1. NHK
  2. ちかさとナビ
  3. 首都圏ネットワーク
  4. 首都圏でも発生のおそれ “黒い津波” の正体は

首都圏でも発生のおそれ “黒い津波” の正体は

  • 2019年3月1日

日本を襲った観測史上最大の巨大地震、東日本大震災。専門家が注目しているのが、あの日、各地で起きた“黒い津波”です。さまざまな形で被害を拡大させていたことがわかり、首都圏でも対策が始まろうとしています。《成田大輔記者》

■土砂やヘドロで破壊力を増した黒い津波

防波堤を乗り越え押し寄せる、真っ黒な津波。8年前、東北の各地では、このような “黒い津波” が数多く目撃されました。

中でも、町のいたるところで黒い津波が撮影されていたのが宮城県気仙沼市です。波はどのように黒くなったのか。東北大学などが気仙沼の津波を解析した結果、その正体が明らかになってきました。

湾の狭くなった場所を津波が通過するとき、行き場を失った津波が海底を掘り下げます。このとき、土砂やヘドロを巻き上げ、黒い津波になっていたのです。

土砂を巻き込んだ黒い津波は通常の海水よりも重くなりました。その結果、建物を浮かせる浮力が増加。そして、破壊力も増しました。さらに、ヘドロや土砂によって窒息や重い肺炎を引き起こしたケースもありました。

今村文彦教授(東北大学災害科学国際研究所)
「海水ではなく泥水になりますので、密度が非常に重いものになります。それによって破壊力が増してしまいます。またこの黒い津波というのは、いろいろなものが入ってますので、間違ってそれを飲み込んでしまいますと、呼吸困難になってしまう。さまざまな影響がこの黒い津波によって起こるわけです」

■水路が入り組む川崎市 危険性を調査

入り組んだ地形があれば、どこでも発生する可能性がある黒い津波。埋め立て地が多く、水路が入り組んでいる川崎市もその一つです。

2018年11月、川崎市は東北大学などと共同で、海底の堆積物の状況を調べる調査を行いました。

山下啓准教授(東北大学災害科学国際研究所)
「ヘドロの性状がかなり強い底質だなというところですね。それが広い範囲に市街地に流れてくる可能性があります」

川崎市に “黒い津波” がどのように押し寄せるか。東北大学などが解析したシミュレーションです。赤や黄色の場所で、海底の土砂やヘドロが巻き上げられ黒い津波が発生。そのまま上陸し、広い範囲に広がるとみられます。

市街地へ押し寄せる黒い津波。交差点では津波が合流して急速に水位が上がり、避難を妨げるとみられます。川崎市の臨海部の日中の人口は、およそ34万人。津波が来る前に、いかに早く避難させるかが大きな課題になります。

■安全な避難ルート アプリで表示

津波にどう備えるか。最新技術を使った避難の取り組みも始まっています。地元の富士通研究所が、東北大学などと開発を進めるアプリです。避難経路が通れなくなっている情報を地図上で共有。残されている避難ルートがわかる仕組みです。

川崎市は地元住民に呼びかけ、アプリを使うチームと使わないチームとで避難にかかる時間を比べました。

アプリを使わないチーム。いつも通る道で避難所の小学校を目指しますが、行き止まりにさしかかり、何度も引き返します。

「通行不可ですね。もう行けないですから戻りましょう。行けないですから」

一方、アプリを使って避難するチーム。アプリに表示される情報を基に、通れる道を確認しながら進んでいきます。

「今、ここです。ということは、ここ通るしかない」「じゃあ、まっすぐ行きます」。

アプリを使ったこのチームは18分で避難所に到着。使わなかったチームより7分早く避難できました。

避難訓練に参加した女性
「アプリは情報の共有がすぐにできるので、もっとアプリも改善して多くの人が活用できれば、亡くなる方も防げるんじゃないかと思いました」

各地で発生が予想される黒い津波。その実態を知り、避難につなげていく取り組みが始まっています。

“黒い津波” は、細かい粒子が肺の奥深くに侵入して “津波肺” という重い肺炎を引き起こしたほか、乾燥したヘドロの粒子が粉じんとなって健康被害を及ぼしたケースも報告されるなど、その後も人体に影響したことがわかってきています。

ページトップに戻る