小中学生の不登校は、昨年度、東京都で1万7000人を超えて過去最多となるなど、首都圏の1都3県であわせて4万8000人余りとなったことがわかりました。全国でも児童生徒の不登校や自殺は過去最多となっていて、文部科学省は「極めて憂慮すべき結果で、コロナ禍による環境変化が大きな影響を与えていることがうかがえる」としています。1都3県の詳しい状況や相談先などの情報をまとめました。
東京都教育委員会によりますと、昨年度に都内の公立小中学校を30日以上欠席し不登校になった子どもは、小学生が前年度より1100人増えて6317人、中学生は520人増えて1万1371人でした。あわせて1万7688人で、小学生、中学生いずれも過去最多となりました。
都の教育委員会
「不登校には複雑な要因が絡んでいる。コロナ禍で漠然とした不安を感じたり生活リズムが乱れたりして学校に行く機会が減り、不登校につながったケースもあった」
このほか、感染への不安を理由に本人や保護者の意向で30日以上自主的に学校を休むなどした子どもの調査が初めて行われ、昨年度は小学生が2645人、中学生が615人でした。
神奈川県教育委員会によりますと、昨年度、公立小中学校で不登校だった子どもは、1万4267人で、前年度に比べて119人増え、数値を比較できる平成3年度以降で、最も多くなりました。
このうち、小学生は5126人で、548人増えました。一方、中学生は9141人で前年度より429人減りました。
神奈川県教育委員会
「コミュニケーションが苦手な子どもが増えていることに加えて、新型コロナの影響による不安感も大きかったと考えている。スクールカウンセラーなどの専門家や外部の相談機関とも連携して支援の充実に取り組んでいきたい」
また、新型コロナへの感染を避けるため、本人や保護者の意向で自主的に学校を休んだ子どもは、2056人にのぼりました。
埼玉県教育委員会などによりますと、昨年度、公立小中学校で不登校だった子どもは、8934人で、前年度に比べて659人多くなり、数値を比較できる平成3年度以降で最多となりました。
このうち、小学生は2624人で、503人増加し、中学生は6310人で前年度より156人増加しました。
また、新型コロナへの感染を避けるために本人や保護者の意向で自主的に学校を休んだ子どもは、1208人にのぼりました。
千葉県教育委員会によりますと、県内のすべての小中学校などを対象に行った調査で、昨年度、30日以上欠席し不登校の状態にある子どもは、小学生が前年度よりも337人増加の2700人、中学生が前年より12人増加の5321人で、あわせて8021人でした。
このうち、公立の小中学校で不登校になった児童・生徒の数は、今の調査方法を始めた平成10年度以降最も多くなりました。
千葉県教育委員会
「新型コロナの影響もあり、子どものストレスが高まっていて、今後も不登校が増える可能性がある。カウンセラーの増員など相談体制を充実させたい」
文部科学省は全国の小中学校と高校、それに特別支援学校を対象に不登校や自殺などの状況について昨年度の調査結果を公表しました。
それによりますと、学校を30日以上欠席した不登校の小中学生の人数は、前の年度から1万5000人近く増えて19万6127人と過去最多となっています。
また今回は、感染への不安によるいわゆる自主休校など、「感染回避」の目的で30日以上休んだ人数も初めて調査され、小中学生と高校生であわせて3万287人に上りました。
調査で「主たる要因」を聞いたところ、最も多かったのは小中学生ともに「無気力・不安」で、前年度より7ポイント高くなって47%でした。
続いて「生活リズムの乱れなど」が前年度より3ポイント高くなり12%でした。
また「いじめを除く友人関係を巡る問題」は前年度より4ポイント余り減って11%となりました。
調査によりますと、自殺した児童生徒は、小学生が7人、中学生が103人、高校生が305人となり、あわせて415人と前年度から100人近く増えて過去最多となりました。児童生徒の自殺は、この10年で2.7倍に増加しています。
警察庁の調査では昨年度は暫定で500人を超えていて、学校や教育委員会が把握していない事例がさらにあるとみられています。
中央大学人文科学研究所 高橋聡美客員研究員
〇自殺や不登校の増加の要因
「自殺の増加に関しては、1つはもともとのリスク要因の『家庭不和』や『親からの叱責』がコロナ禍によるステイホームやテレワークで悪化したこと、もう1つはリスクが高まった一方で友だちと会うなどのストレス対処法が制限されこと、その両方が相まって増加したと考えられる。不登校の子どもの増加は、コロナ禍で休みやすさが増した面もあるかもしれないが学校に行く楽しみがなくなったことが大きいと考えられる」
〇子どもへの関わり方は
「コロナ禍で学校行事や部活動が制限され友だちとの接触が極端に減るといった、子どもたちが置かれている状況は、大人が想像している以上にストレスだと改めて認識し、もっと子ども同士が触れ合える機会を意識的に持つことが重要だ。また、これまで子どものSOSを受け止めていたボランティア団体の活動なども休止せざるを得ない状況だったが、コロナ禍だからこそ、リスクの高い子どもに対する支援を継続しなければならず、気持ちを話せる場など直接相談できる体制作りが重要だ」
学校や家がつらくなったり、悩みや不安を感じたら、電話やチャットで気軽に相談できる窓口があります。1人で苦しまず、ぜひ話をしてみてください。
〇厚生労働省がまとめているSNSやチャットなどで相談を行なっている団体の一覧https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_sns.html
〇電話などで相談を受け付け
「24時間子供SOSダイヤル」
0120-0-78310
https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm
「子どもの人権110番」
0120-007-110
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html
「チャイルドライン」
0120-99-7777
https://childline.or.jp/
「いのちの電話の相談」
0120-783-556
https://www.inochinodenwa.org/
「新型コロナこころの健康相談電話」
050-3628-5672
※一般社団法人日本臨床心理士会 一般社団法人日本公認心理師協会