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東京 武蔵野市 住民投票に外国籍の住民も参加認める条例案

  • 2021年11月19日

東京・武蔵野市は、実質的に外国籍の住民も日本国籍の住民と同じ条件で参加を認める常設型の住民投票の条例案を19日から始まった市議会に提出しました。条例案の詳細、市民の声、専門家の声など詳しくお伝えします。

住民投票条例案 外国籍の人も対象

武蔵野市の松下玲子市長は、19日から始まった市議会の本会議で、「市民参加を進めるため常設型の住民投票制度の確立を目指す。武蔵野市の豊かで多様性ある市民の力がしっかり生かされるよう市民参加や協働の取り組みを進めたい」と述べました。

提出した条例案は、あらかじめ制度の仕組みなどを定めておく常設型で、投票の資格は3か月以上市内に住所がある18歳以上とされ、実質的に外国籍の住民も日本国籍の住民と同じ要件となっています。

市によりますと、条例に基づく住民投票のため法的な拘束力はなく、市長や議会は結果を尊重しながら議論した上で市政に反映するかを決定するということです。

また、投票資格に外国籍の住民を含めるのは、去年12月の時点で常設の住民投票条例がある全国の78自治体のうち43自治体で、このうち、要件を日本国籍の住民と実質的に同じとしているのは神奈川・逗子市と大阪・豊中市の合わせて2市だということです。

一方、今回の条例案をめぐっては、「十分に住民の意見が条例案に反映されているとは考えられない」などとして、廃案か継続審査にするよう求める陳情も議会に出されています。条例案は、12月採決される見通しです。

条例案と市の説明を詳しく

○今回提出された条例案(第5条を抜粋)
第5条
住民投票の投票権を有する者(以下「投票資格者」という。)は、年齢満 18 年以上の日本国籍を有する者又は定住外国人であって、かつ、武蔵野市に住民票が作成された日(他の市町村(特別区を含む。)から武蔵野市の区域内に住所を移した者で、住民基本台帳法 (昭和 42 年法律第 81 号)第 22 条の規定により届出をしたものについては、当該届出をした日)から引き続き3月以上武蔵野市の住民基本台帳に記録されている者とする。

2 前項に規定する「定住外国人」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。

(1)出入国管理及び難民認定法(昭和 26 年政令第 319 号)第 19 条の3に規定する中長期在 留者
(2)日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法 (平成3年法律第 71 号)に定める特別永住者 

○市の説明(8月に骨子案を出した際 ホームページより抜粋)
・自治基本条例第 19 条第2項において、「武蔵野市に住所を有する 18 歳以上の者のうち、別に 条例で定めるものの一定数以上から請求があったときは、住民投票を実施しなければならない」 8 と規定されています。自治基本条例における「市民」の定義は、在住・在勤・在学までをその 範囲としていますが、住民投票を実施する場合には、投票資格者名簿の調製など、住民基本台 帳の情報に基づく事務を前提としないと執行が著しく困難となることから、住民投票の実施の 請求(発議)に関しては、武蔵野市に住所を有する者に限定しています。
・これを踏まえ、この項目では、住民投票の投票権を有する者の要件について規定します。なお、 請求権を有する者(=署名できる人)と、投票権を有する者の要件をそれぞれ規定している自 治体もありますが、本市においては、その要件の共通する部分を本項目で説明しており、基準 日等の詳細は〔12 審査名簿の調製〕及び〔18 投票資格者名簿の調製等〕の項目で説明しています。
・年齢要件は、「満 18 年以上」としています。これは、公職選挙法上の有権者から拡大をしている自治体もありますが、本市としてその拡大の範囲を相当の合理性をもって定めることは困 難であるため、公職選挙法に準じることとし、自治基本条例で規定されたものです。
・住所要件は、「引き続き3月以上武蔵野市の住民基本台帳に記録されている者」としています。

地方自治法第 18 条及び公職選挙法第9条第2項では、地方公共団体の議会の議員及び長の選 挙権について「引き続き3か月以上当該地方公共団体の区域内に住所を有する者」と規定しています。これは、「その団体の住民として選挙に参与するためには、少なくとも一定期間をそこに住み、地縁的関係も深く、かつ、ある程度団体内の事情にも通じていることが必要である」という考えに基づいています(公職選挙法の逐条解説より)。本市においても、住所要件については、公職選挙法と同様の考えとしました。

