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新大久保駅転落事故から20年 親友が語る“弟”への思い

  • 2021年1月27日

東京のJR山手線、新大久保駅でホームから転落した人を助けようとした韓国人留学生、イ・スヒョン(李秀賢・写真)さん(当時26)とカメラマンの関根史郎さん(当時47)が亡くなった事故から、26日で20年がたちました。当時、東京の日本語学校でともに学んでいた親友がNHKのインタビューに応じ、20年を振り返りました。

留学生とカメラマンが男性助けようと線路に

平成13年1月26日、JR山手線の新大久保駅で、韓国人の留学生、イ・スヒョン(李秀賢)さん(当時26)とカメラマンの関根史郎さん(当時47)が、ホームから転落した男性を助けようと線路に降り、入ってきた電車にはねられ、3人とも亡くなりました。

26日、当時、イさんが通っていた日本語学校の理事長ら5人が新大久保駅を訪れ、事故を伝えるプレートの前に花をたむけたあと、現場となったホームで黙とうをささげました。

ともに学んだ親友「つい昨日のことのように思い出す」

当時、東京の日本語学校でともに学んでいた親友がNHKのインタビューに応じてくれました。韓国のソウル近郊、パジュ市(坡州)に住む、ホン・イルギ(洪一基)さん(48)です。ホンさんは、事故の1年ほど前から、東京・荒川区にある日本語学校で、イさんとともに日本語を学んでいました。

ホンさん
「あれからもう20年もたつのですね。連絡を受けてかけつけたときのことや、ご両親を成田空港に迎えに行ったときに見たお母さまの涙を、つい昨日のことのように思い出します。あの日、友達から『新大久保駅でスヒョンと思われる留学生が事故にあった』という連絡を受け、電車に乗って向かいました。『違う、スヒョンのはずがない』と何度も、いやな考えを打ち消しながら急ぎました。新大久保駅で、ぼろぼろにちぎれた服を見て、はじめて『スヒョンかもしれない』という考えが頭をよぎりましたが、そのときですらまだ、同じ服を着たほかの人であったら、という気持ちがありました」

兄、弟と呼び合う仲「日本での日常生活を愛していた」

韓国の大学で貿易を学び、日韓の懸け橋になるために、より日本語に磨きをかけたいと来日したイさんと、鉄鋼会社で働いたあと、日本の最新技術を学びたいと来日した2つ年上のホンさん。2人は同じ寮で暮らしたこともあり、兄、弟と呼び合う仲でした。

ホンさん
「スヒョンは、亡くなる前の日も『兄貴、また明日』と声をかけてくれました。彼は日本での暮らしをとても気に入っていました。日本の人がシャワーを使ったあと、次の人のためにきれいにしておくといった気遣い、町のあちこちに交番があって、警察官が自転車でこまめに街を回っている姿、そういう日本での日常生活を愛していたんです」

事故の5か月ほど前、ホンさんはイさんとともに富士山にも登りました。山頂で缶ビールを酌み交わしながら、「兄貴、ここが日本で一番高い場所なんだな」と話していたイさんの顔を今でも忘れられないといいます。10年後にまた登ろう、そんな約束もしていました。

イさんの死をきっかけに交通安全に関わる研究に

イさんの死は、その後のホンさんの人生にも影響を与えました。もともと韓国の鉄鋼会社で安全にかかわる仕事をしていて、その分野の知識や技術を高めたいと日本にやってきましたが、「より多くの人の命を救いたい」と、交通安全にかかわる進路を選択。日本の大学院で、ドライバーの認知機能や判断プロセスに関する研究を行い、博士号を取得しました。

現在は、自身が代表をつとめる会社で、高齢者や子どもの交通安全教育の機器の開発や、研究を続けています。

ホンさん
「スヒョンの事故をきっかけに、技術者としての目標を立てることができ、苦しい時もあきらめない力をもらいました。彼は自分の命が危険な状況なのに、最後まであきらめませんでしたから、私があきらめたら”弟”に顔向けが出来ません。いまの私を見て、満足してくれていたらうれしいですね」

 インタビューの最後にホンさんは日本語も交えて、こう話してくれました。

「スヒョンが亡くなって20年もたつのにもかかわらず、思い出して下さっている日本の方々に感謝します。そして、あのとき一緒に亡くなった関根史郎さんのことを、みんなで祈って下さればありがたいと思います。コロナやいろいろな事情で最近は日本に行けていませんが、ぜひまた新大久保を訪れ、祈りをささげたいと思います」 

イさんの両親は、イさんが日本と韓国の懸け橋になりたいと留学していたことから、見舞い金などをもとに基金を設立し、これまでに18の国と地域から来日した998人の留学生に奨学金を渡していて、イさんの志が次の世代に引き継がれています。

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