入所者ら60人が新型コロナウイルスに感染し、3人が死亡した千葉市の高齢者施設では、感染拡大の要因となったのは、職員の深刻な人手不足に対応できなかったことでした。感染者の集団=クラスターが発生した現場から教訓を学びます。
千葉市の特別養護老人ホームでは、去年11月、入居者や職員、60人が新型コロナウイルスに感染しました。
外部からの面会を制限し、職員が研修を受けるなど、感染防止対策をしてきましたが、3人が亡くなりました。
施設長
「もう、申し訳ない、このひと言です」
最初の職員が検査で陽性となったのは11月13日でした。施設では、すぐに、防火扉で生活スペースを区切り、発熱などの症状がある入居者と症状がない入居者を分けました。
この防火扉で生活スペースを分けた
しかし、翌日には、職員7人の感染が判明します。勤務表には感染して出勤できなくなった職員の欄に次々と横線が引かれていきます。
職員の深刻な人手不足に陥り、入居者に十分なケアが行き届かなくなりました。
施設長
「入居者がどうしても防火扉の向こう側から開けてしまうんです。また、認知症の入居者の方がいらっしゃいますので、どうしてもマスクを外してしまうことが多くありまして、その徹底がなかなか図れなかった」
その結果、職員だけではなく、入居者にも感染が広がっていきました。
施設の介護士
「バリケートを作ったり、ガムテープを貼ったり、いろいろ試行錯誤していましたが、そういう中でも日を追うごとにどんどん感染者が増えていって、止まらないというか、本当に終わらないんじゃないかと思いました。職員の感染者が増えて残された人員は減ることはあっても増えることはないので、この先どうすればいいのかと不安が大きかったです」
この法人の統括責任者の男性です。
別の施設から支援を受けたものの、どうしても人手が足りず、介護にあたりました。感染した入居者は病院に入院してもらいましたが、受け入れの手続きに時間がかかり、対応が追いつかなくなりました。
男性も1か月、施設に泊まり込み、なんとか勤務を続けました。
統括責任者
「きつかったですね。とにかくやらなきゃという思いだけでした。自分が感染してしまうのが嫌だとかではなくて、今ここで感染して抜けてしまうと、人が足りないなか、大変なことになってしまうと思いました」
県のクラスター対策班も入りましたが、結局、収束までに入居者と職員の8割が感染し、最後まで働けた施設の職員は、29人中8人でした。
こうしたクラスターによる人手不足にどう対応するのか。
千葉県は去年9月から、あらかじめほかの施設で働く介護士に登録してもらい、応援職員として派遣する仕組みを作っています。
去年10月 応援介護士の研修会
しかし、これまで25件の相談がありましたが、実際に派遣できたのは3件にとどまっています。
ふだん働いている施設でのシフトの調整などに時間がかかることが課題として見えてきたのです。
千葉県高齢者福祉課 澤田浩課長
「介護士は120人ぐらい登録頂いていますけれども、その方々もシフトがありますので、調整をするのに少し日数がかかってしまうという現状があります。迅速に対応ができるように考えていきたい」
千葉県では、今後、勤務の予定を事前に把握し、派遣できる時期の調整がスムーズに行えるよう対応していくことにしています。
施設ではいま、12項目にわたるチェック表を作って職員の健康管理を行うとともに、定期的にPCR検査を行って感染防止対策を行っています。できることは、とにかくウイルスを持ち込まない対策を徹底することしかないと考えています。
統括責任者
「目に見えないものですし、どこで誰が感染するか分からない以上、施設内で感染がいつ起こってもおかしくないと考えています。そうした状況の中で職員に安心して働いてもらえるか、入居者の皆さんが安心して暮らせるかというのも考えなくてはいけないと思うので、どうやって対応していこうかなと考えています」