新型コロナの変異ウイルスを念頭に専門家は、感染者数が再び増加に転じることに警戒感を示しました。東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」で専門家は4日、新規陽性者数の減少傾向が鈍化していると分析したうえで、「今後、感染力が強い変異ウイルスにより、感染拡大のスピードが増すリスクがある」と述べました。
4日の会議で、専門家は都内の感染状況と医療提供体制をいずれも最も高い警戒レベルで維持しました。
〇感染の状況
新規陽性者数の7日間平均は、前の週の2月24日時点の288人から、3月3日時点では272人となり、6週連続で減少しました。
ただ、増加比が前の週の83%から94%に上昇し、減少傾向が鈍化していると分析しました。
グラフは3月4日時点を示しています
専門家 変異ウイルスで感染拡大スピードが増す恐れ
「第2波のピーク時から十分に減少せず、およそ150人から200人の間で、増減を繰り返したあと、急激に感染が再拡大して第3波を迎えた。流行の主体が、感染力が強い変異ウイルスに移る可能性があり、今後、変異ウイルスにより、感染拡大のスピードが増すリスクがある」
〇医療提供体制
3日時点の入院患者が1548人と、前の週の1882人から減少傾向にあるものの、第2波のピーク時に近い水準で推移していると指摘しました。
専門家 ひっ迫解消されないまま感染再拡大の可能性
「病床のひっ迫が解消されないまま感染が再拡大する可能性がある。変異ウイルスの増加を念頭に置きながら、病床確保の戦略を早急に検討する必要がある」
〇リバウンドのリスクは
会議では都内主要な繁華街の滞留人口についても報告されました。それによりますと緊急事態宣言の発令前に比べ、夜間は8%の増加、昼間は34%増加しているということです。その上で専門家は、大阪や札幌などの事例を見ると、感染状況が十分に収束する前に夜間滞留人口が増加し続けると、その後リバウンドするリスクが顕著に高まるということが示唆されていると指摘しました。
専門家
「東京都内は感染状況が十分に収束してきているとは言い難い状況にあり、こうした状況下で夜間の人の流れが増加し続けると、早い段階でリバウンドが発生する可能性がある。宣言解除前にリバウンドに対する十分な警戒と対策を講じる必要がある」
272.1人(6週連続減少)
専門家
「減少の傾向が鈍化し再拡大の危険性がある。実効性のある感染拡大防止対策を緩めることなく継続し、さらに減少させる必要がある」
70代と90代の割合が上昇
465人(前週比-35人)
新規陽性者に占める割合は25.5%
前週比3.5ポイント増
「家庭内」41.7%
「施設内」40.4%
施設内感染が前回比10ポイント増で家庭内感染と同じレベルに上昇
専門家
「病院や高齢者施設でのクラスターが複数起きていて高齢者層への感染が続いている。施設の従業者の集中的な検査や感染状況に応じた定期的な検査が必要だ」
134.0人(前週比-9人)
※感染の広がりを示す指標
3.2%(1週間前比-0.6ポイント)
専門家
「感染を抑え込むためには濃厚接触者などの積極的な疫学調査を充実させ、陽性率の高い特定の地域などで検査の促進を検討する必要がある」
1548人(1週間前比-334人)
専門家
「減少傾向にあるものの、通常医療への影響が長期間続いている。現在の医療提供体制では変異したウイルスによる急速な感染再拡大には対応できなくなる危険性がある」
52人(1週間前比-17人)
専門家
「依然として高い値だ。重症患者のための医療提供体制は長期間にわたって厳しい状況が続いている。体制を正常化させるために対策を緩めることなく徹底し、感染の再拡大を抑制するとともに、重症化リスクの高い高齢者層の新規陽性者を減らすことが重要だ」
121人(3月1日までの1週間)
その前の1週間より16人減少
亡くなった人のうち9割近くの108人は70代以上でした。
国立国際医療研究センター 大曲貴夫国際感染症センター長
「新規の陽性者の減少傾向が明らかに鈍化するなか、変異ウイルスの拡大を非常に懸念している。いまの新規陽性者の数は、去年12月の前半とあまり変わらない。12月はその後、急激に増加していて、それがまた起こりうる」
東北医科薬科大学特任教授・都「専門家ボード」賀来満夫 座長
「積極的な調査の徹底で隠れた感染源を特定していく。どこかに隠された感染源がある可能性がある。これが、この新型コロナの最も難しいところだが、それを見つけ出すような積極的な調査の体制をしっかりと作っていきたい。隠れた感染源を見つけ出すことができれば、徹底的に対応できる」
東京都医師会の猪口正孝 副会長
「都内では5000床の病床を確保しているため、その分だけ一般の通常医療を圧迫している。1500人程度の入院患者がいるのに加え、変異ウイルスの危険性があり、警戒態勢を解くことができない状況だ」