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大地震に備える 東京の “最大の弱点”は?

  • 2019年3月8日

首都圏で大地震が起きた場合、各地で火災が起きることが想定されています。東京都が「最大の弱点」としているのが古い木造住宅の密集地域です。大規模な火災が発生するおそれがあり、早急な対策が求められています。《島契嗣記者》

■“密集地域”を減らせ 品川区の取り組み

首都直下地震による大規模火災を想定したCGです。最悪の場合、都内では火災によって、古い木造住宅などおよそ22万棟の建物が焼け、8400人が死亡すると想定されています。特に危険を指摘されている古い木造住宅の密集地域は、都内で合わせて1万3000ヘクタールにのぼります。

こうしたなか、密集地域の解消に積極的に取り組んでいるのが品川区です。

高梨智之課長(品川区 木密整備推進課)
「この場所は今までと同じように道路が狭い場所だったんですけれども」

対策としてあげられるのが、火災の延焼を防ぐ広場の整備や、燃えにくい住宅への建て替え費用の助成です。しかし、敷地が狭く建て替えが難しい住宅が多いことや、住民の高齢化による建て替え意欲の低下が課題となっています。

高梨課長
「家を建て替えるというのは、各家庭にとっても一大事でしょうから、そこをなかなか強制にというのは難しいなと。とくに単身世帯のお年寄りとかは、『自分の世代では建て替える予定もないし、このまま住みたい』といったような声も聞こえます」

■地域ごとひとつの集合住宅に 10年がかりで完成

こうしたなか、現在進めているのが、密集地域そのものを集合住宅に建て替える方法です。2月に品川区中延地区に完成したばかりの、13階建てのマンションです。この場所は2年前まで典型的な木造密集地域でした。

2年余り前にこの地区を取材した際の映像では、86棟の古い木造住宅がひしめき合っていました。建て替えにあたり、課題となったのが、地権者など140人の同意を得ることでした。

住民のとりまとめにあたった池田光雄さんは、高齢者の説得が特に難しかったといいます。

池田さん
「説得は大変でしたよ。年配者が多いんですよ。『ここで骨を埋めたい』と言う人が結構いましたよ。そういう人をどうやって説得するか、だいぶ最初の頃は悩みましたね」

地域を守るためには、火災に強い最新のマンションに建て替えるしかないと、根気強く訴えました。

どのようにして密集地域をマンションに変えることができたのか。その流れです。
まず密集地域の89世帯の住民は、いったん仮住まいに引っ越します。

古い木造住宅の解体費用は区が負担し、跡地に195戸のマンションを建設します。

そこに仮住まいから戻って来た住民が入居。残った一部の部屋は一般にも販売され、マンションの建設費用に充てられます。

3月から入居が始まりましたが、構想のスタートから完成まで10年近くがかかりました。

池田さん
「あまりにもすばらしいんでね、火事の心配もないなという感じでね、ホッとしましたよ。たぶん仮住まいから戻ってくる人もこのマンションを見たら、そう思うんじゃないですかね、みなさん」

■高齢者が多い木造住宅 費用負担が課題

専門家は、住民のニーズを踏まえた取り組みが必要だといいます。

中林一樹名誉教授(首都大学東京)
「基盤整備していない市街地は、かなりまだ広範囲に残っている。古い家が残って、高齢化がどんどん進んでいくということになるんですね。高齢者の方がローンで建て替えをするというのは事実上できません。防災まちづくりを推進するうえでも、共同化というのは非常に重要な手法として位置づけられているんです」

(島契嗣記者)
古い木造住宅を壊してからマンションができるまで2年間かかりましたが、その間の仮住まいの住宅費や生活費は、住民の自己負担になります。品川区では、ほかの地域でも同様の取り組みが検討されています。しかし、どんな地域でもこの方法がとれるわけではなく、ポイントは採算が取れるかどうかということになります。

今回取材したマンションは、最寄りの駅から徒歩4分の好立地の条件で、2月の時点で195戸のうち2戸しか空いていないという状況です。需要が高い場所であれば、マンションに建て替えることもできるということになります。地域によって条件が違いますが、専門家も指摘していたように、対策として集合住宅に建て替えるというのは有効だといえます。

また東京都も、都有地に集合住宅をつくる新たな対策に乗り出しています。民間の不動産事業者と協力して、木造住宅の密集地域に住んでいる人が、移転したくなるような魅力的な集合住宅を造ろうという新たな取り組みです。密集地域が解消されれば、その場所の道路を広げたり、防災広場として活用するということです。

対策は急がれますが、地域の実情をみながら行政と住民がしっかりと話しあって、地域と住民のメリットを考えながら対策を進めることが必要です。

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