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「コロナ飲み薬」開発状況は インフルエンザ並みの対応に変わる?

  • 2021年10月7日

新型コロナウイルスの軽症者向けの「飲み薬」。これまで日本で承認された軽症者用の治療薬は、いずれも点滴で投与し医師による管理が必要で、自宅で服用し重症化を防ぐことができる飲み薬への期待が高まっています。こうした中、年内の供給を目指す動きも出てきています。国内外の開発状況はどうなっているのか、現段階の情報をまとめました。

「モルヌピラビル」メルク日本法人 “年内供給目指す”

開発が最も早く進んでいるとみられるのが、アメリカの製薬大手「メルク」が開発している、「モルヌピラビル」と呼ばれる抗ウイルス薬です。

会社の発表によりますと、治験の中で発症から5日以内の患者で、重症化リスクのある760人あまりをこの薬を投与するグループと、プラセボと呼ばれる偽の薬を投与するグループに分けて経過を比較したところ、入院や死亡のリスクがおよそ50%低下したとしています。

入院した人や死亡した人の割合
プラセボを投与したグループ 14.1%
「モルヌピラビル」投与したグループ 7.3%

メルクは、できるだけ早くアメリカのFDA=食品医薬品局に緊急使用の許可を申請するとしています。

メルクの日本法人「MSD」のカイル・タトル社長と白沢博満上級副社長は、NHKのインタビューで、日本国内でも承認申請の準備を速やかに進め、年内の供給を目指す考えを示しました。

「MSD」カイル・タトル社長
「承認が得られれば、国と契約を結び、必要な分量の薬を速やかに供給できるよう調整している」

会社側では年内に「モルヌピラビル」を世界で1000万人分供給できるとしています。来年には製造体制を拡大し、2000万人分を供給できる見通しだということです。

「MSD」白沢博満上級副社長
「まずはきたる第6波までに流通体制を整え、いずれはインフルエンザと同じように、体調の悪さを自覚したら誰でも近くのクリニックで処方してもらえるよう供給体制を整備したい」

他の製薬会社は

○アメリカ製薬大手「ファイザー」

2種類の抗ウイルス薬を併用する治療法について、最終段階の治験を海外で進めています。治験の暫定的な結果は、12月までに得られる見込みだとしていて、年内にもアメリカで緊急使用許可の申請を行う可能性があるとしています。

○スイスの製薬大手「ロシュ」
「AT-527」と呼ばれるC型肝炎の治療薬として開発を進めてきた抗ウイルス薬が新型コロナウイルスにも効果があるかどうか、日本の患者を含めて最終段階の治験を進めています。日本国内での開発などを行っている中外製薬によりますと、年内に結果がまとまる見込みで、来年にも厚生労働省に承認申請したいとしています。

○塩野義製薬

こ大阪に本社がある製薬会社「塩野義製薬」は、ことし7月から薬の安全性を確かめる第1段階の治験を進め、安全性に大きな問題はなかったとして、最終段階の治験を9月下旬から始めたと発表しました。治験のデータは早ければ年内にまとまる見込みだとしています。

このほか、日本の製薬会社の「富士フイルム富山化学」がインフルエンザの治療薬の「アビガン」について、同じく日本の製薬会社の「興和」が寄生虫による感染症の特効薬「イベルメクチン」ついて、それぞれ新型コロナに対する効果があるか、最終段階の治験を進めています。

治療薬は3つのタイプ 違いは?

いま承認されている新型コロナウイルスの治療薬は、ウイルスが細胞に侵入するのを防ぐ薬、細胞に侵入したウイルスの増殖を抑える薬、増殖したウイルスに反応する過剰な免疫の働きを抑える薬の3つのタイプに分けられ、メルクが開発を進めている「モルヌピラビル」は細胞に侵入したウイルスの増殖を抑えるタイプの薬です。

○細胞の侵入を防ぐ薬(mRNAワクチン・抗体カクテル療法など)

新型コロナウイルスは表面にある突起の「スパイクたんぱく質」が、人の細胞に結合することで侵入します。
現在、使われているmRNAワクチンは、人工的に作ったスパイクたんぱく質の遺伝子の一部を投与することで、体内で抗体が作られるようになりそれがウイルスのスパイクたんぱく質にくっつくことで、細胞への侵入を防ぎます。

承認されている治療薬のうち、抗体医薬と呼ばれるタイプで、軽症患者に点滴で投与する「抗体カクテル療法」(カシリビマブとイムデビマブ)や、「ソトロビマブ」はワクチンと同じような仕組みで、人工的に作った「抗体」がスパイクたんぱく質にくっつくことで、細胞に侵入するのをブロックします。抗体がウイルスを狙い撃ちにするため、高い効果が期待される一方、供給量が限られるといった課題もあります。

一方、ワクチンでは接種から長期間たった人の場合、抗体が減ってしまうことで、接種していても感染する「ブレイクスルー感染」が起きるケースが報告されています。

○細胞に侵入したウイルスの増殖抑える薬

開発中の飲み薬、「モルヌピラビル」は、ウイルスが細胞に侵入したあと、設計図の「RNA」をコピーして、増殖するのに必要な酵素の働きを抑え、増殖を防ぎます。飲み薬のため、軽症患者が重症化する前に自宅で使えるようになると期待されています。

承認されている治療薬の中では、中等症から重症の患者に投与される点滴薬、「レムデシビル」がこのタイプですが、医療機関で受ける必要があります。ウイルスが細胞の中で増殖する仕組みは、ほかのウイルスでも共通しているため、別の病気の治療にも使われる薬を転用する形で開発が進められています。

○過剰な免疫の働き抑える薬
いま新型コロナの治療に使われている薬のうち、主に重症患者に使われるのが「デキサメタゾン」と「バリシチニブ」です。ウイルスが体内で増殖し、炎症を引き起こす物質が過剰に出ると、免疫の働きが暴走し、肺に傷がつくなど、体に深刻なダメージを受けることがありますが、これらの薬は免疫の働きや炎症を抑える役割を果たします。

専門家「インフル並みの対応に変えられるかも」

新型コロナウイルスの治療に詳しい愛知医科大学の森島恒雄客員教授は、軽症患者用の飲み薬について「薬が普及し広く処方できるようになれば、インフルエンザ並みの対応に変えられるかもしれない」と指摘しています。

愛知医科大 森島恒雄客員教授
「この夏の感染拡大の第5波では感染者が入院できず、自宅待機を余儀なくされる中で、重症化したり死亡したりするケースもまれではなかった。飲み薬があれば自宅待機しながら治療でき、重症患者の治療を行う医療現場などでの負担を大きく減らすことができる。ワクチン接種の拡大と合わせてこうした薬が普及して一般の診療所でも広く処方できるようになれば、インフルエンザ並みの対応に変えられるかもしれない。
軽症患者用の飲み薬は、感染が分かった時点でなるべく早く投与することが望ましいので、検査体制を量・質ともに拡充していく必要がある。また、薬の供給が世界中で待ち望まれる中、日本に十分な量が供給されるか懸念がある。もし、供給が限定的となる見通しならば、どのような患者に優先的に投与するか事前に考えておくことも重要だ」

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