1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. もっとニュース
  4. 調布陥没 “トンネル真上以外地盤弱めず” 住民から疑問も

調布陥没 “トンネル真上以外地盤弱めず” 住民から疑問も

  • 2021年12月18日

トンネル工事が行われていた東京・調布市の住宅街で、道路の陥没や地下の空洞が相次いで見つかった問題で、工事を行った東日本高速道路は14日、トンネルの真上以外で行った調査の結果「工事の振動で地盤を弱めた事実は確認されなかった」などとする見解をまとめました。
調査結果については住民説明会が開かれましたが、疑問の声が相次ぎました。
調査結果やその詳しい方法、住民説明会での反応をまとめました。

陥没後初 工事現場公開

調布市の住宅街で去年、相次いで見つかった道路の陥没や地下の空洞は、地下深くで行われていた「東京外かく環状道路」=「外環道」のトンネル掘削工事で起きた地盤の緩みが原因とされています。
現場の掘削工事はすべて中断していますが16日、問題が発生した場所から南におよそ1キロの地点で、トンネル内の様子が初めて報道陣に公開されました。

直径15メートルほどのトンネルは「セグメント」と呼ばれる長さ4メートルほどのコンクリート製のパーツを組み上げて補強していて、工事が再開されれば道路を舗装する作業が行われるということです。トンネルの掘削はシールドマシンと呼ばれる巨大な機械で掘り進められ、一連の陥没や空洞の発生は工事で地盤が緩んだことが原因とされていますが、「機械の近くには路面を支える「床版」が設置されていないため、十分に安全を確保できない」として掘削の現場は公開されませんでした。

東日本高速道路東京外環工事事務所 齋藤克己副所長

「シールド工法というものがどういった形で実際に工事が行われてるのか。みなさまお住まいの地面の下でやらせていただいていることを知っていただくとともに、御理解いただければということで御案内をさせていただきました。今の時点で工事の再開を見通せる状況でははありませんが、地域の皆さんの不安の解消に向け、社をあげて誠心誠意努めていきたいです」

東日本高速 “真上以外地盤弱めた事実確認できず”

この2日前、東日本高速道路は、新たな調査結果を公表しました。
東日本高速道路はこれまでトンネルの真上については工事で地盤が緩んだことを認めた一方、そのほかでは「地盤は緩んでいない」と説明しています。これに対し、住民は真上以外の地域でも詳しい調査を行うよう求めていました。
このため東日本高速道路は、トンネルの真上以外の3地点でボーリング調査や採取した土の振動実験などを行い、結果を公表したのです。

それによりますと、3地点すべてで隙間が確認されたものの、数ミリ以上の特異な空洞などはないとしたほか、トンネル工事と同程度の振動を与えた実験でも隙間などは出来なかったとしています。
こうしたことからトンネル真上の東側のエリアでは、「掘削工事の振動が地盤を弱めた事実は確認されなかった」などとする見解をまとめました。

具体的な調査方法は?

今回、東日本高速道路はトンネルの真上の東側の3地点で5メートルほどの深さまでの「ボーリング調査」と、採取した土に揺れを与えて変化がないか調べる「振動実験」を行いました。

【ボーリング調査】
ボーリング調査では、トンネルの真上から数十メートルほど東の2地点と数百メートルほど離れた1地点で行い、採取した試料のエックス線写真や、カメラがついた「コーン」と呼ばれる器具を地下に打ち込み、内部の映像を確認しました。その結果、3地点すべてで隙間が確認されたものの通常の地盤でもみられるもので、数ミリを超えるようなすき間=「空隙」や空洞は確認されなかったとしています。

またカメラの映像にはすき間のように見える跡が確認されたものの、東日本高速道路は「調査器具を打ち込む途中で土を引きずった跡で、工事でできたものではない」と説明しています。

【振動実験】
振動実験は、採取した土に地下のトンネル工事で確認された振動と同じ加速度(4.5gal)の揺れを3分間、間をおいて3回加えたほか、さらに加速度を大きくしながら8回、最終的には90倍近く大きな揺れ(400gal)を加えて行いました。
結果について東日本高速道路はいずれの場合も試験体に変化はほとんどみられず、亀裂などは発生しなかったとしています。

別の専門家 “真上以外も工事で被害の可能性”

一方、芝浦工業大学の稲積教授が住民の要望を受けてことし10月に公表した独自の地盤調査では、地下5メートル程度までの地盤が弱く亀裂のような穴、「空隙」が多数確認されたとしていて「工事の振動で地盤が軟弱化し、トンネルの真上以外の場所でも亀裂などの被害が広がった可能性がある」と分析しています。

 

異なる調査結果について東日本高速道路は「トンネルを掘削するシールドマシンの振動による揺れの大きさは十分に小さく、エネルギー量も少ない。また一般的に地上に近づくほどエネルギーは減衰するため、工事の振動が真上以外の地盤を弱めたとは考えにくい」話しています。

住民からは疑問の声

この問題で17日、東日本高速道路が行った地盤調査の結果などについての説明会が開かれ、住民からは疑問の声が相次ぎました。
 

調布市で行われた説明会は道路の陥没や地下の空洞の原因とされる地下深くのトンネル工事をした東日本高速道路などが開き、住民およそ50人が参加しました。東日本高速道路はトンネルの真上以外で行った地盤の調査の結果「工事の振動が地盤を弱めた事実は確認されなかった」などとする見解について、詳しく説明しました。
住民からは「トンネルの真上以外でも家の被害は広がっていて、調査結果との整合性がとれない」とか、「採取した土の振動実験は揺れを感じた時間よりあまりに短く、実験の条件が不正確ではないか」などと調査の手法や結果に対する疑問の声が相次ぎました。
これに対し会社側の担当者は、工事の振動で住宅に被害を与えた可能性は否定できないとした上で、「必要に応じて追加の調査を行っていく」などと回答しました。

住民の女性
「真上以外の住宅被害と工事の振動との因果関係について明確な説明がなく、結論ありきの調査だったのではないか。事業者には誠心誠意、説明を尽くしてもらいたい」

ページトップに戻る