19のいのち 「インクルーシブ教育」を学童保育に

  • 2019年5月31日

障害のあるなしにかかわらず、子どもたちがともに学ぶ「インクルーシブ教育」。いま放課後の居場所である「学童保育」の場でも実践が始まっています。きっかけの一つは、相模原市で起きた障害者殺傷事件でした。子どもたちの成長の日々を見つめました。《戸叶直宏記者》

■障害の有無に関わらず 分け隔てなく教育

横須賀市の学童保育、「suka suka-kids」。障害のある児童とない児童が、それぞれ15人ほど通っています。分け隔てなく遊ぶことで互いに成長できるよう、「インクルーシブ学童」と掲げています。

部屋では、障害のない子が「楽しい!」と話し、障害のある子も「楽しい?」という問いかけに「うん」と答えていました。

1年前、この学童を作った五本木愛さん。娘の麗さん(8)には、知的障害があります。幼稚園では、地域の子どもたちと一緒に遊ぶ中で、成長を見せた麗さん。小学校では特別支援学級に。五本木さんは、障害のない子と接する機会が大きく減ったことを課題に感じていました。

そんな時に起きたのが「障害者殺傷事件」でした。障害のある人とない人が一緒に育つことの重要性を痛感し、学童を立ち上げました。

五本木さん
「この子は障害のある特別な子っていう認識で育っていく。そういった環境で育っていった子どもたちが、大人になったときに、ああいう事件が起きたように、障害への差別とか偏見っていうところをやっぱり持ってしまう。隣に当たり前にいるという状況で育ってくれるというのが、大事だと思う」

この学童に通う、特別支援学校4年生の宮浦咲空さん(9)。アンジェルマン症候群という難病で、知的障害もあります。友達のことが大好きですが、一緒に遊びたくても言葉では伝えられません。我慢することも苦手です。

母親のめぐみさんは、気持ちをうまく伝えられない咲空さんの将来に、不安を感じてきました。

「将来を考えると、一人では生きていけない子なので。お友達とか、支援してくださる方と、うまくコミュニケーションをとらせてあげたいなって」

■支援員がコミュニケーションをサポート

「suka suka-kids」では、支援員が障害のある子とない子のコミュニケーションを支えます。この日は、遊びたかった咲空さんが、友達の手を強く引っ張ったことで、けんかになってしまいました。支援員は、咲空さんに引っ張ったことを謝るよう伝えます。

「ごめんなさいねって」

そのうえで、相手の子には障害があっても、気持ちは伝わることを説明します。

「ちゃんとみんなのお話は、咲空には聞こえているんだよ。ただ、お返事返すのができないの。だからちゃんと伝えてあげて」

これを聞いた子どもは「ごめんね」と咲空さんに伝えていました。

吉田弥栄子さん(支援員)
「ことばが出なくても、気持ちを伝えることはとても大事で、『こう言っているんだよ』と咲空さんの気持ちを代弁しながら、お互いが理解しあえるように」

「suka suka-kids」は、障害のない子にとっても大切な場になっています。小学4年生の藤田玲奈さん(9)。当初、咲空さんを怖いと感じたこともあったといいます。

「ふつうの子とは、違うと思った。しゃべれないとか、そういうの」

咲空さんは、そんな玲奈さんを積極的に遊びに誘います。最初は断っていましたが、次第に、一緒に遊ぶ時間が増えていきました。

■差別や偏見を生まない社会へ

公園に出かけたこの日は、意外な出来事が。一度ブランコに乗ると夢中になってしまい交代できない咲空さん。初めて、ブランコを代わってくれたのです。

支援員「すごーい、えらい咲空」
玲奈さん「咲空、ありがと」

玲奈さん
「咲空は優しいと思った、ありがとうって気持ちだった。笑ったり怒ったり、泣いたりするのは自分と一緒。今はふつうの友達だなと思う」

自然に一緒に過ごす時間を重ねる中で、ともに成長する子どもたち。

五本木さんは、差別や偏見を生まない社会への一歩になることを期待しています。

「少しずつ近寄ってきて、少しずつ相手のことが理解できるようになってきて、いろんな人を受け入れることが当たり前になっていって、それが当然となる世の中になっていってくれたらいいかなと思っています」

学童保育によって、障害のある子の受け入れ状況は様々で、五本木さんによると、障害を理由に断られてしまうケースもあるということです。五本木さんはともに過ごせる場が増えていってほしいと話していました。

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