東京都内の新型コロナウイルスの状況について専門家は、「増加比がさらに上昇すると爆発的に増加し、第3波を超えるような経過をたどることが危惧される」と強い危機感を示しました。
4月1日に開かれた都内の新型コロナの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」では、都内の主な繁華街で緊急事態宣言の解除後に夜間の人出が急増していることが報告され、数週間以内に感染者数が急激に増える可能性が高いと指摘されました。
新規陽性者数(3月31日時点)
7日間平均 349.4人 前週比49人増加 増加比117%
4月1日のモニタリング会議で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。
都内の感染状況については「緊急事態宣言が解除されて主要な駅や繁華街、花見の名所などで多くの人出があったことから、急激な感染拡大への厳重な警戒が必要だ」と指摘しました。さらに、今の増加比が継続すると、1日あたりの新規陽性者が、2週間後には1.37倍のおよそ480人、大型連休直前の4週間後には1.87倍のおよそ650人になると分析しました。
専門家
「増加比がさらに上昇すると、新規陽性者数は爆発的に増加し、第3波を超えるような経過をたどることが危惧される。変異ウイルスにより急増する可能性がある。取り組みの成果が現れるのはおおむね2週間後のため、ただちに対策を講じる必要がある」
会議では、東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センターの西田淳志センター長が、都内7つの繁華街の人出について分析した結果を報告しました。
それによりますと、3月21日までの緊急事態宣言の期間中は抑えられていた午後8時以降の人出が、解除後の1週間で増加に転じました。
具体的には午後8時から午後10時までの2時間は、およそ1.4倍、午後10時から午前0時まで2時間は、およそ1.3倍になり西田センター長は「急増している」と評価しています。
そのうえで、夜間の人出の増加は、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す「実効再生産数」の上昇につながるとして、数週間以内に感染者数が急激に増える可能性が高いと指摘しました。
西田センター長 “繁華街の人出をただちに減らす対策を”
「先に宣言が解除された大阪で起きている感染拡大は、数週間以内に東京でも起きる可能性が非常に高い。東京も人流の影響で感染の増加が収まらず、感染爆発が発生することも懸念される」
〇年代別
3月29日までの1週間に、感染が確認された人の年代別の割合です。このうち20代の割合は前回の21.5%から2.4ポイント増え、専門家は「目立って上昇した」と分析しています。
〇感染経路判明分の内訳
「家庭内」での感染が46.1%で最も多く、次いで病院や高齢者施設などの「施設内」が25.2%でした。このほか、「職場」は前の週より2.7ポイント増えて11.7%、会食は変わらず5.1%でした。
専門家
「施設内での感染がおよそ5ポイント低くなった一方で、職場内での感染が増えている。職場、会食など多岐にわたる場面で感染例が発生している」
〇感染経路不明
「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路がわからない人の7日間平均は、31日時点で179.3人と、前の週よりおよそ35人増えました。
専門家
「感染経路がわからない人の割合が20代で60%、30代と40代でも50%を超える高い値となっている。依然として保健所での疫学調査による接触歴の把握が難しい状況が続いている。その結果、感染経路のわからない人の割合が高い値で推移している可能性がある」
入院患者は31日時点で1466人となり、前の週の1371人から増加傾向を示しています。また、都の基準で集計した31日時点の重症患者は、3月24日の時点より3人増えて45人となっています。さらに、人工呼吸器またはエクモの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の患者などが154人いることから専門家は「依然として多いため重症患者の増加が危惧される」と危機感を示しました。
専門家
「今後の推計に基づくと、体制のひっ迫が憂慮される。重症化リスクの高い高齢者の新規陽性者を減らすことが重要だ。通常医療への影響を考慮した上で、各医療機関に病床の転用を要請する必要がある。現在の医療提供体制では変異ウイルスによる急激な感染の再拡大には対応できなくなる危険性がある」
モニタリング会議のあと、小池都知事は、「特に関西では東京より3週間早く緊急事態宣言が解除され、今、このような状況になっている。東京でも今の大阪のような状況がいつ起こってもおかしくない」と述べ、強い危機感を示しました。
また、知事とともに取材を受けた専門家が、記者団から、都内で「まん延防止等重点措置」が必要となるタイミングについて質問されると、専門家が答える前に小池知事が「東京都では『まん防』と言う言葉は使っていない。『重点措置』でお願いします」と述べるひと幕もありました。