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帰宅困難者にどう対応 東京・埼玉で震度5強 一時滞在施設の状況は

  • 2021年10月8日

東京都や埼玉県で震度5強の揺れを観測した今回の地震では、交通機関に大きな影響が出て多くの帰宅困難者が発生しました。想定される首都直下地震など、都市部での地震の課題の1つが帰宅困難者への対応となりますが、夜間や早朝に災害が起きた際、対応が十分にできるのか。今回の地震は、対策の「死角」とも言える、新たな課題を浮き彫りにしました。

ターミナル駅には行き場を失った人が

首都圏では、地震の発生から日付が変わった8日の午前1時時点で運転見合わせ区間があったのは、JR東海道線、京浜東北線、横浜線、埼京線、常磐線、京葉線など、広い範囲に及んでいました。このため、ターミナル駅の周辺を中心に、多くの人が帰宅できずに行き場を失いました。

駅前にタクシーを待つ人の列ができていることを確認した国土交通省は、東京や千葉県、神奈川県、埼玉県のタクシー事業者に対し、駅にタクシーをできるだけ配車するよう要請しました。事業者も対応を急いだものの、東京ハイヤー・タクシー協会によりますと、タクシーの稼働台数はコロナ禍の前と比べて7割程度と、慢性的に台数に限りがある状態で、要請に迅速に対応するのは難しかったということです。

帰宅困難者のための「一時滞在施設」の状況は

東京都は、地震の影響で帰宅困難者が多く出ていた足立区と港区に対して、公共交通機関が動くまでの間、体を休めてもらうため「一時滞在施設」を開設するよう求めました。

このうち、震度5強の揺れを観測した足立区では、8日午前2時半ごろ、北千住駅から歩いて5分ほどの千寿本町小学校の体育館を、朝まで過ごすことができる一時滞在施設として開放しました。

体育館には、SNSなどでこのことを知った電車の乗客などが開設から1時間ほどの間に30人以上訪れ、区の職員が用意したマットを敷き、毛布をかぶって、束の間の休息を取っていました。

千葉県内の家に帰宅断念 20代会社員男性
「地震のあと、電車で北千住駅まで乗っていたのですが、そこで長い時間止まったためもう動かないだろうと思って駅を出ました。そのとき、足立区が施設を開放すると放送が流れ、ちょうど雨も降り始めていたので、わらにもすがる思いで辿り着きました」

午前2時すぎに東京都からの要請を受けた港区は、午前3時半前に区の福祉会館を「一時滞在施設」として開放しました。

港区では、区の施設のほか、民間の施設も「一時滞在施設」として借りられるよう65の事業者と協定を結んでいます。しかし、協定では、協力を要請できるのは原則として営業時間帯に限るとされていて、深夜に電話しても連絡は取れず、利用できる施設を探すことになりました。

「一時滞在施設」を開設できたのは地震の発生から5時間近くがたっていて、利用した人は7人にとどまったということです。

港区防災課の鈴木健課長は「今回の地震では、民間事業者に関わってもらうことが時間帯的に難しかった。今回を“生きた事例”と考え、深夜の対応を訓練に盛り込むなど、トライアンドエラーで備えたい」と話していました。

夜間・早朝の対応は十分か

東京都は、首都直下地震の際、最大で517万人の帰宅困難者が出ると推計し、安全を確保するための対策を進めています。帰宅困難者のうち近くに職場などもなく行き場を失うと見込まれる人は92万人に上るとして都は、受け入れ先となる「一時滞在施設」を準備してきていて、その数は、ことし7月の時点で1137か所、受け入れられる人数はおよそ44万5000人に上っています。

ただ、これらの数字は都内に滞在する人が最も多くなる「平日の昼間」を想定していて、施設が閉まっている時間帯に災害が発生した場合にすみやかに開設できる施設や収容人数は詳細には把握できていないということです。

昨夜の地震では、想定していた施設が利用できないという事態も起きました。夜間や早朝に災害が起きた際、帰宅困難者への対応が十分にできるのか、昨夜の地震は、対策の「死角」とも言える、新たな課題を浮き彫りにしました。

今回の地震を教訓にいっそうの対策を

都市防災が専門で帰宅困難の問題に詳しい東京大学大学院の廣井悠教授は、想定されている首都直下地震では大量の帰宅困難者の発生によって人命にかかわる問題が起こりうるとして、今回の地震を教訓にいっそう対策を進める必要があると指摘しています。首都直下地震と昨夜の地震と単純には比較できないとした上で次のように述べました。

東京大学大学院 廣井悠教授
「例えば歩道だけでなく車道にも人があふれ出し、群集雪崩や将棋倒しが起こりうる。また、迎えに行こうとする車などで道路は深刻な渋滞が発生し、救急車や消防車が動けずに助けられるはずの命が助けられない、消せるはずの火災が消せないということが最も懸念されることだ。昨夜の経験はきちんと共有しつつ、さらに大きな災害の時にどうするのかを考えることが重要で、昨日の地震が非常に寒い時期に起きていたら命に関わる問題になっていたかもしれない。東日本大震災からの10年間、大都市を平日の昼間に地震が襲った時にどうなるか想定した対策が進められてきたが、昼でも寒いときにどうするか、雨が降ったときにどうするか考えられていない課題はたくさんあり様々なケースへの対応を社会全体で考える必要がある」

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