異才登場! ピアニスト・紀平凱成(かいる)

  • 2020年6月25日

ピアニスト・紀平凱成(きひら かいる)さん。 “異才”とも評される独創的な感性が認められ、プロとして活動しています。凱成さんは、自閉症。会話は苦手ですが、その紡ぎだす音楽が、広い世界への扉を押し開こうとしています。

演奏も作曲も 感性が光る19歳

昨年、プロのピアニストとしてデビューした紀平 凱成(きひら かいる)さん、19歳。発達障害のひとつである自閉症のため、言葉によるコミュニケーションは苦手ですが、繊細なタッチのクラシックから、軽快なメロディーまで多彩なジャンルを弾きこなします。秋に発売されたファーストアルバムは、「鮮やかな感性」「まさに異才」と、大きな反響を呼びました。

自ら作曲も手がける凱成さん。新型コロナウイルスによる外出自粛が続く中、10曲以上の曲を完成させました。

紀平 凱成さん
「コロナで悲しい気持ちや寂しい気持ちになったけど、優しい気持ちで作曲しました。ちょっとだけ元気も入れたよ」

作曲の手法は独特で、楽器は一切使いません。メロディーを頭の中で完成させ、ひたすら譜面に記していきます。
そんな凱成さんが作る曲の特徴のひとつが、不協和音の使い方。

5小節の間に3つの不協和音を入れるなど、ひとつ間違えれば不快な音楽になりかねないところを、凱成さんは独特の感性で、独創的なハーモニーにまとめ上げます。

音楽プロデューサー 青木 聡さん
「常人ばなれしているというかね、突出した音楽の把握能力。ポップスのようでもあり、クラシックのようでもあり、彼の中で色々うまく混ぜた物を、彼なりの感性でアウトプットしてるっていうのが面白いなと思います」

音楽でコミュニケーション 希望の光に

凱成さんに自閉症の傾向がみられたのは、2歳のとき。母親の由起子さんが話しかけても反応せず、コミュニケーションも取れませんでした。

母 紀平由起子さん
「一生直らない障害だっていうのを見た時には、もう本当にどん底に落とされたかのようなショックしかなかったというか…。ずっと悲しんでいましたね、日々」

希望の光が見えたのは、4歳のとき。
由起子さんが弾いていた電子オルガンで遊んでいた凱成さんは、テレビのCMや電話の着信音など、一度耳にしただけのメロディーを完璧に再現したのです。由起子さんが楽譜を見せると、すぐに理解して弾き始めました。

母 由起子さん
「コミュニケーションがとれなかったのが、弾くことによって、聞いてる人が喜んでくださる場面が出てきたんですよね。凱成のコミュニケーションの仕方で、凱成なりにその喜びを見つけていった」

“プロでも完璧は不可能” 難曲に挑むわけ

2年前から本格的な演奏活動を行っている凱成さん。コンサートを前に、繰り返し練習している曲があります。ウクライナ出身のピアニスト、ニコライ・カプースチンの曲です。

その特徴は、譜面を埋め尽くす音符の数と、そのバリエーション。プロでも、完璧に演奏するのは不可能とも言われている難曲です。

凱成さんを指導する 東京音楽大学 川上昌裕 准教授
「カプースチンは難しいとよく言われている。テンポの速い曲も多いし、複雑に音が絡み合っている曲も多いので、1曲ちゃんと弾こうと思ったらそれなりにやっぱり時間もかかるし、モノにするのは大変」

翌週にコンサートを控え、本格的なスタジオでの練習初日。
練習を始めて40分、初めての場所に集中が途切れ、練習を中断してしまいました。

その後、しばらくして気持ちを切り替えた凱成さんは、みずからスタジオに戻り練習を再開します。

紀平 凱成さん
「弾きたい!カプースチンの苦手なとこやる!」

実は、凱成さんにとってカプースチンの曲は特別な存在でした。

10歳を過ぎたころから、発達障害の特性のひとつである聴覚過敏に苦しんできた凱成さん。音を苦痛に感じ、しだいに大好きなピアノの音さえ遠ざけるようになりました。
当時、凱成さんはどんな気持ちだったのでしょうか。

紀平 凱成さん
「悲しい気持ち。耳もつらいし」

母 由起子さん
「ピアニストになりたいっていう夢をずっと持っていたのに、音に対しての過敏があるっていうことは、凱成には言いませんでしたけど、もう夢は絶たれたんじゃないかなと」

そんな中、凱成さんが唯一聴くことができた曲が、カプースチンでした。独特の複雑なメロディーが、凱成さんとピアノをつなぎ止めていたのです。

夢は“世界を奏でる”ピアニスト

そしていよいよコンサート当日。
多くの観客が集まる中、深呼吸をしてカプースチンの演奏に臨みます。

カプースチンを弾き終えた凱成さん。大きな拍手に包まれました。

紀平 凱成さん
「すごい満足した。またコンサートしたいです。将来のピアニスト、世界を奏でるピアニストになりたい!」

 (首都圏情報ネタドリ! 6月19日放送)

こちらの記事も「書家・金澤翔子 感性磨いた母との歩み」

ネタドリ! これまでの番組内容をテキストで

ページトップに戻る