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「抗体カクテル療法」効果と課題は?コロナの新治療薬

  • 2021年8月27日

新型コロナの軽症から中等症の患者を対象に行われている「抗体カクテル療法」。厚生労働省は容体が悪化した場合に緊急で入院治療ができる医療機関などに限り、外来診療でも投与できるようにすると自治体に通知しました。その効果と課題とは?(8月27日情報追記)

軽症~中等症対象 抗体カクテル療法

「抗体カクテル療法」は、新型コロナウイルスの軽症から中等症の患者を対象に7月承認され、入院患者のほか、一定の要件を満たす宿泊療養施設や臨時の医療施設に限って投与が行われています。

東京・墨田区の「同愛記念病院」でも「抗体カクテル療法」の治療薬の投与が行われ、この日は、基礎疾患がある20代の女性の入院患者に点滴を使って投与されました。

同愛記念病院 感染管理担当 鈴木謙部長
「軽症者から投与できる唯一のお薬ですから、位置づけとしては一番最初に使われる。これまで軽症の患者は経過観察をするしかなかったが、新しい抗体カクテル療法でリスクのある軽症の患者さんにはあらかじめ治療を開始できるということで、その後の重症化を抑制する期待がある」

外来投与も可能に 国が通知

海外では、アナフィラキシーなどの症状も報告されていることから、厚生労働省は、当初、外来診療での投与に慎重でしたが、自宅で療養する患者が急増していることを受けて、条件付きで投与できるようにすることを決めました。

患者の容体が悪化した場合に緊急で入院治療を行える医療機関で、かつ投与後24時間は電話などで経過を確認できることなどが条件で、すでに自治体に通知しています。
25日までに東京都や大阪府、それに福岡県など全国1400ほどの施設で、合わせておよそ1万人が投与を受けましたが、重篤な副作用は報告されていないということです。

厚生労働省は、外来診療での投与を認めても十分に対応できる量を確保しているとしていますが、具体的な量は明らかにしていません。

中外製薬 「必要な供給量確保したい」

治療薬を国内で販売している中外製薬。26日、報道機関などを対象にした説明会を電話会議形式で開き、この中で奥田修社長は、「デルタ株がまん延し、治療薬の需要が世界的に高まっているが、日本政府からの要請に応じて、必要な供給量を確保したい」と述べ、政府が新たに容認した外来診療での投与に対応するためにも必要な量を確保する考えを示しました。
また、濃厚接触者に対する予防的な投与など、適用対象の拡大についても今後、申請する方向で、国と協議していることを明らかにしました。

治験では入院・死亡リスク約70%減

中外製薬が新型コロナウイルスの治療薬として承認申請し、7月厚生労働省が承認した「カシリビマブ」と「イムデビマブ」。
抗体医薬と呼ばれるタイプの薬で、人工的に作った2種類の抗体を同時に投与するため「抗体カクテル療法」と呼ばれています。

2種類が投与されると、ウイルスの表面にある突起部分「スパイクたんぱく質」に結合し、増殖を防ぎます。異なる抗体を投与することで、変異ウイルスにも対応できると期待されています。

去年11月にはアメリカのFDA=食品医薬品局から緊急使用の許可を受けています。アメリカのトランプ前大統領が以前、入院した際にも使用されました。
中外製薬によりますと、海外で行われた治験では入院や死亡のリスクをおよそ70%減らすことが確認されています。

国内で承認の治療薬

日本国内で新型コロナウイルスの治療薬として承認されているのは、今回の「カシリビマブ」と「イムデビマブ」のほか、3つの薬があります。

(1)レムデシベル
最も早く去年5月に特例承認され、エボラ出血熱の治療薬として開発が進められた抗ウイルス薬。
当初、対象は原則、人工呼吸器や人工心肺装置をつけている重症患者などに限定されていましたが、ことし1月からは肺炎になった中等症の患者にも投与が認められています。

(2)デキサメタゾン
重度の肺炎やリウマチなどの治療に使われてきた炎症やアレルギーを抑える作用のあるステロイド剤。
イギリスで行われた臨床試験で重症者の死亡を減らす効果が確認。国内では、抗ウイルス薬のレムデシビルとデキサメタゾンを併用。1波の後、致死率が大きく下がった要因の1つになったと考えられています。

(3)バリシチニブ
関節リウマチなどの薬で、炎症を抑える効果がある薬。
錠剤で、酸素投与が必要な中等症以上の入院患者に対して、レムデシビルと併用して服用することが条件。国際的な臨床試験で「バリシチニブ」と「レムデシビル」を併用すると「レムデシビル」単独と比べて患者が平均で1日早く回復したということです。

課題は健康観察の体制

抗体カクテル療法を開発したアメリカの製薬会社「リジェネロン」によりますと、海外で行われた治験では入院や死亡のリスクをおよそ70%減らすことが確認されたということです。

一方、治験で投与を受けた4206人のうち、0.2%にあたる10人に発熱や呼吸困難、酸素飽和度低下、悪寒、不整脈、胸痛、脱力、頭痛、じんましんなどの症状が見られたということです。

投与された人ではアナフィラキシーと呼ばれる重いアレルギー反応も報告されています。
このうち少なくとも1件は、症状を緩和する薬剤の投与などが必要だったということです。

これらの症状が、副作用か、新型コロナウイルスによる症状かは不明で、いずれも容体は回復したということですが製薬会社は、投与が終わってから少なくとも1時間は状態を観察するよう求めています。

また、こうした症状は投与を受けて24時間以内に報告されていることから、その間の健康観察を十分にできる体制を確保するよう厚生労働省が求めています。

一方、変異ウイルスへの効果について、厚生労働省が作成した診療の手引では、有効性が期待できない可能性があるとして、最新の情報を踏まえて投与するのが適切かを検討することとしています。

自宅での投与は?

開発したアメリカの製薬会社によりますと投与を受けた人で、発熱や頭痛のほか、アナフィラキシーや呼吸困難、酸素飽和度の低下など副作用の疑いがある症状が報告されています。臨床データが限られているため、別の症状が現れる可能性も否定できないということです。

在宅医などからは、自宅での投与を認めるべきだという声も出ていますが、厚生労働省は医師などが経過を観察する必要があるとして引き続き慎重な姿勢を示しています。

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで、中外製薬が薬の効果や副作用のリスクなどを紹介するために作成した冊子の監修にも携わっている東邦大学の舘田一博教授は次のように指摘しています。

東邦大 舘田一博教授
「国内で抗体カクテル療法が使用できるようになったことは大事な一歩だ。どう効果的に使っていくかが非常に重要になってくる。日本人特有の副作用が出ないかどうかは慎重に見極めなければならない。最初に数百例や数千例といった規模で注意深く確認したうえで広く使っていける仕組みに変えていくことが求められるのではないか」

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