原発事故 “想定外に備え” 世界では 震災から8年

  • 2019年3月7日

首都圏唯一の原発、茨城県の東海第二原子力発電所は、国から運転期間の延長が認められ、事業者は2019年2月、再稼働を目指す考えを表明しました。原発に向き合う地域の安全は守られるのか、事故を教訓に今、「想定外」に備えた動きが世界で始まっています。《本間祥生記者》

■東海第二原発 住民の不安と疑問

1月、東海村で住民説明会が行われました。国の審査で運転期間の延長が認められたことを受けて茨城県が開催しました。

「事故が100%起きないという保証ができるのか、できないのか」
「きちんとした運営ができるのかということをやっぱり信じられない」

住民からは不安や疑問の声が上がりました。

常陸太田市に住む只野光芳さんです。自宅は原発から10キロのところにあります。

8年前の事故のあと、原発への考え方は大きく変わったといいます。

「特別に不安とかもなく安全だと思っていました。その後、福島の状況があってからはもう心配で、原発が何かあったら私がここに住めなくてどこかへ行かないといけないということですから」

運転開始から40年を超えた、東海第二原発。震災の津波で冷却用のポンプが浸水し、一部が使えなくなる被害が出ました。

福島第一原発ではさらに原子炉が冷却できず、次々と水素爆発を起こしました。当時、原発で深刻な事故が起きることは想定されておらず、電力会社の対応だけでは手に負えない事態に陥りました。

専門家はこの事故によって原発の”安全神話”は崩れ去ったと指摘します。

牟田仁准教授(東京都市大学 原子力安全工学科)
「『事故は起こりません』『必ずこれは安全なんです』ということを、ずっと言い続けてきたわけですけれども、やはりそこはちょっと認識を変えなければいけない。事故の可能性というのは、どこまでいってもゼロにはできないので、これまでは考えてこなくてよかったことを、この先は考えていかなくてはいけない」

■原子力先進国フランス 安全への取り組みは

世界に衝撃を与えた“安全神話”の崩壊。原発に頼る国々では、安全への取り組みが見直され始めています。

原子力先進国のフランスは、総発電量の75パーセントを原子力が占める、世界で最も原発への依存度が高い国です。フランス国内には19の原発があり、合わせて58基が今も稼働しています。

パリ市民
「電気を作るために必要です。フランスの電力は原子力で成り立っています」
「社会を発展させるための必要なエネルギーを作っていると思います」

原発の安全の鍵を握っているのは、フランス電力の原発事故専門部隊「FARN」です。今回、この部隊の司令本部の取材が世界で初めて許されました。福島の教訓を受けて設立された事故対応の専門部隊です。隊員は電力会社の社員で構成され、事故が起きた際には原子炉の冷却や電力の復旧にあたります。ふだんから出動訓練や情報収集などを行っています。

パリ郊外にある本部のほかにも4つの拠点があり、合わせておよそ300人の隊員が所属しています。国内のどの原発で事故が起きても、12時間以内に現地に向かう仕組みです。

ピエール・エイモン所長(“FARN” フランス原子力事故即応部隊)
「人材面と同時に、技術面でいち早く施設を助けることができる部隊で、原子炉をすぐ冷却できる手段を提供しようと考えたのです。あらゆる状況で安全を保障する、道徳的な義務があると感じています」

■原発と住民とをつなぐ仕組み作り

電力会社とは別に、機材を備えた専門の組織もあります。「Groupe INTRA」と呼ばれる組織には、専門の車や機材を扱う技術者が常駐しています。放射線を遮断できる特殊な作りの装甲車などを使って、高い放射線のもとでも、がれきの撤去や被害の確認にあたります。事故が起きた際には24時間以内に現地に派遣され、FARNとともに活動することになっています。

そして、フランスの対策で最も特徴的なのは、原発と住民とをつなぐ仕組み作りです。フランスでは原発ごとに、電力会社や地域の住民が参加する委員会が整備されています。定期的に会合が開かれ、住民は安全対策や避難計画など、原発に関連するあらゆる情報を事業者から直接、聞くことができます。

専門家は、こうした正しい情報を手に入れる仕組みづくりは日本でも欠かせないと指摘します。

牟田准教授(東京都市大学)
「安全性を向上させるために、いろいろなことをやっていますということを情報としてきちんと出したうえで、それを住民に見ていただく。住民がその情報に対してどう評価するか、受け入れているものなのかそうではないのかを示す場が、必要になってくるのではないかと思います」

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