新型コロナウイルスの収束の兆しが見えない中、各地で感染者の集団=「クラスター」の発生も相次いでいます。クラスターが起きた現場から、何を教訓として学べばよいのでしょうか。2つの病院のケースを振り返ります。
足立区にある等潤病院は、ことし3月以降、新型コロナの疑いのある救急患者を積極的に受け入れてきました。救急搬送は、去年よりもおよそ1.6倍になった月もありました。
等潤病院 伊藤雅史 院長
「ほかの病院から受け入れを断られる患者さんがたくさん出てきていて、遠方の病院に行ったり、救急車の中で何時間も待たされたりするようなことは避けなければいけない。我々が最後の砦として受け入れなければ患者さんが困ってしまうと、地域の病院としての使命を果たすために受け入れてきました」
受け入れが続いていたことし8月に、入院患者に最初の感染が確認されます。疑い患者として運ばれ、当初の検査では陰性でしたが、入院後に発熱し、「陽性」だとわかったのです。
その後、同じ部屋の患者全員や別の部屋の患者の感染も相次いで確認されました。
病院は、入院患者に加えて、医師や看護師だけでなく清掃員や出入り業者など病院関係者全員に検査の対象を広げました。
すると、すでに感染が確認されていた病室がある5階・4階からは離れた2階でも、別の病気の疑いで入院した患者の感染が確認されました。
さらに、無症状ではあるものの複数の職員などの感染も相次いで分かったのです。
院長
「こんなことがあるのかと、本当にびっくりしました。真剣に感染対策はしていましたが、何か間違っていたのだろうか、何が悪かったのだろうかと思いました」
この病院でのクラスターは最終的には11人。
国の専門家による調査では、感染対策を意識していた対応がとられていたと結論づけていて、はっきりとした原因は分かっていません。
ただ、病院では“1人でも感染者が出れば広がっている可能性が高いと考えて対応する”
という教訓を得たといいます。
院長
「どんなに対策をしても感染する可能性はあるので、1人でも感染した患者が出れば周りに患者がいると思って対応することが重要だと思います」
病院スタッフが感染を広げてしまった可能性があるケースもあります。
感染症の指定医療機関でもある都立墨東病院です。
ことし4月、患者や職員合わせて43人のクラスターが発生し、救命救急センターでの新規の受け入れを停止するなど、診療再開まで5週間を要する事態に発展しました。
感染が広がった可能性として指摘されたのは、共用の休憩室でした。窓を閉めて密になった空間で、複数の人が休憩し、マスクを外すことがあったといいます。
ここで感染したスタッフが、複数の病棟に広げてしまったとみられています。
“どこかに落とし穴はないか” 今、病院では対策を常に点検し、改善していく取り組みを進めています。
中村ふくみ 感染症科部長
「コロナの疑い、あるいは確定患者さんを診ている部署とそうでない部署との感染対策の意識の差というのがあるので、そこを埋めていかないといけない。一度、立ち止まって『これをすると感染するかもしれない、感染させてしまうかもしれない』と考えることも必要だと思います」