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“オンライン婚活”で結婚!?コロナ禍で育まれた信頼と愛

  • 2020年11月16日

新型コロナウイルスの影響で人と会うことがはばかれる日々。そこでいま広がっているのが、ビデオ通話を活用した “オンライン婚活” です。パーティーやお見合い、デートまでもオンラインで行う人が急増しています。
独身女性である筆者は、オンラインの婚活には興味があるものの、結婚相手は対面してじっくり決めたいという気持ちも…。少し抵抗感を持ちつつも取材を進めると、オンラインでやりとりを続け、なんと、一度も会わずに結婚を決めたというカップルに出会いました。

(首都圏局 ディレクター 有賀菜央)

オンラインで交際 “初対面” で結婚を決めた夫婦

9月下旬、オンラインで結婚を決めたという女性に話を聞くことができました。
都内に住む中西綾子さん(42)です。今年6月に結婚したと伺い、夫婦での取材をお願いしましたが、当日現れたのは綾子さんのみ。「2人の都合が合わなかったのかな…」と思っていたところ、綾子さんが取り出したのは、スマートフォンです。

画面越しに夫・紀徳(かずのり)さんと話す綾子さん

綾子さん
「おはよう」 「夫の紀徳(かずのり)です」

画面越しに紹介されたのは、夫の紀徳(31)さんです。熊本市で暮らす紀徳さんとは今も離れて生活を送っています。
4月下旬にオンラインの婚活パーティーで出会った2人は、東京と熊本の遠距離で交際を進め、コロナ禍での出会いから2か月後、なんと、初めて対面した日に結婚を決めたといいます。

Q リアルに対面したことがあるのはどのくらいなんですか?

綾子さん「3回かな」
紀徳さん「うん、3回」

ええ!3回!?コロナ禍でなかなか会えない状況だと思いますが、衝撃を受けました。

婚活のきっかけはコロナ禍での不安

綾子さんが婚活をはじめたのは今年の4月下旬のことでした。綾子さんは7年前に離婚を経験しています。前の結婚では、仕事で忙しい夫とほとんど一緒に過ごすことができませんでした。
その後も結婚を前提に交際してきた男性はいたものの1年前に別れて以降、1人で暮らす寂しさが徐々に募っていきました。そこに拍車をかけたのが、新型コロナウイルスでした。緊急事態宣言によって友人や家族と会うことを制限され、仕事以外でまったく人と関わらず自宅に引きこもる日々が続きました。

「このまま一生ひとりでいるのはつらいな」「誰か支え合える相手が欲しい」。
出口のない不安に襲われ、恐る恐るはじめたのがオンラインでの婚活だったといいます。

オンライン婚活パーティーの様子 画像提供:㈱LMO

婚活をはじめ、2回目に参加した4対4のお見合いパーティーで出会ったのが紀徳さんです。
しかし、当初は年齢が一回り離れているということもあり、結婚対象とは考えていませんでした。

「嫌だったら電源を切ればいい」 オンラインだから話し合える本音

初めは大勢いる男性のうちの1人にすぎませんでしたが、出会いから1か月後、紀徳さんの希望で2人きりでお見合いする機会が設けられました。そこで結婚を前提としたお付き合いがはじまります。

紀徳さんと綾子さんのお見合いの様子 画像提供:㈱LMO

結婚を前提、とは言っても外出自粛が続き、オンライン上だけの付き合いしかできないなかで、綾子さんは「嫌であればその時点で断ればいい」と気楽な気持ちで交際を始めたといいます。

紀徳さんの提案で、2人は毎日ビデオ通話で日々の出来事を報告するようになりました。しかし、綾子さんは何を話せばいいか話題に困るようになります。
これまで付き合ってきた男性との会話を思い返すと、水族館や映画館などデートに行ってその場の話題で盛り上がることがほとんどでしたが、今回はオンラインでつながることしかできません。

そこで、紀徳さんに聞きはじめたのは、生い立ちやお金の使い道、理想の家族像など、結婚するにあたって綾子さんが気がかりな話題でした。価値観が一致すれば、できるだけ早く結婚したいと思っていた綾子さんは2人の距離を縮める会話をしたいと考えたのです。

「収入はいくらか」
「何にお金を使うことが多いか」
「貯金はどれくらいあるか」
「老後にどのくらいの蓄えをしようと思っているのか」

特にお金の使い道は2人が一緒に暮らす上で重要だと考えていたため、話を深掘りしていき紀徳さんの価値観を確かめていったといいます。
しかし、付き合い始めたばかりのカップルにはなかなか話しづらい内容だと思うのですが…。

綾子さん
「オンラインだと対面したらなかなか言いづらかったりすることも言えるし、突っ込んで話をしようって思えたので。もし気まずい雰囲気になってしまったら電源を切ってしまえばいい。そういう意味でも気楽に話すことができました」

驚いたことに、オンラインだと相手の空気感をうまく読み取ることができないので、思っていることをはっきり言うことができたというのです。もしそれで相手との関係性が悪くなってしまったらボタン一つでビデオ通話を切ってしまうこともできます。
ともすると軽薄な関係のようにも感じますが、オンラインだからこそ最初から立ち入った話題に踏み込めたし、綾子さん自身、自分の素直な気持ちを相手にさらけ出すことができたといいます。

過去にうつ病 ひかれたのは包み隠さず伝える文章

さらに、紀徳さんへの印象が変わる出来事がありました。それは、紀徳さんが書き記したお見合いのプロフィールをふとのぞいたときのことでした。そこに書かれていたのは、両親の離婚やかつてうつ病を発症した紀徳さんの過去についてでした。

