都市部で新型コロナウイルスへの感染が続く背景として政府の分科会は、無症状の感染者の集団など、これまでの調査では見つけにくい「見えにくいクラスター」の存在があるとしています。
都内では感染リスクの高い集団や場所を特定することで「見えにくいクラスター」への対策につなげようとする取り組みが始まりました。
東京・墨田区は酒類を提供する飲食店が集中する錦糸町地区で、無症状の人に、新型コロナウイルスのPCR検査を実施する独自の対策を始めました。対象は、およそ1800の飲食店やバーなどで働く従業員で、検査の費用は無料です。
取材した16日は、地区内に設置されたPCRセンターに飲食店の経営者が検査キットで採取しただ液の検体を提出したり、保健所の担当者が商業施設を訪れ、施設内で働く従業員の検体を回収したりしました。
検査に協力したスナックの経営者
「感染者を減らすには営業時間の短縮などだけではだめだと感じていたので、私たちも協力すべきだと参加をすぐに決めました」
区では感染リスクの高い集団や場所を特定することで「見えにくいクラスター」への対策につなげようとしています。そして、無症状の感染が起きているのがわかった店舗では、従業員全員にPCR検査を行い感染拡大の防止につなげたいとしています。
墨田区保健所 西塚 至 所長
「こうした場所は感染対策の急所と言える。今後のリバウンド対策に大きく役立つ取り組みとして、まちをあげて安全・安心を高めるチャンスにしていきたい」
感染の広がりの予兆となるクラスターを早期にとらえる取り組みについて東京都は、いわゆる「攻めの検査」と「守りの検査」の両面から進めることにしています。
3月12日 感染状況などを分析・評価する都のモニタリング会議
〇「攻めの検査」
感染状況を早めに探るため、無症状の人に積極的に検査を行います。繁華街エリアでは飲食店の従業員などを対象にした検査を、事業所や学校、駅の周辺では一般の成人などを対象にした無作為の検査をそれぞれ行うとしています。都は3月中に始めるとしています。
〇「守りの検査」
クラスターの発生を未然に防ぐため、高齢者施設や医療機関で、職員や患者を対象に定期的に検査を行うとしています。今週中に葛飾区で試験的に始め、順次、広げていく予定です。
都は、こうした検査で感染を抑え込んで再拡大を防ぎたい考えです。
感染症対策に詳しい国際医療福祉大学 松本哲哉 教授
「自分が感染していること自体をわかりたくないとか、わかったとしてもほかの人に知られたくないという人もいる。そういう人たちは自分で検査を受けにこないし、そこから感染がさらに拡大する可能性もある。それを、こちら側から先に見つけだして、それ以上の、クラスターにならないように対策を講じ、今後の感染拡大の芽をつむということが重要だ。感染者の数が少なくなっている今だからこそ、積極的検査で感染者をあぶり出して、対策をとるということが大事で早めに対処しておけば封じ込め対策が有効になり、リバウンドの可能性を減らすことができる」