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デルタ株やラムダ株 感染力やワクチンの効果、症状の重さは?

  • 2021年8月31日

感染力が強い変異した新型コロナウイルス「デルタ株」。「デルタ株」で新たな変異があるウイルスが国内で初めて検出されたと、東京医科歯科大学のグループが発表しました。感染力などに影響があるかどうかは分かっていないということです。
デルタ株の特徴や感染力、ワクチンの効果、さらに南米で広がるラムダ株について、現段階の情報をまとめました。(8月31日情報更新)

新たなデルタ株 国内で変異か

新型コロナウイルスの流行の主流となっている感染力の強い変異ウイルス「デルタ株」について、新たな変異があるウイルスが国内で初めて検出されたと、東京医科歯科大学のグループが発表しました。感染力などに影響があるかどうかは分かっていないということで、グループはさらに解析を進めるとしています。

東京医科歯科大学の武内寛明准教授らのグループでは、8月中旬に大学の附属病院を受診した患者から「デルタ株」の変異ウイルスを採取し、遺伝子を詳しく調べたところ、「N501S」という変異があることが分かりました。

この変異があるデルタ株の報告は世界で8例しかなく、国内では初めてだということで、遺伝子の特徴などから国内で変異したとみられるということです。

東京医科歯科大学 武内寛明准教授
「推定というより、かなり高い確率で、国内で新たに変異を獲得したであろうと。国内の新規変異株、変異デルタ株という形で捉えていただければと思う」

この変異はイギリスで最初に見つかった「アルファ株」にある「N501Y」の変異に似ていますが、感染力などに影響があるかどうかは分かっていないということです。グループでは引き続き解析を進めるとしています。

東京医科歯科大学 武内寛明准教授
「感染伝播性が増大する可能性というものも十分に考えられる。感染が広がると国内でも次々と新たな変異株が出る可能性があるので、なんとか感染を抑える必要がある。遺伝子を解析するウイルスの監視体制もさらに拡充しないといけない」

変異ウイルス

国立感染症研究所は従来より感染力が高かったり、ワクチンの効果を弱めたりと、性質が変化した可能性がある変異ウイルスを「懸念される変異株=VOC」に、同様の影響を与える可能性が示唆される変異ウイルスを「注目すべき変異株=VOI」に分類して監視を強化しています。

厚生労働省によりますと、8月6日時点、国立感染症研究所がVOCに分類しているのは4種類です。

・イギリスで見つかった「アルファ株」
・南アフリカで最初に見つかった「ベータ株」
・ブラジルで広がった「ガンマ株」
・インドで見つかった「デルタ株」

第5波 デルタ株が猛威 感染力は

WHO(世界保健機関)によりますと、デルタ株は2020年10月にインドで初めて報告され、2021年4月以降のインドでの爆発的な感染拡大の原因の1つとみられています。
WHOは最も警戒度が高い、VOC(懸念される変異株)に位置づけていて、デルタ株が報告されている国や地域は2021年8月10日現在で142に上ります。

「デルタ株」はウイルスの突起の部分にあたる「スパイクたんぱく質」の遺伝子に、「L452R」「P681R」などの変異があり、感染力の高まりに関わっているとされています。
「デルタ株」の感染力については、従来のウイルスやイギリスで最初に確認された「アルファ株」などと比べて高まっているとされています。

2021年7月21日の厚生労働省の専門家会合で示された分析によりますと、国内での「デルタ株」の感染力は、従来のウイルスに比べて1.87倍、「アルファ株」に比べても1.30倍に高まっていたということです。

このほかの国内外の研究でも、おおむね従来のウイルスに対して2倍程度、「アルファ株」に対して1.5倍程度、感染力が高まっているとされています。
またWHOによりますと、中国のグループの研究では、「デルタ株」に感染した人では体内のウイルスの量が従来のウイルスなどと比べて1200倍多かったということで、感染力の強さとの関連が指摘されています。

国立感染症研究所が8月11日に示した推計では、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県ではおよそ95%が、大阪府、京都府、兵庫県の3府県では84%が「デルタ株」に置き換わっているとみられるということです。

政府の分科会 尾身茂会長
「確かに感染力は強くなっているが、道ですれ違っただけで感染するようないわゆる『空気感染』は起きておらず、感染リスクの高い場所はこれまでと変わらず、換気が悪いとか多くの人が集まるような場所だ。ただ、感染力が高まったためデパートの地下の売り場や、髪を切る場面、学習塾などいままであまり感染が報告されなかった場面でも感染が実際に起きるようになってきている。
これまで個人で行ってきたマスク着用、換気、3密の回避などの対策を今まで以上に気をつけてやってもらう必要がある」

デルタ株 症状の重さは?