昨年、紀徳さんは結婚を考えていた女性と別れ、支え合える新たな相手を探していました。かつて交際していた女性は、紀徳さんに対して直してもらいたいことや話し合うべきことがあっても思いを心の内に秘め、本音が分かったのは別れる間際のことでした。次に付き合う人とは何でも話せる関係性を求めていた紀徳さんは、相手に本音で話してもらうためにも、まずは自分自身のことをさらけ出すことを決めていたといいます。

その一つが、このプロフィールでした。婚活では、女性に選んでもらいたいと自分の良い面をアピールする男性が多い中で、紀徳さんの行動は、綾子さんがこれまで出会った他の人にはないものでした。

紀徳さんのプロフィール

綾子さん
「こういうのって少しでも自分を良く見せたい、悪いところは小さく見せたいというのが必ずあると思うんです。今の彼の等身大みたいな感じでそのままが書かれているので私の中ではポジティブな印象に変わりました」

さらに綾子さんは、毎回自分の思いを受け止めて話してくれる紀徳さんの姿にだんだんとひかれていったといいます。どんなに話しづらい話題にも応えようとしてくれる紀徳さんは、かつて離婚を経験している綾子さんにとって、結婚生活を送る中で何よりも大切な「お互いの本音を伝え合うことができる」と実感した理想の相手でした。

8時間のビデオ通話で垣間見た “素の姿” が決め手に

しかし、そうは言ってもオンラインでしかつながることができない恋愛に不安はなかったのでしょうか?
2人が毎日一緒に過ごすなかで、会話する以外の時間も増えていきました。時にはテレビを見たり、ご飯を食べたりと、オンラインだと相手のことを気にせず、お互い自由に過ごすようになっていったといいます。ときにはビデオ通話をつないだまま、それぞれが全く違うことをしていて沈黙が続くことも。長いときには8時間に渡ってつなぎ続けて生活することもありました。

通話時間は8時間50分!

そんな生活のなかで、ふと画面越しの紀徳さんがテレビを見ながら笑っている姿を見たときに綾子さんは一緒に暮らす心地よさを感じたといいます。対面せずとも、毎日のオンラインでの会話が短期間でお互いの信頼関係を築いていました。オンラインで過ごす時間は今後の結婚生活のリハーサルにもなっていたのです。

対面して確信!結婚への思い

プロポーズの様子 画像提供:㈱LMO

交際をはじめて1か月後、政府による都道府県をまたぐ移動自粛要請が全国で解除された6月下旬に綾子さんは東京から熊本へ向かい、初めて紀徳さんと対面します。第一印象は、「思っていた通り」でした。1か月間オンラインで築きあげた「何を言っても受け止めてくれる実直な人」という紀徳さんへのイメージは変わることはありませんでした。それ以上に、会って話すことでさらに誠実な人柄が伝わり、紀徳さんを選んだ自分の判断に間違いはなかったと確信を持つことができたといいます。

そこに、綾子さんが来るのを待ち受けていた紀徳さんからサプライズでプロポーズ!でも、驚きはみじんもありませんでした。次の日には婚姻届を提出しました。

綾子さん
「今このタイミングで彼が結婚を申し込んでくれている、って思ったらそれに答えるのは今のタイミングなんじゃないかなって思いました」

紀徳さん
「いろんな将来の話とか結婚生活に向けての話をして、1か月の間にこの人しかいないって思いがあったので、もうそのときにプロポーズを決めました」


初めての出会いから半年たった今、綾子さんは年明けに熊本に引っ越すため、準備を進めています。当たり前の日常が遮断されたなか、綾子さんはオンラインだからこそ紀徳さんに出会えたと感じています。

綾子さん
「コロナじゃなかったら多分この人と出会ってないし、まだ一緒に住んでいないけど、こうやってオンラインでつながれるので、私たちの中では一緒に住んでいるみたいな感じです。コロナがあってオンラインっていうものを介して出会った私たちの今のライフスタイルなんじゃないかなと思います」

「私たちはオンラインだからこそ関係性を育めました」という綾子さん夫婦。
取材をはじめた当初、筆者は、オンラインの婚活に少し抵抗感がありました。しかし、対面ができない分、普段は話せないことを長時間話すことができた2人の姿を見ていると、会わないと相手のことが分からないという筆者の考えは、凝り固まった価値観だったのではないかと感じるようになりました。
長時間にわたってオンラインで相手と向かい続けた2人は、何年もの交際期間を凝縮した時間を過ごしていたのではないでしょうか。
コロナ禍によってオンラインが恋愛や結婚の一つの選択肢として広がっていく可能性を感じました。

 

<オンライン上での被害や犯罪に注意>
オンラインの出会いにはリスクもあることを理解しておかなければいけません。
東京都の性被害相談窓口「性暴力救援センター・東京」には、オンライン上での被害が年々増加しています。SNS上で出会い、関係性を深めた後、初めて会った日に睡眠薬を飲ませられ暴行されるなどのケースが報告されています。
オンラインでの婚活を利用する際には、「相手の友人などを紹介してもらう」「違和感を持ったら相談窓口に連絡する」「初めて会うときは密室で2人きりにならない」ということを注意してほしいといいます。

  • 有賀菜央

    首都圏局

    有賀菜央

    2015年入局。名古屋局、静岡局を経て2019年から首都圏局。これまで家族問題や不妊治療に関心を持ち取材。

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