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コロナのワクチン 自治体配布量に最大15倍の格差 なぜこんなことが?

  • 2021年4月21日

4月26日の週と5月3日の週に東京都内の区市町村に配布される高齢者向けのワクチンについて、割り当てられた量が最も多かったところが47箱、最も少ないところで3箱と自治体によって大きな差がでました。都には、割り当てられた量が少なかった一部の区から配布見直しを求める声が寄せられていますが、なぜこんなことが起きてしまったのでしょうか?

区によっておよそ15倍の差が

新型コロナウイルスの高齢者向けのワクチンは、東京都内では、今月26日の週と来月3日の週にあわせて536箱が区市町村に配布されます。配布数はそれぞれの高齢者の人口に加え、区市町村があらかじめ希望した数に応じて都が決めました。ただ、23区内で最も多い葛飾区の47箱に対して、最も少ない港区、品川区、豊島区、荒川区は3箱でおよそ15倍の差があります。

豊島区「これだけ差が出るとは」都に苦情も

東京・豊島区には、まず、4月26日から5月9日までの間に、ワクチン195本が入った箱、3箱が配られる予定で、1本あたり5回接種できる計算だと、2925回分になります。ただ、今回、豊島区に最初に配られる3箱は東京23区では最も少なく、区が希望していた量よりも少なかったことから、区は、早ければ来週行おうと考えていた65歳以上の人への接種券=クーポンの発送を5月中旬以降に延期する検討を始めました。

当面は、今月26日の週から配られる3箱で、高齢者施設の入所者への接種のみを行う予定だということです。

豊島区は3月末、「医療機関での個別接種、公共施設での集団接種、区民ひろばでの巡回接種」という3種類の接種体制を構築し、週末も含めていつでも接種できることを目指して医師会の協力を取り付けたほか、派遣会社を通じて医療従事者も確保していて、あとはワクチンが届くのを待つだけだったということで、都に苦情を伝えたということです。

葛飾区「確保できてほっとしている」

東京・葛飾区では、都内で最も多い47箱のワクチンが配られることになりました。来週、接種券=クーポンを配り始めて、早くから予約を受け付けるために、多くのワクチンを確保する必要があると考えて、希望したためです。

47箱のワクチンは、1本あたり5回接種できるとすると、4万5825回分になります。これにより、区内の75歳以上のおよそ7割の人に、1回接種できることになるということで、葛飾区では、来週26日から75歳以上の高齢者に接種券=クーポンを送り始め、予約をしてもらったうえで、5月11日から医療機関での個別接種を、また、来月15日からは集団接種を始めることを決めました。

現在、担当課では、クーポンを配る準備や、接種にあたる施設との間でワクチンの移送などについて調整を進めているということです。

葛飾区 疋田博之予防接種担当課長
「高齢者施設でのクラスターが相次いだり、医療機関から『ワクチンは、いつどのくらい届くのか』という声が多かったりしたので、確保できてほっとしています。なるべく多くの高齢者に、まずは1回目の接種を早く受けてもらいたいと考えています。ほかの区も多く要望すると思っていたので、ここまで差がつくとは思いませんでした」

東京都「統一的な基準を示すよう求めたい」

都は、今回の配布にあたって、国に対して、希望の量を割り出す基準を示す予定があるかなどについて事前に見解を求めたということです。

これに対して、厚生労働省は、次回の配布量は今回よりも多い予定だとしたうえで、「自治体で判断してほしい。希望量の考え方について国として統一的な基準を示す予定はない」と回答したということです。
このため都は区市町村に対して、国が基準を示す予定がないことや、算出方法によって希望の量に差が出ることが想定されることを伝えたということです。

都の幹部は取材に対し、「国が基準を示さないなか、都が、あえて区市町村に希望の量について口を出すのもおかしいと考えた。今回、差が出てしまうことは想定していた」と話しています。

ただ、都には、割り当てられた量が少なかった一部の区から配布の見直しを求める声が寄せられています。都は、国に対して、今回の配分の見直しが可能かどうか確認するとともに、今後、不公平感が出ないような希望を募る際の統一的な基準を示すよう求めたいとしています。

専門家「なるべく公平に配布する必要がある」

都内の自治体に最初に配られるワクチンの量に差が出ていることについて、厚生労働省の専門家会合のメンバーで国際医療福祉大学の和田耕治教授は、以下のように指摘します。

「担当者の間でのコミュニケーションが不十分で大きな差が出てしまったことは残念だ。全国でこういった格差が起きている可能性があり、今後、数か月の間に、『ワクチンを打っていれば亡くならなかったのに』という事例も起きかねないし、若い人に接種する段階でも同じように自治体間に差が生じる可能性もある」
「国内でワクチンの奪い合いにならないように、わかりやすい仕組みや説明のもと、例えば65歳以上の人口のうち各自治体に配る最低限のワクチンの数を決めた上で、希望も聞いて自治体に配るワクチンの数を国や都道府県が示すなど、なるべく公平に配布する必要がある」

厚生労働省によりますと、高齢者が2回接種するために必要なワクチンは、6月中にすべて配送できる見通しだということです。

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