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千葉・鋸山で遭難が急増 標高の低い山で相次ぐ理由は

  • 2018年11月19日

房総半島を代表する観光地として知られる千葉県の鋸山には多くの登山者が訪れます。標高300メートル余りの低い山ですが、最近、遭難が急増しています。観光地として人気の山で、なぜ遭難が相次いでいるのでしょうか。《尾垣和幸記者》

■「裏ルート」で遭難が多発

 

千葉県の人気観光地「鋸山」。標高300メートル余りの低い山です。石が切り出され、岩肌がむき出しになった独特の景観が楽しめます。山頂まで1時間半ほどで登ることができ、家族連れなどが多く訪れます。東京湾を一望することもできます。訪れていた家族連れからは「いいですよここは。最高です」「冬の方がよく見えますね、きれいに」といった声が聞かれました。

ところが最近、この低い山で遭難が急増しています。2017年3月には、登山していた高齢の男女2人が日没後に道に迷い、崖から転落して亡くなりました。鋸山には正規の登山ルートが2つありますが、遭難の多くはそれ以外の道で起きていました。

 

遭難が続いているコースの入り口です。一見普通に見えますが、どんな道になっているのでしょうか。地元の警察官の案内で登ってみました。この道は、自治体の観光地図には載っておらず、「裏ルート」とも呼ばれています。

 

登り始めて30分、早速、難関が待っていました。
「ここはどっちに行ったらいいかよく分かりませんね」と問いかけると、富津警察署の遠藤広貴係長が「本来のコースはこちらなんですけれども、見ての通りうっそうとした感じ。また、木が倒れ、倒木がありまして、ぱっと見こっちという風にわかる感じではなくて、山に登るという感覚でいうと、こっちのコース外を登っていくのかな」と説明してくれました。

 

鋸山には、こうした迷いやすい道が複数あります。なぜ危険な道があるのか。山の歴史にその理由がありました。

■かつての “作業道”  崖から転落の危険も

 

昭和60年まで石切り場だった鋸山では、山頂付近で多くの職人が良質の凝灰岩を切り出していました。遭難が相次いでいるのは、職人たちが石切り場に早く移動するために使っていた険しい道だったのです。

 

「山頂に着きましたけれども、まだ、ここから危ない場所はあるんですか」と尋ねると、遠藤係長は「ロープが張ってあるんですが、こちらのほうから入ってしまって、その後に、昔の作業道ですね、結構危険な道なんですが、そちらの方に迷い込んでしまう方が何人かいました」と指摘していました。

職人たちの道は、長い間使われず最近では整備もされていません。一方、登山人気が高まる中、危険な道に迷い込む登山者が増えたとみられています。2017年に亡くなった2人も、崖の近くの危険な道を歩いていました。

遠藤係長は「上から崖下に転落してしまったのではないかと。ほぼ垂直ですね。高さ20~30メートルはゆうにありますね」と説明します。

 

取材中にも、危険な道を行く登山者と遭いました。警察官が「遭難した人がこの道でいますので」と注意を促すと、登山者は「じゃあ、やめたほうがいいですね」と注意を受け入れた上で、危険な道に入った理由について、「普通に階段あったし」「普通に道なんだなと思って」と話していました。

■万全な装備と正規ルートで安全な登山を

 

地元の富津警察署は、登山者に対してチラシを配るなど、注意の呼びかけを始めました。
「コース外に立ち入って遭難してしまう方がいますので、コース外という看板から先は行かないように注意していただいて」

また、危険な道の入り口などに、安易に立ち入らないように注意を呼びかける看板を設置しました。

 

遠藤係長は「鋸山は、もとは石切り場の山で、非常に切り立った場所が多いですね。危険性も高い。安全、安心に登るためにも、しっかりした装備を身につけていただきたい」と注意を呼びかけています。

警察官とともに危険な道を歩いた尾垣記者は「想像以上に険しい道で、いつ再び滑落事故が起きてもおかしくないと感じた」と話していました。

警察は、標高が低い山でも、登山に適した服装や靴を選び、飲料水や食料を持つなど、しっかりと準備したうえで、正規のルートで安全に登山してほしいと呼びかけています。

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