「まさか魚を食べていると思わなかったのでかなり驚きました」信州大学などの研究チームの声です。研究チームが長野県松本市の上高地に生息するニホンザルのふんをDNA解析した結果、冬場に魚を食べて越冬していることが明らかになったと発表しました。実際に魚を食べているサルを撮影した写真も入手し、イギリスの科学誌に掲載されています。
ニホンザルが魚を食べる生態を立証したのは信州大学理学部の東城幸治教授などの研究チームで、イギリスの科学誌で発表しました。
東城教授が率いる研究チームでは、上高地に生息するニホンザルの冬場のふんを採取し、サルが何を食べて冬を越しているのか調べてきました。
複数年の冬場のふんをDNA解析した結果、イワナ類などの魚のDNAの型を確認しました。川で捕まえた魚をエサとして日常的に食べて上高地の厳しい冬を越えているとみられるということです。
信州大学理学部 東城幸治教授
「サルの仲間はそもそも暖かいところにすみ、水が苦手だと言われていて、生きた魚を捕らえて食べるということはこれまで報告がありません。かなりの数のふんから魚のDNAが出てきているということは、おそらく恒常的に食べているのだろうと思っています」
雪の上で何かを食べているサル。手にしているのは魚です。
さらに、魚をくわえ、歩いている様子も捉えています。写真は北海道のカメラマンとその同行者が、平成31年1月に上高地で撮影しました。
写真はカメラマンから研究チームに提供されたということで、これらは、あわせてイギリスの科学誌に掲載されています。東城教授によりますと、ニホンザルに限らずサルが魚を食べている生態を科学的に立証し、実際にその様子を撮影した写真を科学誌で発表するのは、いずれも世界で初めてだということです。
上高地のニホンザルは、世界のサルの中で、最も厳しい寒さの環境で生息する集団とされ、食料が少なくなる冬場は木の皮や葉っぱなどを食べていると考えられてきました。研究チームでは、冬場は水の量が減るため川の魚を捕まえやすくなり、魚を食べる習慣が身についたと考えています。
信州大学理学部 東城幸治教授
「冬を越すうえで魚は良いたんぱく源、栄養源になると思います。上高地のニホンザル独特の行動だと考えていて、今回、魚を食べていることが分かったので、どのぐらいの割合で食べているのか、どういうところで狩りをしているのか、そのあたりも追究したい」
研究チームは、今回、立証されたのは環境に適応するために身についた行動や生態で、生物の進化を研究するうえでも極めて重要だとしています。
研究チームなどは、今後、サルが魚を捕まえる瞬間を撮影することにしています。