19のいのち “事件から目を背けない” 母の思い

  • 2019年5月24日

相模原市の障害者殺傷事件から3年近くがたちます。“事件から目を背けてはいけない”と動き始めた、女性の思いをお伝えします。《古本湖美記者》

■娘に重度の障害 “事件は他人事ではない”

横浜市に住む小川咲美さん(39)と、長女の日富美ちゃん(5)です。日富美ちゃんは目がほとんど見えず、歩くことや立つことができないなど、重度の障害があります。小学2年生の長男、それに、2歳の次女の3人の子どもを育てている小川さん。事件から1年後、NHKのサイトに投稿しました。

“この事件は他人事と思えない、という表現では足りず、私自身の問題と受け止めています”
“あの事件は、私自身の事件です”

「何も語らずにはいられなかったんですよね。これは私が一生抱えていかなきゃいけないテーマだというのは、ずっとあったので」

投稿した背景に、ある出来事がありました。事件の数週間後、小川さんは次女を出産するにあたり、日富美ちゃんを一時的に預けるために、障害者施設の見学に行きました。そこに入所する重度の障害者と、日富美ちゃんを無意識に比べてしまっていたといいます。

「『ここまで重くなくてよかった』って、平気で他者に向けてしまった自分。本当に戦慄、大げさじゃなくて雷に打たれたみたいな。『私、犯人と何にも変わらない、同じタイプの人間なんだ』って思って」

それ以降、命に優劣をつける優生思想を主張する被告と似ていると考えて自分を責め、事件から目を背けるようになってしまいました。しかし、発生から2年がたった去年、小川さんは事件に関する報道が極端に減り、風化が進んでいると感じたといいます。

「圧倒的な報道の少なさだと思います。被害に遭われた方が結局名前も公表されないし、そのうえ語られなかったら、本当になかった事と同じになっちゃう。いつまでも何も言わなかったら、自分自身が結局一番なかったことにしてるのと同じになってしまうので」

■“タブー視”した自分 変えなければ

事件をいわば“タブー視”してきた自分を変えなければならない。障害のある子どもを持つ親たちに、初めて、事件への率直な思いを聞きました。

小川さん
「受けた衝撃の度合いが強すぎて、その話が私はできなくなっちゃった。率直に言って、どの程度、みんなにとって現実味がある事件だったのか知りたい」

友人の女性
「19人、人間が殺されることが、障害者だろうが障害がなかろうが、別に同じ事じゃないのって、私は単純に思ってて」

事件のあと打ち明けづらくなった、障害がある子どもと日々向き合うことの大変さも話題となりました。

別の女性
「私、職員さんとか偉いなと思うのは、絶対他人の子だったらできないもん。もう、仕事だって、お金もらっても、やっぱり、自分の子じゃなかったらそんな朝から晩まで」

さまざまな思いにふれ、小川さんは事件のあと感じていることを、これから周りの人に少しずつ伝えていきたいと思っています。

■障害者が生きている価値 証明したい

さらに今、「意思疎通できない障害者は生きる価値がない」などという被告の主張は、間違いだと証明するために、あることに挑戦しています。それは、バスを運転できる大型2種免許の取得です。日富美ちゃんがいるからこそ、自分は新たなことに挑戦できる。そのことを言葉ではなく行動で示したいと考えています。

小川さん
「『なんでまたバス?』ってびっくりされちゃうんですけど。障害者が生きている価値がないっていうのは、絶対に間違いだって伝えたいと思った時に、言葉では伝わらない。この子こそが、周りにやる気を与えてくれたり、仕事を生み出してくれるっていう証明ができれば、そのとき初めて、生きてる価値がないっていうのが間違いだと、はっきりとノーと言える。いてくれるだけで、私は頑張れるよっていうところで価値が生まれている。それは、私がこれから証明し続けていかなければいけない」

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