
「ここでしか見られない作品があり、神保町に通う人たちにとっても特別な映画館でした。コロナ禍で文化の発信地が失われるのは残念です」
60代男性
「学生時代から通っていたので、閉館すると聞いて驚きました。よい映画であれば、集客に関わらずロングラン上映する、このような映画館はもうほかにないのではないかと思います」
いわゆる「ミニシアター」の代表格として独自に選んだ作品を上映してきた東京・渋谷の「アップリンク渋谷」も、コロナ禍の影響で去年5月に閉館。
ミニシアターを巡っては、クラウドファンディングを通じて運転資金を支援するなどの動きも出ていますが、新型コロナの感染が再び拡大する中で厳しい経営環境となっています。
「ミニシアター」の経営環境が厳しくなるなか、文化の発信地として知られる東京・下北沢で新たなミニシアターが開業することになりました。
シモキタの愛称で知られる東京・下北沢は雑貨店やライブハウス、劇場などが集まり、文化の発信地として知られています。私鉄大手の小田急電鉄が駅と線路を地下に移設し、その跡地にこのミニシアターは誕生します。
20日の開業を前に18日報道陣に公開されました。
座席数は71で、地域の人に親しみを持ってもらおうと、上映前に流れるマナーを呼びかける映像には地元のライブハウスや飲食店の店主が出演しています。
ミニシアターをめぐっては、新型コロナウイルスの影響で観客が落ち込んで閉館するところも出ています。
この施設は同じ建物にカフェやシェアオフィスも併設してビル全体で経営が成り立つよう工夫しているということです。
ミニシアターを運営「Incline」 大高健志さん
「映画のファンを増やして業界全体に貢献したい」
今後、音楽映画やドキュメンタリーなど多様な作品を上映するほか、赤ちゃん同伴の人向けの上映日も設ける予定です。