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カウントダウン2020 パラ陸上・高桑早生選手 東京パラへ大きな決断 6月4日

今回は後藤佑季リポーターが、100メートルと走り幅跳びで、東京パラリンピックでの活躍が期待されている高桑早生選手を取材しました。

100メートルのアジア記録を持つ高桑選手ですが、この3年近く、記録を更新できていません。

東京大会まで1年あまりのこの時期に、大きな決断をしました。

 

高桑選手が下した大きな決断とは、走りの生命線ともいえる義足を思い切って改良することでした。

高桑選手が改良した義足を手に説明してくれました。

「ちょうど四角い部品の1個分ぐらい短くしました。5センチくらいだと思います」。

「違和感はなかったですか?」と聞くと、高桑選手は「違和感はありました。足が短くなったような感覚が、すごく最初は気持ち悪かった」と答えてくれました。

 

きっかけは、今年2月にドバイで行われた強化合宿。パラリンピック100メートルの金メダリスト、ハインリッヒ・ポポフさんの指導でした。

強調したのは、義足に最大限体重をかけ、強い反発力を得ること。スピードの強化につなげようというねらいです。

体重を思い切りかければ、高くジャンプできるほどの反発力を得ることができます。

 

ポポフさんが実際にやってみると、強い反発力で義足が折れて転倒してしまいました。

見ていた選手たちは「初めて見た! すごい!」と驚きの表情。

ベテラン選手は「本当に力が入って、たわんだら折れる。あれくらいできたら正解」と説明します。

 

しかし、高桑選手は義足の反発力を生かせていないと指摘されました。

合宿直前の高桑選手のレースです。義足が長すぎることで、地面を強く踏み込めていない、それが反発力を生かしきれていない原因だとポポフコーチは分析しました。

ポポフコーチは「早生は義足とケンカしている。義足のほうが高すぎるから、ブレードの力を使えていない」と指摘していました。

 

帰国後、義足を短くした高桑選手。その効果はすぐに表れました。

 

以前は、長い義足が地面に引っかからないようにももを高く上げすぎるなど、動きにロスがありました。

しかし、短くしたことでその余分な動作が減り、フォームが安定しました。その結果、これまでより足を速く出せるようになりました。

一方で、義足の反発力はまだ生かしきれていません。

「私がひざを伸ばすタイミングが遅いのかもしれない」。

高桑選手は、走ったときの映像を見返します。

 

ポイントは地面についたときのひざの角度。

健足側は、ほぼ伸びているのに対して、義足側は曲がっています。ひざを伸ばし、強く地面を蹴ることができれば義足の反発力を得ることができます。

 

高野大樹コーチは「左右のキックのバランスを整えていく。その辺の感覚の調整、アジャストさせていくというのは、たぶん健常者が身につけるよりもすごく難しいことなので」と説明します。

高桑選手は、ひざを伸ばして地面をとらえる練習を繰り返しました。

 

そして迎えた、6月2日の日本選手権女子100メートル決勝。

地面をとらえる瞬間の、義足側のひざ。以前より伸びるようになっていました。

レース後半、ほかの選手を引き離します。

13秒60。自身のアジア記録に0秒17と迫る好記録でした。

 

高桑選手は「今までのレースとは違う感覚が確実にあったので。ひざの使い方の精度をどうやって上げていくか、きょうのレースでやっと目星がついてきたのかな。イメージが具体的にわいてきました」と手応えを感じていました。

 

取材した後藤リポーターは「競技歴10年を超える高桑選手でさえも、『まだ、義足を使いこなせたと思えたことがない』と話していました。私自身も人工内耳という機械で音を聞いているんですが、道具を自分のものにするということに関しては、通じる部分があると感じました」と話しています。

 

【萩原智子さんの一言】

「道具を使いこなすことは簡単ではありません。私も水泳で水着という道具を使っていましたが、水着の丈の長さが1ミリ違うだけで、泳ぎの感覚が『気持ち悪い』と感じるほどでした。高桑選手も、今は違和感があるかも知れませんが、練習を積んでいくなかで、絶対に『ここだ!』という瞬間が訪れると思います。そこまでいくのは大変だと思いますが、来年に向けてここがふんばりどころ! がんばってほしいと思います」。