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カウントダウン2020 東京大会へ「ハラル食」飲食業界の挑戦 11月19日

東京大会を前に、今注目されているのが、世界の人口の4分の1を占める、イスラム教徒の食事です。イスラム教では、戒律で豚肉やアルコールがタブーです。

一方で、食べられるものは「ハラル」といいますが、ハラルの食「ハラル食」にどう対応するのか、飲食業界の挑戦を取材しました。

 

東京・浅草の雷門にほど近い地域に、全メニューがハラルに対応したラーメン店がオープンしました。

東京オリンピックを前に、イスラム教徒に対応するメニューを開発してきました。この日も、インドネシアやマレーシアなどからの観光客が、ハラルのラーメンやギョーザを味わっていました。

訪れた人たちからは「とってもおいしい。アイ・ラブ・ディス・スープ」 「食べられるものが限られていて、どこに行けばいいのかわからないので、ハラルというのがあると安心して行けるんですね」と、いった声が聞かれました。

 

人気の秘密の一つが、食材。

イスラム教徒は豚肉が食べられないため、スープは鶏ガラ。チャーシューの代わりに鶏のから揚げを使っています。味付けも研究を重ね、イスラム圏の人が比較的好むという辛いものや味の濃いものに改良しました。

 

この店では、ハラルに対応するため、イスラム教の文化や習慣を知り尽くしたコンサルタントにアドバイスを求めてきました。

そして、取り組んだのがイスラム教徒のアルバイト店員の雇用、さらには、1日5回行う礼拝のためのスペースも設けました。きめ細かな対応で、イスラム教徒が安心して食事ができるようにしています。

ラーメン店オーナーの島居里至さんは「日本に来て楽しみたいと思った方々が楽しめないというのが一番よくないじゃないですか。オリンピックまでにムスリム対応の店が増えて、皆さんが召し上がっていただける世界があったほうがいいと思います」と話していました。

 

日本で食事を楽しんでもらうため、行政も動いています。東京都が5年前から飲食店の経営者などに向けて開いているセミナーです。

料理に使われている食材などを、客にイラストや多言語で伝えることが大切だといいます。日本語のわからないイスラム教徒にも安心して食事を楽しんでもらうためです。

講師の男性は「言葉の壁というものがあります。読めないとわからない、わからないと不安で食べられないということが、多く発生しています」と課題を指摘します。

セミナーに参加した人は「表示のこととか食材のこととか、さまざまな対応を事前にしっかり準備するというのが、大切かなと思いました」と話していました。

東京都産業労働局観光部の福塚英雄課長は「オリンピックの時期は、当然ムスリムの方々がいる東南アジアや中東・アフリカ、そういったところから、かなりの数の方がいらっしゃると考えると、やはりムスリム対応を少しでも前に進めていかなければならない」と話しています。

 

和食の良さを知ってもらおうと、限られた食材や調味料でも味を追求しようという店も出てきました。

セミナーをきっかけに、東京・世田谷区の日本料理店が3年前から開発してきた、ハラル対応の精進料理です。

この料理、料理酒を全く使っていません。イスラム教徒はアルコールを口にできないため、代わりにダシを工夫して日本料理の繊細な味を表現しました。

一般的な精進料理と食べ比べてみると、土瓶蒸しはハラル対応の方がより塩味が際立ったように感じました。

また、ハラル対応のごま豆腐は、これがハラル対応だといわれないとわからないほどの微妙な味付けの差でした。

 

しょうゆでも、ひと工夫です。多くのしょうゆにはアルコールが入っています。そのため、アルコールの入っていないハラル用のしょうゆを使っています。

ただ、これだと、まろやかさに欠けるので、ダシに野菜や別の種類の昆布を加えました。これにより、日本料理らしいまろやかさや甘みが、しっかりと出ていました。

 

店では日本にいるイスラム教徒の留学生を招いて試食会も開催。十分に満足のいく味だという声が多く聞かれたといいます。

伝統の味を崩さず、工夫してハラルに対応することで、来年のオリンピックを機に和食の良さを、さらに伝えていきたいと考えています。

 

日本料理店の鈴木邦昌さんは「和食には、それだけの技術と誇りがあると思っていますので、そのことをやっぱりしっかりと続けていきたい。それで必ずおいしいと、海外の人がやっぱり日本に来てよかったと、ちゃんとした安心できる日本食を食べて帰ろうと思っていただけるようになりたい」と、思いを話していました。

ハラル対応の料理を作るには、豚肉やアルコールに触れたお皿やグラスなどが混じってもいけないんです。そこで、日本料理店の鈴木さんは、ハラル専用の食洗機や調理器具など、およそ1500万円をかけて、そろえたということです。

また、鈴木さんは、もっと多くの人がハラル対応の料理を作れるように今後、作り方を動画サイトなどで公開したいと話していました。