変異した新型コロナウイルスについて、厚生労働省は、全国の自治体の検査で確認された感染者数を発表しました。関東甲信越の1都9県では8500人あまりとなっています。
また、現在WHO=世界保健機関が警戒を呼びかけている4つの変異ウイルスなどの特徴もまとめました。
全国の自治体では、新型コロナウイルスの新規感染者の一部から検体を抽出して、イギリスやブラジル、南アフリカ、それにフィリピンで確認されている変異ウイルスに感染していないかを調べています。
厚生労働省によりますと、去年12月から5月11日までに、自治体から報告された変異ウイルスの感染者は、全国で合わせて1万9262人に上りました。
関東甲信越1都9県では8529人でした。
変異ウイルスの感染者数 | ||
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~5月11日 | 5月5日~11日に増えた数 | |
東京都 |
4600人 |
1811人 |
埼玉県 |
1268人 |
421人 |
神奈川県 |
1051人 |
302人 |
千葉県 |
733人 |
268人 |
群馬県 |
187人 |
84人 |
茨城県 |
181人 |
46人 |
栃木県 |
72人 |
17人 |
新潟県 |
199人 |
82人 |
長野県 |
137人 |
59人 |
山梨県 |
101人 |
53人 |
5月5日から11日までの1週間では、関東甲信越であわせて3143人の感染が報告されました。東京都は、前の週のおよそ2倍に上っています。
また、これまでに変異ウイルスへの感染が確認された全国のおよそ3200人について、検体の遺伝子を解析した結果、97%の人からイギリスで最初に見つかったウイルスが検出されたということです。変異ウイルスの検査を受けた人のうちどれほどの人が確認されたかを示す陽性率は、関西や九州を中心に8割を超える地域が相次いでいて、厚生労働省は全国的に置き換わりが進んでいるとみて警戒を強めています。
WHO=世界保健機関は、「感染力が強まる」「感染した際の重症度が上がる」それに「ワクチンの効果が下がるおそれがある」変異ウイルスを「懸念される変異株=VOC」と位置づけ、国際的に警戒するよう呼びかけています。
現在、「VOC」として警戒が強められている変異ウイルスは4種類あります。
WHOが警戒呼びかけている変異ウイルス |
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イギリスで報告のウイルス |
南アフリカで報告のウイルス |
ブラジルで広がったウイルス |
インドで報告のウイルス |
以下、それぞれの変異ウイルスについての説明です。
イギリスで最初に見つかった感染力が強い変異ウイルスは、2020年12月上旬に報告されましたが、その後行われたウイルスの解析から2020年9月20日にはこのウイルスに感染した人がいたことが分かっています。イギリスでは、2020年12月上旬には1日あたりの感染者数は、1万人台だったのが、その後急増し、12月下旬には5万人台に、そして2021年1月に入ると6万人を超える日もありました。この増加の大きな要因は変異ウイルスによるものとみられています。
この間、多くの国に広がっていてWHOによりますと、2021年5月11日までに149の国と地域で感染が確認されています。
国立感染症研究所は、日本国内でも大阪府と兵庫県、京都府では、2021年4月中旬の段階で検出された新型コロナウイルス全体の80%を占め、従来のウイルスからこのタイプのウイルスに置き換わったとしています。
その後も各地で置き換わりが進んでいて、国立感染症研究所が2021年5月9日時点のデータに基づいて出した推定では、全国各地で全体の90%前後が置き換わっているとみられるとしています。
南アフリカで最初に見つかった変異ウイルスは、2020年8月上旬に発生したとされていて、11月中旬に南アフリカで行われた解析では、ほとんどがこのタイプの変異ウイルスだったとみられています。
WHOによりますと、2021年5月11日までに102の国と地域で感染が確認されているとしています。
日本国内では、2021年5月11日までに23人から検出されています。
ブラジルで広がった変異ウイルスは2021年1月6日、ブラジルから日本に到着した人で最初に検出されました。
WHOによりますと、2021年5月11日までに60の国と地域で感染が確認されています。ブラジルでは、北部のマナウスで2020年12月ごろに出現したとされ、WHOによりますと、ブラジルでは2021年1月の時点では検査した検体のうち、この変異ウイルスは28%だったのが、2021年3月には73%に上ったとしています。
日本国内では、2021年5月11日までに69人から検出されています。
WHOが2021年5月10日に「懸念される変異株=VOC」に位置づけたのが、インドで確認された変異ウイルスで、感染力が高まったり、免疫の攻撃から逃れたりするものなど、2つ、もしくは3つの特徴的な変異があると報告されています。
インドでは、2021年4月ごろに新型コロナの感染が爆発的に拡大していますが、多くの人が集まった宗教や文化の行事があったことと並んで拡大の原因の1つと考えられています。
WHOによりますと、このウイルスが確認されている国や地域は、49に上っているとしています。
厚生労働省によりますと、日本でも2021年5月10日までに空港の検疫で66例、国内で4例の感染が確認されています。
また、WHOが「注意すべき変異株=VOI」に位置づけている新型コロナウイルスが6つあります。
その1つが、2021年2月25日にフィリピンから日本国内に入国した人で確認された変異ウイルスで、感染力が高まる変異と、免疫の攻撃から逃れる変異がある別の変異ウイルスが検出されたと報告されています。
国立感染症研究所によりますと、このウイルスはフィリピンでも報告されていて、従来のものより感染力が強い可能性があり、国際的に懸念されているほかの変異ウイルスと同程度の脅威があると考えられるとしています。国立感染症研究所ではこの変異ウイルスについて日本国内では「懸念される変異株」として位置づけるとしています。
さらに、WHOが「VOC」や「VOI」に指定していないものの、国立感染症研究所が「注目すべき変異株」に位置づけている変異ウイルスがあります。
免疫の攻撃から逃れる変異がある別のタイプの変異ウイルスで、関東から東北地方を中心に2021年5月10日までに4483例見つかっています。このタイプの変異ウイルスは感染力は従来のものと変わらないと考えられるものの、感染状況を注視する必要があるとしています。
また、ワクチンの効果を完全に無効化するとは考えにくいものの、効果を低下させる可能性を考えると、国内で広がった場合、感染を抑える上でのリスクになり得るとしています。中には国内で変異が起きたと見られるものもあり、国立感染症研究所は遺伝情報の解析などを通じて実態を把握していくとしています。
世界では新型コロナウイルスの遺伝子配列がデータベースに公開されていて新たな変異ウイルスが次々に報告されています。WHOは各国に対し、ウイルスの広がりを見る調査や戦略的な検査、ゲノム解析などを通じて、対策を強化し続けてほしいとしています。