各地で様々な変わり種の自販機が登場していますが、今度は東京都北区の企業や商店を応援しようと、区内で作られているさまざまな商品を販売するユニークな自動販売機が登場しました。どんな自販機なのでしょうか?
2月20日、王子駅前の商業施設「サンスクエア」の入り口にユニークな自動販売機が登場しました。
販売されているのは、たわしや北区民に愛されてきたソースなど、地元の企業や商店などが作る、北区ならではのおよそ20の商品です。
●自販機に入っている商品(一部)
・東京で1番古い北区のソースメーカーの生ソース
・関東大震災後に本社を北区に移転して作り続けているたわし
・区内で活動する作家が作った工芸品
訪れた人は…。
実は、きっかけとなったのは渋沢栄一です。渋沢は晩年、北区に暮らしながら、企業経営だけでなく、生活に苦しんでいる人たちの支援などにも力を尽くしました。
地元ゆかりの渋沢の精神を受け継いで、新型コロナで苦しむ地元ために何かできないかと自販機の設置を考えたのが、北区内で40年ほど前から本社を構える「日本製紙総合開発」です。この会社のルーツは、150年前に渋沢が北区に作った日本初の製紙工場です。
会社の敷地には『洋紙発祥の碑』も
自動販売機なら、区内の大小さまざまな会社の商品を一度に並べられ、PRや販売の応援が出来ると考えたのです。
日本製紙総合開発 笛木修さん
「この中の会社の製品が有名になっていったり、お客様が利用して、喜んでもらえるのが広まっていったりすればそれが一番いいかなと」
自販機には、玩具メーカーが作った渋沢栄一と北区を巡る「すごろく」や、乾麺メーカーが開発した渋沢が好んで食べたとされるオートミールを使ったパスタやうどんなど、渋沢ゆかりの商品も入っています。
自動販売機に出品したお店の一つが、大正時代創業の菓子店「吾当家(ごとうのか)菓子店」です。3代目の店主の原田実さんは、20歳の時から50年にわたって、看板商品の瓦せんべいを作ってきました。
製法は、祖父の代から100年変わらず手作りです。材料の小麦は、混ぜすぎると感触が悪くなるため、力加減を調整できるよう、機械を使わず手でこねます。それを専用の型を使って1枚1枚じっくりと手焼きをすることで、均等に火を通すことができ、パリッと風味良く仕上がるそうです。
原田実さん
「僕の祖父が、機械はダメだと手焼きじゃ無いと瓦せんべいはだめだと言っていました。手焼きは香りが違うんだよね」
素朴な味が地元の人々に愛され、長年、夫婦2人3脚で作ってきました。人の集まるお寺や土産物店が、お得意先でした。
ところが新型コロナの影響で、法事が無くなったり観光地の人出が減ったりして注文は半減。不安を抱える中、声をかけられたのが自動販売機への出品でした。
新しく作るせんべいには、この取り組みへの感謝を込めて、特注した渋沢の焼き印を押しました。甘いたまご味と、しょっぱい味噌味の2種類です。
もっと大勢のお客さんに、伝統の瓦せんべいの味を知ってもらいたいと期待しています。
原田実さん
「ありがたいですよね、そうやって売っていただいて。体の動く限りやっていきたいですね」
自販機に並ぶ原田さんの瓦せんべい
この自販機は、今後、2号機の設置も検討しているそうです。