国内で最も多い12頭のゾウを飼育する千葉県市原市の動物園「市原ぞうの国」が、リニューアルオープンしました。ゾウの自然の姿を見てもらえる水遊び場などが整備されましたが、もうひとつのテーマは「動物園とゆかりが深いタイに恩返しすること」。そこには、日本人初の「ゾウ使い」になりながら亡くなった園長の息子の思いがありました。
「市原ぞうの国」は、老朽化した施設を改装して23日リニューアルオープンし、坂本小百合園長やタイの駐日大使らが、ゾウが鼻で持ったテープにハサミを入れて開園を祝いました。
間近でゾウの水遊びが見られる
新たに設けられたゾウの水遊び場では、勢いよく水しぶきを上げるゾウの姿に、訪れた人から歓声が上がっていました。
ゾウの自然の姿を見てもらおうと、インターネットで資金を募るクラウドファンディングを活用して整備しました。
坂本小百合園長
「象が水の中で遊ぶってこういうことなのねって知ってもらえたらうれしいです。調教師が何かを言ってやるのではなくて、象が水と遊ぶという自然体を楽しんでいただきたい」
ゾウの水遊び こんな姿も
ゾウと触れあうこともできる
今回のリニューアルで、もうひとつ大きなテーマが、動物園と深いゆかりがあるタイへの恩返しです。
この動物園のいちばんの売りは、12頭のゾウによるショーですが、ゾウの日々の訓練や世話は、「ゾウ使い」と呼ばれるタイ出身の17人の飼育員が住み込みで行っています。
また、坂本園長の長男で、日本人初の「ゾウ使い」になりながら、平成4年に20歳の若さで交通事故で亡くなった坂本哲夢さんが生前、ゾウ使いになる訓練を受けたのもタイでした。
世界中から多くの観光客が訪れるタイは今、コロナ禍で大きな打撃を受けています。
動物園では、訪れた人にコロナが収まったあとにタイを旅行してもらおうと、タイの魅力を発信するさまざまな施設を整備しました。
ゾウの水遊び場の向かいには、ゾウを見ながらタイ料理などが味わえるレストランが新たにオープンしたほか、人とゾウが共生する暮らしを紹介する写真パネルの展示施設がリニューアルされました。
さらに、動物園では、入園料の一部をゾウ使いたちのふるさと、タイのタクラーン村などに寄付することを決めました。
動物園で19年間、働いているゾウ使いのブンミー・サムランチャイさんは「ふるさとの人たちがコロナで困っているので、園長さんありがとう」と喜んでいました。
坂本小百合園長
「タクラーン村のゾウとゾウ使いのために寄付することにしました。亡くなった息子が『将来、僕はタイと日本の懸け橋になりたい』とよく言っていましたが、今回それを実現できたことで、『哲ちゃん、できたよ』って天に向かって言えます。タイと私どもの関係、タイと日本の関係、これをずっと続けていけたらと思います」
「市原ぞうの国」の坂本園長のご長男で亡くなった哲夢さんの話は、坂本園長がノンフィクションとして執筆し、その後「星になった少年」というタイトルで映画にもなっています。