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コロナ「抗原定量検査」も有効活用を 専門家「宝の持ち腐れ」

  • 2021年11月16日

政府は新型コロナウイルスのワクチン接種や検査による陰性の証明を示す「ワクチン・検査パッケージ」制度を活用して、行動制限を緩和する方針です。
今後は検査の有効活用を進めていく必要あるとされる一方、検査体制の拡充には課題もあります。専門家は、PCR検査や抗原検査などさまざまな検査方法を活用して気軽に検査を受けられるよう体制を整える必要があると指摘しています。

ワクチン・検査パッケージで検査需要高まり

新型コロナウイルスの第6波に備え、11月12日、政府は対策の全体像を決定し、ワクチンを接種できない人などを対象に来年3月まで、予約しなくても無料のPCR検査などを受けられるようにすることを挙げています。
また、「ワクチン・検査パッケージ」の導入でこれまでよりも検査の需要は高まるとみられています。

全国の企業や自治体などから自費でのPCR検査を受け付けている検査会社の1つでは、1日の検査能力を2万1000件と想定していましたが、第5波のピーク時には1日に2万5000件の検査を行ったということです。

感染状況が落ち着いた10月以降も、陰性確認のための依頼が続き、多い日で1日に2万件近くの検査を行っているということです。会社では、今後の検査需要の拡大を見込んでいますが、検査の精度を保つためにはスタッフの育成などに時間がかかるため、すぐには対応するのは難しいということです。

検査会社 池田昌人社長
「ワクチン・検査パッケージや検査の無料化で、個人からの依頼も増えると考えられるが、具体的にどれだけ増えるのか予測が難しく、どういう体制を取るべきか分からず悩ましい。政府から、具体的にどれぐらいの検査の量を想定しているか示してほしい」

専門家 PCR検査以外も有効活用を

新型コロナの検査に詳しい東海大学の宮地勇人教授は、PCR検査は高度な技術が必要で、急な体制拡充は難しいと指摘した上で、PCR検査以外の検査法も有効に活用していくべきだとしています。
宮地教授によりますと、ウイルスのたんぱく質の量を専用の装置で測定する「抗原定量検査」と呼ばれる検査法はPCR検査などと同様に精度が高いということですが、活用されているのは空港検疫など一部にとどまっているということです。

抗原定量検査とは

新型コロナウイルスの検査の1つ「抗原定量検査」は、精度の高い検査結果が短時間で得られるとされていますが検査会社によりますと、まだ、十分に活用されていないということです。

大手検査会社「エスアールエル」は、主に医療機関や自治体から依頼を受けていて、川崎市にある検査場では、PCR検査は1日に3000件、抗原定量検査は1日に1万5000件の検査を行うことができるということです。

会社によりますと、PCR検査は、結果がでるまでにおよそ2時間程度かかるのに対して、抗原定量検査は、30分ほどで結果が出る上に工程がほぼ自動化されているため、偽陽性など判定ミスも起こりにくく、費用もPCR検査の半額以下だということです。

しかし、現在、依頼される検査の多くはPCR検査で、抗原定量検査は空港の検疫などでは使われているものの、一般の検査ではあまり使われていないということです。

この会社では感染拡大の第5波で検査数が急増した、8月16日から29日までの間、PCR検査はフル稼働だったのに対し、抗原定量検査は5%程度にとどまっていたということで、ことし6月に増設した抗原定量検査の装置も現在は、ほぼ稼働していないということです。

「エスアールエル」小見和也取締役研究開発本部長
「抗原定量検査は大量の検査に適しているが、新型コロナ検査というとPCR検査と思われたり、精度が比較的低い『抗原定性キット』と同列に扱われたりして、有用性を十分に認識してもらえていない。もし、今後も検体が増えない場合は体制の縮小を含めて検討せざるを得ない」

「抗原定量検査」は、国などの指針でもPCR検査と、同じように使うことができるとされています。
東海大学の宮地勇人教授によりますと、抗原定量検査は、別の検査用の機器が活用できるため、推計で1日に30万件程度まで増やせる可能性があるということです。

東海大学 宮地勇人教授
「抗原定量検査は宝の持ち腐れ的なところがございまして、日本の国際空港で抗原定量検査によって入国者のスクリーン検査に使われ非常に実績がある。抗原定量検査を導入することで、PCRで拡充できなかった部分を十分補える位置づけと考えたほうがいいと思う。今使える検査資源を効率よく有効に使っていただく必要があるのではないかと考えている」

検査は3タイプ

新型コロナウイルスの検査には、PCR検査などの「核酸検出検査」、「抗原定量検査」、「抗原定性検査」(抗原検査キット)の主に3つのタイプがあります。
それぞれ特徴があり、厚生労働省や国立感染症研究所などでは状況に応じて適切に使うよう求めています。

○核酸検出検査(PCR検査)
「核酸検出検査」は、鼻やのどの奥の粘液やだ液などに含まれるウイルスの遺伝子の一部を人工的に増幅させて検出する検査法です。

このうち、PCR検査は最も感度が高いとされていますが、遺伝子の増幅や検体処理の手順があるため結果がでるまでに1時間から3時間程度の時間がかかるとされています。

厚生労働省によりますと、国内のPCR検査の体制は11月11日時点で1日あたり行政検査向けがおよそ25万件、自費検査向けがおよそ10万件だということです。

○抗原定量検査
「抗原定量検査」は、新型コロナウイルスに特徴的なたんぱく質を専用の装置で測定するもので、検査時間が30分程度と短いのが特徴です。PCR検査と同じく検査の精度は高いとされ、症状がある人でも、無症状の人でも確定診断に使うことができるとされています。

東京オリンピック・パラリンピックの選手団への陰性確認のための検査でも使われたということで、現在も主に空港検疫で使われています。厚生労働省よりますと、国内での検査能力は11月10日時点で、1日あたりおよそ7万7000件だということです。
 

一方で、東海大学の宮地勇人教授によりますと、抗原定量検査の装置自体は全国の多くの医療機関で別の検査のために使われていることから、潜在的には1日あたり30万件程度まで増やすことができる可能性があるということです。

○抗原定性検査
「抗原定性検査」は、「抗原検査キット」を使うことで専用の装置が必要なく、鼻やのどの奥などの粘膜を採取すれば、30分程度で結果がでます。症状がある人が陽性になった場合などでは新型コロナの確定診断に使うことができますが、ウイルスの量が一定以上ないと検出感度は低くなるとされ、症状がない人には推奨されていません。

ただ、手軽に使えて自分でも検査が行えることから、医療機関や介護施設などで感染拡大を防ぐために幅広く検査を行う際には有効な手段になり得るということです。

ことし9月からは、国が一般の人向けの「医薬品」として承認した抗原検査キットは調剤薬局での販売が認められています。

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