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コロナ感染の妊婦 自宅出産の赤ちゃん死亡 入院困難も相次ぐ

  • 2021年8月20日

新型コロナによる医療の危機は出産にも及んでいます。千葉県柏市で新型コロナに感染し自宅で療養していた妊婦が、入院先が見つからずに自宅で出産し、赤ちゃんが亡くなりました。千葉県内では、感染が確認された妊婦を近隣の病院で受け入れることが難しくなり広域で入院調整を行うケースが相次いでいるということで、千葉県は県内の医療機関に対して感染した妊婦の受け入れ体制を強化するよう呼びかけました。

コロナに感染し妊婦 入院調整に時間が…

新型コロナに感染した妊婦の出産は、感染対策で手術時間を短縮するため帝王切開を行う準備が必要だったり、生まれた赤ちゃんをすぐに隔離することが必要だったりして、対応できる病院が限られていて、入院調整に時間がかかるケースがみられています。
こうした中、千葉県柏市で新型コロナウイルスに感染し自宅で療養していた妊婦が、入院先が見つからずに自宅で出産し、赤ちゃんが亡くなりました。

コロナに感染 受け入れ病院が見つからない

この問題について千葉県や柏市保健所が明らかにした経緯です。

〇8月9日~11日
柏市に住む妊娠8か月の女性は、8月9日に症状が出て、11日に新型コロナに感染していることが確認されました。当初は発熱やせき、息苦しさがあったものの「軽症」と判断されたということです。保健所への届け出には「妊婦」という情報はなかったということです。

〇8月14日~15日
その3日後の14日、保健所が健康観察として聞き取りを行い、「妊婦」だと分かったということです。女性は「息苦しい、呼吸が苦しい」とも話し、血液中の酸素の数値も91%に低下していたということです。このため、「中等症」の状態で、優先度が高い患者と判断されました。
その翌日の15日から2日間、保健所が県に入院調整を依頼しましたが、対応できる医療機関は見つからず、自宅で療養を続けることになったということです。

自宅で出産 新生児亡くなる

〇8月17日朝
そして、17日の朝、保健所が健康観察のため再び女性に電話したところ、「腹部に張りがあり、出血がある」と話したため、保健所は県の調整本部に連絡するとともに、かかりつけ医や県内の産科の医療機関で作るネットワークの担当コーディネーターが搬送先を探しました。

〇17日午後4時
午後4時20分ごろ、患者の女性から保健所に「腹部に痛みがあり、再度出血があった。陣痛ではないか」と連絡があったということです。
これまでに分かっている範囲で、県の調整本部などでは8か所の医療機関に打診しましたが調整がつかず、保健所も少なくとも2か所に依頼しましたが、対応できるところは見つからなかったということです。

〇17日午後5時
そして、午後5時20分ごろ、女性はそのまま自宅で男の子を出産しました。早産のため緊急の処置が必要で、女性はみずから救急要請を行い、赤ちゃんは病院に救急搬送されましたが、亡くなったということです。

女性は現在、中等症と診断され、入院しているということです。

柏市保健所の担当者
「コロナの感染症を診ることがことができて、なおかつ産科ができる医師や医療機関は限られる。保健所としても最大限調整しているが、なかなか決まらず、非常に不幸な事態となった。ご遺族の方には心よりお悔やみを申し上げます」

相次ぐ妊婦の入院困難 広域調整や自宅療養も

千葉県内の産婦人科医のグループの報告によりますと、県内では感染が確認された妊婦を近隣の病院で受け入れることが難しくなり、県の調整本部などが広域で入院調整を行うケースが8月12日からの5日間で、少なくとも9件相次いだということです。
中には、出産間近で感染が確認され、入院を予定していた病院では対応できず、都内の病院に搬送されたケースや、県内でおよそ50キロ離れた病院に搬送されたケースもありました。一方で症状が悪化しても入院先が見つからず自宅療養を続けている妊婦もいるということです。
把握できているのは県が関わった分だけで、こうしたケースは実際にはもっと多いとみられるということで、グループではコロナに対応できる医療機関を増やすなど対策を進めたいとしています。

専門家 “コロナ感染の妊婦の優先搬送を”

日本産婦人科医会 常務理事 日本医科大学 中井章人教授
「出産に関連して緊急度が高い妊婦については都道府県の産科施設が連携して受け入れ先を決める搬送体制が確立されているが、新型コロナに感染した妊婦については、感染対策の課題があり、受け入れ先が限られているのが現状だ。今回のようなケースは全国どこでも起こり得るもので全国的に感染した妊婦の搬送体制の強化が求められる。
また、出産に関連した症状ではなくても妊婦は特に妊娠後期に新型コロナに感染すると重症化しやすいとされている。救急搬送体制がひっ迫する中ではあるが、妊婦は優先的に搬送する必要があるのではないか」

千葉県 さらに受け入れ強化を呼びかけ

千葉県は20日、会見を開いて改めて経緯を説明し、当日、同時にほかにも妊娠後期の妊婦2人について広域での受け入れ先を探す調整を進めていて、業務がひっ迫していた状況を明らかにしました。
このうち受け入れ先が見つかったのは1人だけで、柏市の妊婦については早産の可能性があったため、より調整が難航したとしています。県の担当者は「妊婦だからといって入院できるわけではなく、調整は日々ギリギリの状態だ」と厳しい現状認識を示しました。

そのうえで、感染した妊婦への対応を中心的に担っている周産期母子医療センターにはさらに受け入れ体制を強化するよう依頼し、地域の産科医に対しては、かかりつけの妊婦が感染した際には、受け入れ先が見つかるまで自らで対応することも想定して準備するよう協力を呼びかける通知を出したということです。

県内では千葉大学病院がすでに妊婦の専用病床を1床確保し、来週にもさらに病床を拡大する方針を決めました。千葉県は今後も再発防止に向けた対策を検討する方針です。

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