コロナ対応するほど赤字 瀬戸際の医療機関

  • 2020年6月9日

新型コロナウイルスの感染第2波への懸念が高まる中、これまでコロナ対応に奔走してきた多くの病院から、“このままでは、もたない”という声が上がっています。危惧されているのは、病院の経営破綻。感染拡大に向き合った医療現場は大きく傷ついています。

“リスク覚悟の治療” 受け入れてきた現場

東京・葛飾区の総合病院です。感染症の指定病院ではありませんが、感染が疑われる患者が、相次いで搬送されてきます。

この日、搬送されてきた80代の女性は、高熱が1週間続いていると言います。CT検査で肺の状態を確認したところ、両側の肺にうっすらと肺炎を疑わせる影が見られました。新型コロナウイルス感染の疑いがあります。

平成立石病院 大桃丈知 医師
「こうした患者さんの受け入れは、いろいろな医療機関が二の足を踏む状態になっています。しかし、リスクはある程度承知の上で救急医療をやらないと、医療を提供することができなくなります」

一般病床が埋まらない “経済的医療崩壊”の危機

この病院では、東京都の要請で入院が必要な患者も受け入れています。病院のベッドは、全部で203床。そのうち26床を完全に隔離して対応してきました。

病院が今、直面しているのが経営の悪化です。4月は、病院の収入が15%減少し、赤字に陥りました。原因の1つが、入院患者の減少です。感染拡大とともに、一般の患者が減少。「自分も感染するかもしれない、怖い」という理由で、退院を希望する人も相次いでいるといいます。

大桃丈知 医師
「一般の患者が減少すれば、病院の全体的な収益が落ちますので、いわゆる医療崩壊とは違う意味での“経済的な医療崩壊”が、今、一番懸念されるところです」

さらに、感染が収束に向かうにつれ、頭を悩ませる問題が出てきています。5月中旬以降、感染者の入院はゼロに。それでも、第2波に備えて病床を維持してきたため、1日当たり50万円以上の収入が失われてきました。

今後の経営方針について開かれた会議では、このままの状態が続けば、赤字は年間3億円に上る可能性があるという指摘が出ました。国や東京都から、医療機関への補助金も検討されていますが、いつになるか分からないといいます。

平成立石病院 大澤秀一 院長
「公的な病院は、赤字になっても税金がつぎ込まれますが、我々のような民間病院は赤字になったらつぶれてしまいます。しかし医療機関として、“減収になったから、たたみます”というわけにはいかないんです」

“張り詰めた日々いつまで” スタッフも限界

病院が直面している課題は、経営だけではありません。病院が、新型ウイルスに対応してきた看護師たちに聞き取りを行ったところ、「よく眠れない」「不安が強い」など心の不調を訴える人が相次いだのです。

中には「この先、完全に収束することはないのではないか」という不安の声も。隔離された中で、防護服で対応を続けてきた看護師たち。心と体は限界に達しています。

看護師
「自分が、院内感染を引き起こすきっかけになったらどうしようと。家に帰っても、ずっと不安だったり、夜中に起きてしまったり」

5月25日、感染者が減少傾向になり、緊急事態宣言が解除。病院は、感染者用の病床を一般患者向けに戻すことにしました。看護師みずから、消毒作業を行います。感染者の受け入れを始めて3か月以上。初めて緊張から解放されたといいます。

石塚智子 副看護部長
「半年、1年、どのくらいの期間で終わるか分からないとなったら、個々だけのスタッフでは頑張りきれないです」

消毒作業がようやく終わったとき、葛飾区から連絡がありました。PCR検査で要請と判明した患者の入院受け入れ要請でした。スタッフには緊張と動揺が。結局、患者はほかの病院が受け入れました。
この病院では、今後、再び感染が拡大した場合は、消毒した病床を再びコロナ患者用に戻すことにしています。

平成立石病院 大澤秀一 院長
「これまで、新型コロナに特化して医療を展開せざるを得なかったために、業績が落ちたわけです。感染第2波が来る前に、それをいかに早く立て直すか。通常の医療をどれだけ元に戻せるかを考えていいます」

コロナに対応するほど経営悪化 支援策は

全日本病院協会では、ほかの団体と共同で、全国の病院にアンケート調査を実施しました。
その結果、感染者を受け入れた339の病院では、8割近くが赤字に陥っていることが分かりました。特に東京では、赤字の病院が9割近くに上っています。

全日本病院協会 猪口雄二 会長
「コロナ対応を一生懸命やった病院ほど経営状態が悪いなら、“一日でも早くコロナ専用ベッドをやめて収益を戻さないと、病院が立ち行かない”と考える経営者がいても普通です。このまま、“苦しい病院は借金して頑張って下さい”と言われてしまうと、どの病院もコロナに立ち向かえません」

国は、新型ウイルスの患者の治療などに対する診療報酬を段階的に引き上げるなど、徐々に支援策は拡充してきています。しかし調査では、4月1か月だけで数千万円から億単位の赤字を抱えていて、このままの状態が続けば、数か月以内に病院の閉鎖も検討しなければいけない、というケースもありました。
傷ついた医療をどう立て直すか。感染第2波対策にとどまらず、地域の医療をどう守っていくかが大きな課題となっています。

(首都圏情報ネタドリ! 6月5日放送)

ネタドリ! これまでの番組内容をテキストで

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