感染した場合に重症化しやすいかどうかについては各国で研究が進められている途中ですが、WHOでは入院に至るリスクが高まっているとしています。

その中でカナダのトロント大学のグループがまだ専門家の査読を受けていない段階で2021年8月に示した研究では、20万人の新型コロナの患者を分析した結果、デルタ株は従来のウイルスなどに比べて入院するリスクが2.08倍、ICUが必要になるリスクが3.34倍、死亡するリスクが2.32倍になっていたとしています。

デルタ株 ワクチンの効果は?

「デルタ株」に対するワクチンの効果について、WHOは2021年の7月27日の文書の中で、実験室レベルの研究では「デルタ株」に対してはワクチンによってできる中和抗体が少なくなるという結果が出ているとしました。

ただ現在使われているワクチンは効果が非常に高いことなどから、これによって実際にワクチンを接種した際の効果自体が下がる訳ではないとしています。

そのうえで、例えばアストラゼネカやファイザーのワクチンについては、感染を防ぐ効果や発症を防ぐ効果については「アルファ株」に比べて「デルタ株」では効果が下がる傾向があるものの、重症化を防ぐ効果に関しては「デルタ株」に対してもそこまで大きな差は無いか、もしくは全く差が見られなかったとしています。

このうち、2021年7月に国際的な医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」にイギリスの保健当局やロンドン大学などのグループの研究では、デルタ株に対するワクチンの発症予防効果は、次の通りです。

ファイザーのワクチン 1回接種後は35.6% 2回接種後は88.0%
アストラゼネカのワクチン 1回接種後は30.0% 2回接種後は67.0%

研究グループは、「2回接種したあとにはデルタ株に対しても高い発症予防効果が見られた」としています。

また、アメリカのメイヨークリニックなどのグループが査読を受ける前の論文として公表した7万7000人を対象に分析した研究結果では、デルタ株が大きく広がった2021年7月には、感染を防ぐ効果はファイザーのワクチンで42%、モデルナのワクチンで76%とこれまでより下がりましたが、入院に至るのを防ぐ効果はファイザーのワクチンで75%、モデルナのワクチンで81%といずれも高い水準を維持したとしています。

政府の分科会 尾身茂会長
「間違いなく明らかなことは、ワクチン接種によって重症化や死亡を防ぐという効果がかなりある。それに比べると発症や感染を予防する効果は多少落ちてしまうということはある。ワクチンを打った人も、自分や他の人を守るという意味でもしばらくの間はマスクをしていただきたい」

南米中心に広がる「ラムダ株」

WHOによりますと、変異ウイルスのラムダ株は2020年8月に南米のペルーで初めて報告され、ペルーやチリ、エクアドルなどの南米諸国を中心に広がっています。

世界中の新型コロナウイルスの遺伝子配列を登録するウェブサイト「GISAID」には2021年8月15日の時点でラムダ株が34か国から報告されていますが、この4週間で見ると登録のほとんどは南米のチリからとなっています。

従来のウイルスより感染力が強まっている可能性やウイルスの働きを抑える中和抗体が効きにくくなる変異があり、WHOはVOI(注目すべき変異株)に位置づけていますが、現在のところ、デルタ株やアルファ株などのVOC(懸念される変異株)に位置づけられている変異ウイルスほどの広がりは見られません。

ラムダ株について国立感染症研究所は今のところ、VOC(懸念される変異株)にも、VOI(注目すべき変異株)にも位置づけていません。

ラムダ株は感染力や感染した場合の重症度などについてまだ分かっていないことが多く、WHOは感染を抑える対策やワクチンの効果に影響が出るかどうかさらに調べる必要があるとしています。

ラムダ株は、実はデルタ株より時期的には早くに見つかっていますが感染拡大のスピードはデルタ株のほうがラムダ株より速く、各国でより差し迫った問題となっています。

ラムダ株 7月に国内で初感染確認

7月には、国内で初めてラムダ株の感染が確認されました。
厚生労働省によりますと、ペルーから羽田空港に到着した30代の女性が、検疫所の検査で新型コロナウイルスに感染していたことが確認され、検体の遺伝子を解析した結果、「ラムダ株」が検出されたということです。

厚生労働省は、ラムダ株について「情報が限られているため、現時点では評価が難しい。引き続きWHOや各国政府、専門家と情報を共有しながら監視体制を強化していきたい」としています。

政府の分科会メンバー 東邦大 舘田一博教授
「感染性だけでなく、どれだけ重症化のリスクがあるのかや、ワクチンの効果が見られにくくなるのかどうかなどの情報を把握しながら、水際対策を徹底することが重要だ。国内への持ち込みを100%抑えるのはかなり難しいが、水際対策で遅らせ、広げない対策を徹底することはできる。新型コロナウイルスは2週間に1回変異を起こしていて、さらに広がりやすいウイルスが世界各地で出てきてもおかしくない。世界的なネットワークで情報を共有し、連携して広げない対策を進めていく必要がある」

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