東京都内では、新型コロナウイルスの感染確認の7日間平均の増加ペースが加速していて、第3波で急拡大する前の去年11月中旬と同じ水準まで増加しています。拡大が始まった時点の感染者数の水準が高いほど、その後の感染のピークが大きくなる傾向が見られていて、今後、重症者数も増えることが予想されるとして、専門家は早めに病床確保など医療体制の整備を進める必要があると指摘しています。
都内で感染が確認された人の7日間平均は、29日時点で357.7人で、前の週からの増加は17日連続です。
7日間平均は、ことしに入って最も少なくなった今月8日の253.4人から上昇が続いていて、29日までの3週間で104.3人増加しました。
増加のペースには加速がみられ、今月8日からおよそ50人増加するのに、今月22日まで2週間かかったのに対し、そこからのおよそ50人の増加は、29日までの1週間でした。
一方、7日間平均の数値を、去年夏ごろの第2波と比較すると、最多だった8月5日の346.1人をすでに上回っています。第3波と比較すると、今は、去年11月の中旬と同じ水準です。
第3波では、その後、増加ペースが上がり1か月余り後の12月30日には2倍以上となる800人台になりました。さらに、その11日後の1月10日には、5倍以上となる1800人台となりました。
感染確認の増加に伴って陽性率も上昇していて、今月上旬はことしに入って最も低い3.2%まで下がっていたのが、今月25日から再び4%台となっています。去年は、9月から10月にかけて3%台が続いていましたが、去年11月に入って4%台になり、その後、上昇のペースがあがって第3波を迎えました。
新型コロナウイルスのこれまでの感染拡大では、拡大が始まった時点での感染者数の水準が高いほど、その後のピークの人数も多くなる傾向が見られます。
日本国内では新型コロナウイルスの感染拡大は、去年の3月以降の第1波、去年7月以降の第2波、そして去年11月ごろ以降の第3波の3回起きていますが、それぞれの波では、感染者数の減少が下げ止まる人数が徐々に多くなっています。
●第1波
5月25日に全国の感染者数が21人まで減ったあと、6月下旬までは50人から100人ほどで推移しましたが、その後、第2波となり、去年8月7日の1605人にピークとなりました。
●第2波
9月23日に全国で219人まで減ったあと、11月上旬までは数百人から1000人ほどで推移しましたが、その後、第3波となり、ことし1月8日の7949人がピークとなりました。
●第3波
3月8日に全国の感染者数で600人にまで減ったあと、1000人前後で推移してきましたが、30日までの1週間で前の週を上回ったのが37の都府県となるなど、すでに全国で2000人近い水準で第2波のピークの水準を超えて、第3波で拡大が始まった去年11月上旬に比べてもおよそ2倍となっています。
また、これまでの感染拡大では、医療体制への負荷が大きい重症者の数は、感染者数がピークになったあと、20日前後でピークになるなど、感染者数の増加に遅れて増える傾向が見えます。重症者数は先週までは減少傾向でしたが、30日では1月下旬以降初めて、4日連続で増えています。
政府の分科会のメンバーで日本感染症学会理事長の東邦大学舘田一博教授は次のように指摘しています。
●現状と今後
「感染者数の水準が高いと、その後の感染の波が大きくなる傾向が見えている。たとえば、東京で1日の感染者が300人台で推移している状況は非常に多い水準だ。ここから感染が本格的に増加に転じれば、さらに大きく拡大する恐れがある」
●求められる対策
「いまのうちに、感染リスクの高い地域で無症状者を対象に積極的に検査を行うなど、市中にある見えない感染源を見つけて対処することが必要になる。いま感染者の増加が起きている地域では今後重症者が増えることを想定し、病床の確保など医療体制の整備を進めておかないといけない」