・また、以下の理由から、投票資格者には、外国籍住民も含めることとしています。 
➢ 一般的に地方自治の本旨とは「住民自治」と「団体自治」の二つの要素からなり、団体 自治については主に地方自治法で規定されている一方で、住民自治についての規定は限 定されています。これは、各自治体の裁量の中でそれぞれの自治体の実情に応じた形で 自治のルールを定めることを許容するものと考えられています。本市の住民自治のルー ルを定めた自治基本条例では、「市民」の要件に国籍の要素はありませんので、外国籍 の人も「市民」に当然に含まれます。よって、本市の住民投票制度においては、投票資 格者に外国籍住民を含めることとします。このことは、国の投票制度と本市の住民投票 制度は別個のものであることを前提としつつ、国の投票制度で想定されていない部分を 本市の自治のルールの中で補完するという意味合いを持つものと考えます。

▽また、本市では、第六期長期計画のなかで武蔵野市の目指すべき姿の実現に向けたまち づくりの基本目標のひとつに「多様性を認め合う支え合いのまちづくり」を掲げています。「誰もが安心して住み続けられるよう、一人ひとりの多様性を認め合う、誰も排除 しない支え合いのまちづくりを推進する」ためには、外国籍住民も投票資格者に含める ことが必要であると考えます。

▽懇談会において、「国益に関するようなものについて住民投票が行われることとなった 場合に問題になる可能性はある」という意見が挙げられましたが、外国籍住民に限らず、 特定の集団だけで投票結果に影響を与える事態に陥らないよう、請求要件(必要署名数) や成立要件を設定することとします。

▽また、他自治体でみられる在留期間等の追加の要件について、本市においては、外国籍 住民にのみ在留期間などの要件を設けることには明確な合理性がないと判断し、適法に 在留資格を認められ本市に住民登録のある外国籍の人については、日本国籍を有する住民と同じ要件とすることが妥当であると考えます。

▽骨子案で示した「外国籍住民も投票資格者に含める」という市の考え方に対して、パブ リックコメント及び市民意見交換会で様々な意見が寄せられました。
また、無作為抽出 市民アンケートを実施したところ、賛成が 73.2%、反対が 20.5%でした。

市民からは賛否の声

武蔵野市が議会に提出した住民投票の条例案について市民からは賛否の声が上がっています。

50代の女性
「外国の人を市内で見かける機会は多く、武蔵野市に住んでいて住民票があるなら国籍は関係ない」
30代の女性
「国籍よりも住民であるかどうかを重視するべきだと思う。宗教や国籍に関係なくみんなで市を作りあげることが大事ではないか」
80代の男性
「ひとりひとりを平等に扱うのはいいと思うが、住んで3か月は短くて、安定感がない。やはり1年くらいは必要なのではないか」
60代の男性
「日本の方針は日本人が決めるものだ。住民投票であっても結果にある程度拘束されるので反対だ」
60代の女性
「賛成ではない。知らない間に外国籍の人口が増えたときに日本なのに日本人の意見が反映されないのではないか」

 

武蔵野市が行った市民へのアンケート
○賛成の意見
「一定期間暮らしている人なら投票資格があっていい」
「市民である以上、意思表示をする機会は与えられるべきだ」など
○反対の意見
「日本人の市民との違いは明確にするべきだ」
「日本に住み続ける前提でないと長期的な視点を持つことは難しい」など

ネパール人の男性「参加したい」

武蔵野市在住のネパール人のカンデル・ビシュヌ・プラシャドさんは、武蔵野市の吉祥寺駅近くでインド料理店を10年以上営んでいます。以前は都内の別の自治体に住んでいましたが3か月前に店がある武蔵野市に引っ越し、ネパール人の妻と3人の子どもとともに暮らしています。

カンデルさん
「日本人に助けてもらいながら店をやっていて、住むのは武蔵野市がいいと思った。日本を自分の国のように思っているし、店も営んでいて、家族も日本にいるのでずっと日本に住みたい。日本で投票したことがないから住民投票ができるようになればいいことだ。私も加わりたい」

専門家「多文化共生に沿う形が大切」

憲法が専門で、市民権などに詳しい南山大学の菅原真教授は次のように話しています。

南山大 菅原真教授
「地方参政権は、国レベルの法改正が必要なのに対して、住民投票の場合は自治体が独自に条例で定めることができる。大きなテーマになっている1つの問題について投票して結果が出てもその声を生かすか殺すかという法的な最終判断は市長にあるので、効力という問題でいえば参政権とは違っている。
外国から来た労働者、以前から住んでいる外国人がみずからの住んでいる自治体の重要な問題について意見を表明するために自治体の判断で住民投票に関わらせることは、憲法上も法律上も可能であると考える。
日本の社会で多文化共生の方向性が打ち出されている以上、それに沿った形で外国人の住民に地方行政に関わってもらうことは大切になるのではないか。外国人や若い住民の声を聞いて市政に反映することは自治体の判断としてひとつの方法だ」

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