インドで確認された新型コロナウイルスの変異ウイルスの国内での感染力は、従来のウイルスの1.95倍と推定されるという分析結果を、京都大学の西浦博教授らがまとめました。厚生労働省によると、6月21日までの1週間に関東地方では合わせて29人が、インドで確認された変異ウイルスに感染しています。
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この分析は北海道大学の伊藤公人教授と京都大学の西浦教授らのグループが行ったもので、23日、開かれた厚生労働省の専門家会議で示されました。
グループでは新型コロナウイルスの国際的なデータベースと東京でのPCR検査の分析結果を使って、日本国内での変異ウイルスの状況を分析しました。
その結果、インドで確認された変異ウイルスの「デルタ株」の国内での感染力は、1人が何人に感染を広げるかを示す「実効再生産数」でみると従来のウイルスと比べて1.95倍になっていると推定されたということです。
また、これまでのデータから試算するとこの変異ウイルスは7月12日ごろには全体の半数を超え、東京オリンピックが開幕する7月23日時点で全体の68.9%になると予測されるということです。
データが増え、より詳しい分析ができたことで感染力の数値がより高まる結果となった。緊急事態宣言の解除に加えてデルタ株の影響も考えると感染の拡大が懸念される。
東京都のモニタリング会議で、インドで見つかった「L452R」の変異があるウイルスの感染について、専門家が「都内で今後かなり増えてくる兆しがうかがわれる」と述べ、危機感を示しました。
モニタリング会議では変異ウイルスごとの感染割合が報告されました。
それによりますと、インドで見つかった「L452R」の変異があるウイルスへの感染割合は6月13日までの1週間で変異ウイルスへの感染が確認された人全体の3.2%で、人数では32人でした。
それが、6月20日までの次の1週間では速報値で45人、割合は8.2%に上昇しました。
依然として「N501Y」の変異があるウイルスの割合がおよそ80%を占めているものの、さらに感染力が強いとされる「L452R」の変異があるウイルスの占める割合が、1週間で5ポイント増加しています。
都の「専門家ボード」座長 東北医科薬科大学 賀来満夫特任教授
「今後かなり増えてくる兆しがうかがわれる。『N501Y』に置き換わるまでに2か月ほどかかったが、『L452R』はもう少し早く拡大するのではないか。特定の年代に多いということではなくて、比較的、各年代で感染が確認されていて、地域もさまざまだ。今後しっかりと注意していく必要がある」
厚生労働省が自治体からの報告を集計した結果、6月14日から21日までの1週間に全国で合わせて36人が、インドで確認された変異ウイルスに感染していたことが分かりました。
関東地方では、東京都が13人、神奈川県が12人、群馬県、千葉県がそれぞれ2人などとなっています。
・東京都 13人
・神奈川県 12人
・千葉県 2人
・群馬県 2人
これまでに感染が確認されたのは、全国の13の都府県で合わせて153人となりました。
関東地方では、東京都が43人、神奈川県が29人、千葉県が18人、埼玉県が8人、群馬県が6人となっています。
WHO=世界保健機関は、感染力が強まる、感染した際の重症度が上がる、それにワクチンの効果が下がるおそれがある変異ウイルスを「懸念される変異株=VOC」に位置づけ、国際的に警戒するよう呼びかけています。
現在、「VOC」として警戒が強められている変異ウイルスは4種類あります。
WHOはインドで見つかった変異ウイルスのうち、最も拡大しているタイプを警戒度が最も高い「懸念される変異株」に位置づけて監視を強化しています。
イギリスで行われた分析で、イギリスで見つかった変異ウイルスと比べても感染力がさらに50%強いという試算が示されています。
WHOによりますと、このウイルスが報告されている国や地域は、2021年6月22日現在で85に上ります。WHOはこの変異ウイルスについて「デルタ」と呼ぶよう推奨しています。
インドでは、2021年4月ごろに爆発的に感染が拡大しましたが、多くの人が集まった宗教や文化の行事があったことと並んで変異ウイルスが拡大の原因の1つと考えられています。