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演歌歌手の登竜門「天盛堂」 東京・亀戸の名物レコード店が閉店

  • 2021年2月5日

東京・亀戸で70年にわたって演歌歌手を見守り応援してきた老舗のレコード店が1月、閉店しました。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が続く中、売り上げが減少したことなどがその理由です。最後の日、店には常連客からの「ありがとう」の声が響いていました。

氷川きよしさん “世界一のお店です!”

江東区亀戸の商店街にある老舗レコード店、「天盛堂」。
入り口のガラス戸には演歌歌手、氷川きよしさんのポスターが貼られています。隣に立っているのは店主の妻、三本木勝子さん(78)です。

実はこの店、駆け出しの演歌歌手によるミニコンサートとレコードやCDの手売りが名物で、「演歌歌手の登竜門」としても知られていました。氷川きよしさんもその1人で、閉店のことを知った本人から電話がきた翌日に、このポスターが届いたそうです。
「70年本当にお疲れ様でした!」などと、氷川さんのメッセージが書かれています。

勝子さん
「いや、びっくりしました。1人で奥の方に飾って見るのではなく、ここに飾ったらみなさん喜んでくれました。氷川さんにはこれからも頑張ってほしいです」

店内にあふれた客

この店が創業したのは昭和25年。木箱のステージに立つ歌手とパイプ椅子に座って声援を送る常連客の姿が地元ではおなじみの光景となり、20年ほど前までは店の外に客があふれるほどの活気があったといいます。

時が経つにつれ、街の風景は変わっていきましたが、「天盛堂」は昔ながらのたたずまいや営業スタイルを貫き、毎年100人を超える演歌歌手と常連客との交流の場を提供し続けてきました。

コロナで名物のミニコンサート開けず…

しかし、新型コロナウイルスの影響で去年2月以降、ミニコンサートが開けなくなり、売り上げが大幅に落ち込んだということです。2代目店主の三本木康祐さん(81)と妻の勝子さんは、体力が続く限り店を守りたいと考えていましたが、感染拡大で先行きが見通せない中、閉店することを決めたのです。

別れを惜しむ人々

最後の営業日となった先月31日には、かつてここでコンサートを開いた演歌歌手や常連客などが次々に訪れ、下町の名店との別れを惜しんでいました。

店内には、これまでミニコンサートを開いてきた100人を超える演歌歌手のサイン色紙やポスターが壁一面に貼られていました。

閉店を聞いて駆けつけた演歌歌手の1人で、三本木さん夫妻とは40年来の付き合いだという秋山涼子さんは、20年ほど前に書いたみずからのサイン色紙を見つけると、懐かしそうに眺めていました。

秋山さん
「高校生の頃から応援してもらっていました。訪れるたびに常連客の皆さんが『おかえり』と温かく迎えて下さり、ここがあるから頑張れる、そんなお店でした。三本木さん夫妻には演歌を本当に大事にしていただき、ありがとうございましたと声をかけたいです。下町の人情味あふれる、大切な心のふるさとでした」

また、店内では常連客が演歌歌手と気軽に声をかけ合ったり、三本木さん夫妻と思い出話に花を咲かせて涙ぐんだりする姿も見られ、それぞれが「天盛堂」ならではのひとときを過ごしていました。

常連客の80歳の女性
「夫妻には優しくしてもらっていたので、最後を見届けなければと思いやってきました。氷川きよしさんのデビュー当時のコンサートをここで孫と一緒に見たのが一番の思い出で、私にとってはないと困る場所でした。閉店してしまうのは寂しいです」

20歳の頃から通っていたという78歳の男性
「カセットテープも扱っているのが私たちの世代にとってはありがたく、月に1度は必ず来ていました。青春時代の思い出の場所でもあり、人生の楽しみがなくなってしまうという気持ちです」

70年の歴史に幕

そして、閉店時間の午後6時がやってきました。

三本木さん夫妻が店の外に出ると、常連客から「ありがとう」という声や拍手が湧き起こり、「天盛堂」は地元の人たちに見守られながらおよそ70年の歴史に幕を下ろしました。

三本木さん夫妻
「いい時も悪い時もありましたが、70年間、2代にわたってよくやってきました。演歌歌手がここから一流の舞台に羽ばたいていくことが励みになっていたし、演歌だからこそお客さんとの結びつきも深まったのだと思います。皆さまへの感謝の気持ちでいっぱいです」

 

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