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東京五輪 相次ぐボランティア辞退 希望していた人たちの思いは

  • 2021年6月7日

東京オリンピック・パラリンピックでは、交通や観光の案内をする「都市ボランティア」が活動する予定ですが、NHKが取材したところ、辞退する人が少なくともおよそ3500人に上っていることがわかりました。また、競技会場や選手村などで活動する「大会ボランティア」でも辞退者が相次いでいます。新型コロナウイルスの影響が続くなかで、ボランティアを希望した人たちはどう感じているのでしょうか。

東京五輪開幕まで50日 都市ボランティアの研修も

東京オリンピックの開幕まで50日を切る中、セーリングの競技が行われる神奈川県藤沢市では6日、交通や観光の案内をする「都市ボランティア」の研修会が開かれました。

この日の研修会には20人余りが参加し、市の担当者から、活動中の感染防止策の徹底や、前後14日間は体温の記録をつけることなど注意事項の説明を受けたあと、市内各地で行う具体的な活動内容を確認し、ユニフォームを受け取っていました。

相次ぐ辞退 都市ボランティアでは少なくとも3500人に

ただ、各地でボランティアの辞退が相次いでいます。
4万人以上が活動する予定の交通や観光の案内をする「都市ボランティア」について、採用する全国11の自治体にNHKが取材したところ、回答があった9自治体で、あわせて、およそ3500人が辞退していたことがわかりました。

最も多かったのは、千葉県で、5月末の時点で1083人が辞退、次いで宮城県でおよそ800人、▽福島県で630人余りなどとなっています。
東京都と埼玉県は確認中としているため、辞退者の数はさらに増えるとみられます。

“感染拡大への不安” “参加意義 見出すことが難しい“

各自治体によりますと辞退の理由は、▼大会が1年延期され、転勤や進学など生活環境に変化が生じたことや、▼新型コロナウイルスの感染拡大への不安が多くを占めているということです。

また、▽海外から観客が来なくなり、参加する意義を見いだすのが難しくなったという理由もあったほか、▽一部の自治体では開催をめぐり賛否が分かれるなか、世論を気にして辞退した人もいたということです。

辞退を決めた人 “もし家に持ち帰ってしまったら…”

東京大会のボランティアをめぐっては、競技会場や選手村などで活動する「大会ボランティア」でも、およそ8万人のうち、およそ1万人が、6月1日までに辞退したことが明らかになっています。

その一人、全盲の視覚障害者で教員の村田愛さん(51)は、「日頃はボランティアされる側なので、自分たちもできることはやりたいという気持ちでした」などと話し、ボランティア活動に参加することを希望していました。

大会ボランティアを辞退 筑波大学附属視覚特別支援学校 教員 村田愛さん(51)

しかし、感染拡大が続く一方で自身のワクチン接種の目途が立たず、高齢の家族と同居する中で家族から参加して欲しくないと言われ、5月下旬に辞退を決意しました。村田さんが働く都内の視覚特別支援学校では、6人の教員が参加予定でしたが村田さんを含め3人が辞退しています。

村田愛さん
「周りの家族や人に迷惑がかからないようにするためです。残念ですが私が家に持ち帰って何かあったら大変なので仕方がないです。観客が入るのか入らないのか、どのくらい人と接触があるのかわからなかったのも不安でした。いまこの状況で開催して、みんなが『安全安心』と思うかは疑問なので、応援はしたいですが不安を拭い去れない状況です」

参加を決めた人も複雑な思いが

一方、東京大会のボランティアへの参加を決めたものの、開催をめぐり賛否が分かれる中で複雑な思いを抱えている人もいます。

大会ボランティアとして参加する千葉県の会社員、海東靖雄さんは、6年ほど前に、スポーツイベントのボランティアに参加して以来、年に60回から70回、ボランティア活動をしてきました。

大会ボランティア 海東靖雄さん(55)

背景の異なる人たちとの交流や多くの知識や経験を得られることが魅力だといい、東京オリンピック・パラリンピックでも活動したいとその歴史や活動内容を勉強して準備を進めてきました。

しかし、感染拡大が続く中、50代の海東さんは、現在は開催期間までにワクチン接種の対象となっておらず、活動を通じて感染しないか不安を感じています。
また、5月下旬には、ボランティアのユニフォームを受け取り大会への実感がわいた一方で、開催への賛否が分かれるなかで、社会のまなざしが気になるといいます。

海東靖雄さん
「活動の際もボランティアのユニフォームを見るだけで、『ああいう人がいるから感染が収まらないんだ』と思われないかとか、以前はそう考えることもなかったですが、ボランティアへの攻撃的な言葉があるのではないかと不安があります。感染者数や医療状況が改善し、余裕のある状態で開催を迎えられることが望ましい。ただ(開催までに)完全にコロナが無くなっているというのはないと思うので、そういうなかでも『こういう形でやろう』という思いを合わせてやれればいいかなと思います」

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