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「抗体カクテル療法」往診での使用を検討 医師が指摘する課題

  • 2021年9月16日

新型コロナウイルスの軽症患者などに使用できる初めての治療薬として7月に承認された抗体カクテル療法について、厚生労働省は往診での使用を認めるか検討を始めました。まれに副作用が疑われる重篤な症状も報告されていることもあり、現場の医師はどう受け止めているのでしょうか。医師が指摘した課題のほか、副作用が疑われる症状などについてまとめました。

抗体カクテル療法 往診での使用を検討

抗体でできた2種類の薬を同時に点滴で投与する抗体カクテル療法は、当初、入院患者だけを対象としていました。8月以降は、宿泊療養施設などに加え、外来での使用も条件付きで認められています。
厚生労働省は、菅総理大臣の指示を受けて往診での使用を認めるか検討を始めましたが、副作用が疑われる症状も報告されていて、課題となるのが安全性の確保です。
厚生労働省は、現在、投与から24時間は患者の容体が悪化しても把握できることなどを使用の条件にしていますが、医療関係者からは往診で使用した場合、特に1人暮らしの患者などは把握できないおそれがあると指摘されています。
抗体カクテル療法を往診でも使用することについて現場の医師に話を聞きました。

見守りや薬剤を無駄なく使う体制構築に課題

自宅療養者の往診を行っている東京・品川区の「心越クリニック」岩間洋亮院長
「重症者リスクの高い人が在宅医療の患者になるので非常にありがたい兆しととらえている。
ただ、投与後のアレルギー症状が懸念されるところで、往診医が帰ってしまったあとに、誰がはじめに気づくのかが問題だ。訪問看護やヘルパーなどと連携し、経過を丁寧に見守る体制を構築する必要があるが、実現は簡単ではないだろう。
抗体カクテル療法に使う薬は、1つの瓶に2人分入っているものが主に流通していて、開封後は48時間以内に使い切らなければならない。薬は高価なので、廃棄せずに無駄なく使えるよう医師の間で患者を調整するような体制も必要だ」

対応可能な患者の数は限定的

東京・大田区などで自宅療養者の往診を行ってきた「ひなた在宅クリニック山王」田代和馬院長
「在宅でできる治療は限られていたので、効果的な選択肢が加わるという意味では前向きにとらえている。
ただ、2つの抗体を混ぜるなど投与前の準備、点滴にも時間が必要だ。投与後も副作用が出ていないかの観察や、それが起きた時の対応もある。このほか治療法について事前の説明などを考えると、1日に対応できる患者の数は限られる。病院の空き病床などを活用して複数の患者にスムーズに抗体カクテル療法を行える体制を充実させ、状況に応じて一部、在宅でも対応すれば重症化する人を減らせるのではないかと思う。
今のうちから『第6波』に備えてあらゆる機関が連携して抜本的な対策を整えていく必要がある」

適正使用のためのルール作りが必要

自宅療養者の往診を行っている医師のグループ「ファストドクター」の代表 菊池亮医師
「病院や宿泊療養施設といった十分な体制があるところで投与することが大前提だ。ただ、入院調整に時間がかかり適切な時期に投与できないケースもあり、在宅でも対応できる体制作りは必要だと思う。治療が受けられない患者が出てしまうことはよくないと感じていた。
リスクの高い患者を重症化させないために有効性が高いが、投与をしてから1時間ないし2時間は対面での健康観察が必要になったりその後も24時間しっかりと患者さん見守ってあげたりする必要がある。使用経験の浅い薬なので、往診で使用する場合に副作用への対策をどう講じていくかなど、適正に使用するためのルールづくりも必要だ」

1.36%に副作用が疑われる症状

厚生労働省や、関係企業とライセンス契約を結んでいる中外製薬によりますと、ことし7月22日から8月21日までのおよそ1か月間に投与を受けたと推定される5871人のうち、1.35%にあたる79人で副作用が疑われる症状が報告されました。
このうち重篤だったのは27人で、発熱が5人、酸素飽和度の低下が4人、悪寒が2人、狭心症やおう吐、血圧の低下や上昇などがそれぞれ1人となっています。
いずれの症状も投与との因果関係は分かっていないということで、厚生労働省などが引き続き情報収集を進めています。

副作用が疑われる症状 1.35% 79人
重篤な症状      0.46% 27人

厚生労働省では、一部の医療機関の往診で試験的に導入し、課題を検証した上で全国的に使用を認めるか判断する方針で、近く要件を示すことにしています。
厚生労働省は、「臨床データが限られていて、新しい症状が報告される可能性も否定できない。結論ありきで考えず、往診でも安全性を確保できるか慎重に見極めた上で使用の可否を判断したい」としています。

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